ねじまきレポート②/レポーター:arida

誰もが「感じるままに見ることで想像力と五感が満たされる」豊かな作品

少し前に、株式会社ホリプロに依頼され『ねじまき鳥クロニクル』の宣伝に協力するため「ねじまきレポーター」として稽古場見学に行って来ました。

この日の「ねじまきレポーター」は私を含め4人、お母様の影響で子どもの頃から観劇をしていたという高校生、30年来のハルキストさん、成河くん大好きさん、そして志望動機に「2012年にミュージカル『100万回生きたねこ』でインバル・ピントさんを知って以来その世界観に魅了され大好きになり〜(以下省略)」と書いた私の4人です。

前置きが長くなりましたが、この日の稽古場メニューは舞台『ねじまき鳥クロニクル』になくてはならない<特に踊る>人たち(加賀谷一肇さん、川合ロンさん、東海林靖志さん、鈴木美奈子さん、藤村港平さん、皆川まゆむさん、陸さん、渡辺はるかさん)の二つの場面でした。
稽古場はすでに本場さながら八百屋舞台の傾斜がついていました。私たちは皆さまの視界に入らないよう上からの見学です。初演を観ていたのは私だけだったので、セリフのない抽象的な場面な上、まちまちの稽古着で、色のない稽古場での稽古風景に3人から戸惑いも伺えました。

追加・変更を重ねた 1幕プールの場面稽古。

1幕:プールの場面。岡田トオルと笠原メイがかつらメーカーのバイトをするポップな場面です(うめたけまつでチェック✍️)小説では銀座の地下鉄地上出口でしたが、その雑踏を区民プールに置き換えています。小説の後半でトオルはプールでそのバイトを思い出す場面ありましたよね(うろ覚え)。

▼(参考1)2020年初演の舞台映像PVです。

①プール。トオルとメイが座る150㎝くらいの結構高い台のようなセットがあるのみ。初演では水が表現されていましたが、今回は水なしですから全然違うビジュアルになると思います。どんな美術が立ち上がるか楽しみです。

インバルさんが一人ひとりに丁寧に何度も、違うオプションも試しながら振り付けていきます。<特に踊る>人たち(以下ダンサー)もそのオーダーに即座に応えて自分たちでも提案しながら、彼女が描いている絵を体で表現するため長い時間をかけて「YES!NICE!」と言われるまで練習していました。

「動きが難しいですか」と聞きながら「もっとスムーズになれば」とか、あるアクロバティックな振付に「できたらサーカスに入れるよ」と言う川合ロンさんに「やってみよ」と言うインバルさん。

それにしても誰よりもしなやかに踊ってみせるインバルさん。踊っている姿をはじめて見ました。とても美しいです。

インバルさんにつきっきりで通訳の鈴木なおさんがダンサーたちに同時通訳しているのですが、鈴木さんの稽古通訳ぶりに感動しました。そして振付助手であり<特に踊る>人でもある皆川まゆむさんがダンサーたちに手本を見せたりアドバイスしているのですが、すごく明るくて頼もしい彼女がいると、厳しい現場も明るくなるのだろうと想像できます。インバルさんのイメージを熟知している、その存在の大きさが伝わってきました。まゆむさんの踊る姿の美しさはピカイチですから終始うっとりしてしまった私でした。

追加変更を重ねた4組のペアの動きに1時間半くらい時間をかけてからその場面の「通し」でした。

そうしていると渡辺大知くん、続いて成河くんと銀粉蝶さんがいらっしゃいました。キャストの皆さまとても熱心でご自分たちの稽古がない日でもこうして観にくる、ということでした。大知くんは頭上の私たちに気づいて会釈してくれたので「可愛いーー❤️」となった私です。

そして、プール場面の「通し」に大知くんも岡田トオルとして参加しました。音楽とメイとトオルの(録音)歌声が入るとパーっとプールの場面が立ち上がったのがわかりました。

ここで10分の休憩が入りました。御手洗から戻るとき大友良英さんに遭遇。関係者だと思われたのでしょう「お疲れ様」と言われドキドキした私です。

次は2幕の稽古。パフォーマンスに合わせた生音とともに。

②2幕:妻のクミコを探すトオルのホテルの壁抜け場面。今日の稽古は台本にはない「つなぎ」となるシーンでした(演劇ではシーンとは言わないのかな?)。

初演のセット(壁〜ドアのついた板〜)を使って、ダンサーたちが壁を後ろから動かしながらパフォーマンスを合わせる稽古でした。
「すべて忘れてほしいという」「放っておいてほしいという」というトオル成河の声(録音)が流れています。そして、大友さん・イトケンさん・江川良子さんの演奏が入りました。パフォーマンスに合わせた生音です!なんて贅沢なお稽古でしょう❤️

でもダンサーたちは大変です!「足を高く」「足を遠くに」「腕はドアに近づきたいように」「足を緩めて」「初演の動線を覚えてる?思い出して」「着地の足で次の繋がりができるように」「流れを止めないように」「重い足になるよう」「顔がもっと足を追いかけるように」など、インバルさんがとてもしなやかな動きで何度もお手本を見せて、正面から見て美しく見えるように長い時間をかけていました。各自で自分のパートの練習をしたり、まゆむさんたちがスマホの画面で初演の動画をチェックしている姿も見えました。

そして、要所要所の段取りが終わり、頭から「通し」に。

セットにするするともうひとりトオル役の成河くんが入ってきてどうするのかな?と見ていたらドアを開けたり壁を抜けたりして奥へ… 瞑想?壁が動くたびに足が見えました。笑

そんな時、大友さんもセットの中へ… ダンサーたちが抜ける壁(隙間)のチェックをする大友さん。20㎝くらいしかないと思われる隙間に入ろうしましたが入れません… そこにインバルさんが来てヌルッと壁抜けを見せたからびっくりです。大友さんに「ソフト、ソフト!」「ゼリー、ゼリー!」「You can do it!」というアドバイスがあり、何度も挑戦する大友さん… 大知くんとイトケンさんはヌルッと壁抜けしていました。楽しかったです。笑

その後、もう一回、もう一回、早く流れるようにもう一回と「通し」て終わりました。
皆さまはまだ稽古が続くようでしたが(ミーティングかも)私たちはここまでで見学終了です。

帰り際に大知くんが「おかまいもできなくて」と挨拶してくれて、その笑顔と優しさに胸熱になった私です。途中、成河くんと銀さんが熱くディスカッションしている声や成河くんの鼻歌が聞こえていました。とにかく皆さま、楽しそうでした。

今回、稽古場レポーターに選んでいただき、貴重な体験ができました。とても贅沢な時間でした。ありがとうございました。
この稽古場レポートで、観たことのない人に舞台『ねじまき鳥クロニクル』の素晴らしさを伝えることは難しいと思いますが、村上春樹の世界観が好き、村上春樹は読んだことないけれど気になる人、演劇が好き、ダンスが好き、音楽が好き、アートが好き、誰もが「感じるままに見ることで想像力と五感が満たされる」豊かな作品だと思いますので、観ていただけたら「ねじまきレポーター」の私も嬉しいです。

作品名舞台『ねじまき鳥クロニクル』
期間2023年11月7日(火)~11月26日(日)
会場東京芸術劇場プレイハウス / ▼座席表
上演時間1幕90分/休憩15分/2幕75分(計3時間)予定
チケット料金S席:平日10,800円/土日祝11,800円
サイドシート:共通8,500円
U-25(25歳以下限定):6,500円
(全席指定・税込)
ツアー公演大阪、愛知
作品HPhttps://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2023/

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