Story
「私はいったい誰を愛したんでしょう…」
「仮に、彼を“X”と呼ぶことにします」
弁護士の城戸章良は、かつての依頼者である谷口里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失い、夫と別れた過去があった。長男を引き取り14年ぶりに故郷に戻ったあと、故郷で出会った谷口大祐と再婚し、二人の間に新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。そんな幸せな日々が続いていたある日、大祐は不慮の事故で命を落とす。
愛した夫を亡くし悲しみに打ちひしがれていた里枝だったが、夫の死後、長年疎遠だった大祐の兄から衝撃の事実を突き付けられる。
それは、愛していた夫「大祐」が全くの別人だということ。
名前も戸籍も全てが偽りだった。
なぜそんな噓をついたのか。共に過ごした時間、過去、全てが嘘だったのか。
人はなぜ人を愛するのか。愛にとって過去とは何なのか。
「X」の人生を辿るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿、その姿と共に、自分の存在と意義を問い、
この世界の真実に触れることになる。