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新作ミュージカル『ミセン』制作レポートVol.3/全体稽古初日(顔合わせから本読み、立ち稽古まで)
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韓国で社会現象を起こした「ミセン」をホリプロ×韓国クリエイター陣が世界初オリジナルミュージカル化!2025年1~2月に大阪、愛知、東京にて上演される本作の創作過程をまとめた制作レポートが到着。第3弾は11月末に行われた全体稽古初日の様子をお届け!

(文:上野紀子/撮影:山本春花)

▼稽古場ダイジェスト

▼制作レポート 第1弾・第2弾はこちら

11月末、キャスト、スタッフのほか大阪公演や愛知公演の劇場の方々など、新作ミュージカル『ミセン』のすべての関係者が一堂に会する“顔合わせ”が行われた。演出のオ・ルピナはその数日前に来日し、俳優個々の歌稽古や振付、抜き稽古は進めていたが、この日が全員揃ってのいわゆる稽古初日である。脚本・歌詞のパク・ヘリム、音楽のチェ・ジョンユンもこのタイミングで来日し、舞台セットが組まれた振付稽古用の稽古場に大勢が集結。一人一人の紹介、制作からの始動の挨拶で“顔合わせ”は素早く終了、さっそくテーブルを並べてキャスト全員での本読み稽古が始まった。

前田公輝が演じるチャン・グレの独白から始まり、オープニング・ナンバーへ。アンサンブル陣はすでに振付が入っているらしく、座ったままで手振りや足踏みをしながら歌声を響かせている。それぞれの歌稽古の成果も上々のようで、ピアノ生伴奏に乗せてスムーズにシーンが進行していった。筆者が台本に触れるのは夏のソウルでのリーディング・ワークショップ以来で、夏にはまだ出来ていなかった楽曲や、台詞の修正、追加されたシーンに気づくたびに、確かにバージョンアップされている!ドラマがより分厚くなっている!といちいち感動が止まらない。

パク・ヘリムは台詞の一言、一言を通訳のキム・テイに訳してもらいながら、自身の台本に細かくチェックを入れていく。キム・ドンシク課長代理(あべこうじ)の明朗快活な言葉がこの日最初の爆笑を誘い、稽古場の空気を一気に盛り上げていた。パク・ジョンシク課長(中井智彦)が嫌味たっぷりに放つ台詞も、オ・ルピナをニヤリとさせる。

一幕が終わって休憩に入ると、オ・サンシク課長役の橋本じゅんは台本と楽譜、二つのファイルを見比べて確認するのに大忙しで、その横で前田が橋本をサポート。ドラマの中でも外でもホンワカした絆が見える上司と部下コンビである。

二幕ではグレやアン・ヨンイ(清水くるみ)らインターンたちと居酒屋店主(東山光明)との触れ合い、ソン・ジヨン次長(安蘭けい)を中心にヨンイら女性社員たちに生まれる共感といった人間関係が、チェ・ジョンユンの音楽によって情感豊かに立ち上がっていく。当の作曲家は時々微笑みを浮かべながら、終始真剣な表情でキャストたちの声に聴き入っていた。クライマックスでは橋本が立ち上がって熱の入った歌唱を披露し、前田もラストの大合唱を自ら手で指揮して主導。清々しい風に後押しされながら前進!といった光景が浮かび上がる幕切れだ。

本読み終了後、あらためて韓国クリエイターズが一言ずつ挨拶。「書いてきました」と用意して来た紙を広げるチェ・ジョンユンに向けて、キャスト陣からオオ〜!と歓声が起こった。

「今日こうして皆さんに直接お会いできて、一緒にこの作品づくりの旅を始めることができ、本当に感激しています。『ミセン』とは、私たちが生きていくささやかな瞬間、瞬間を寄せ集めて一つの大きなものを完成させる、そういう物語だと考えます。この作品が碁盤に一手一手を打つようにして美しい舞台に完成することを信じています。ミュージカル『ミセン』が日本の観客たちの心に留まり、長く記憶される舞台になることを祈ります。そしていつの日かこの作品が韓国で公演されることになったら、私たち初演メンバー全員が一緒にソウルの客席で舞台を見つめ、笑い合う日が来ることを期待しています。皆さんとご一緒する今回の旅は、特別な忘れられない時間となるでしょう。最後まで一緒に最善を尽くしましょう」(チェ・ジョンユン)

パク・ヘリムは「私は書いてきていないのでちゃんと話せるかわかりませんけど」と笑顔で前置きをして語り始めた。

「この作品を作り始めた時、ここに登場する人たちはそれぞれが未完成の小石だけど、碁盤での険しい勝負の中で一人一人が手を繋げば、一つの陣地を作れて勝負に出ることができる、そういうチャン・グレの成長物語だと思いました。今日の本読みを通して、さらに追加するべきストーリーを発見できたのはとても嬉しく、ありがたいことです。追加のセリフが少しあると思いますが、ご理解いただければ私たちはより良い作品を作っていけると思います。とても感激して、感謝しています」(パク・ヘリム)

そしてオ・ルピナは「そんな重たい話じゃないですけど」と照れながら「私は今、この瞬間が本当にありがたいです」と感極まる表情でキャスト全員を見渡した。微笑ましく見つめるキム・テイに背中をさすられた後、言葉を続けた。

「日本でこのように素敵な方たちと、そして韓国の素敵なチームの皆さんと、お互いの言葉を一生懸命聞き、お互いの表情を一生懸命に見て、そんなふうに作品を作る機会を与えていただいたことを本当にありがたく思っています。初演舞台なので熾烈な作業になると思いますが、その瞬間を皆さんと共有できるのが本当にありがたいです」(オ・ルピナ)

感情を込めた一言一言……がまだまだ続くかなと思いきや、「じゃあリーディングはここまでにして、ちょっと休憩した後、予定通りに稽古を始めてもいいですか〜」と一変してテキパキ口調に。ユニークでキュート、そしてパワフルな演出家のリズムにカンパニー全員が気持ち良く乗せられていく。

休憩中のおしゃべりで、前田と清水、ハン・ソギュル役の内海啓貴、チャン・ベッキ役の糸川耀士郎のインターン4人組が、実際に韓国居酒屋に赴き、“爆弾酒”(ビールの中に焼酎のショットグラスを入れて混ぜたもの)を作って飲んでみた、と教えてくれた。「テーブルがビシャビシャになっちゃって〜」と皆で大笑い。なるほど、早くも新入社員たちの結束は磐石だ。

続いて始まった立ち稽古は、チェ・ヨンフ専務役の石川禅と橋本、そして安蘭の上司チームによるシーンから。オ・ルピナが自ら舞台上を縦横無尽に動きまわって、ミザンス(配置、動線)を手際よく決めていく。石川と安蘭は『キングアーサー』で演出家との舞台作りを経験済みゆえ、その意図を汲み取って動く速さはさすがの一言。

さらに稽古はグレとアンサンブル陣のナンバーへ。社員証を首から下げたスーツ姿の商社員たち、そのキレキレのパフォーマンスがもう稽古初日にして激しくカッコいい!『キングアーサー』でオ・ルピナから絶対的な信頼を得たKAORIaliveによるステージングは、今回も期待以上の興奮をもたらしてくれるだろう。

「アリガトウゴザイマース」「ヨロシクオネガイシマース」と日本語を挟みながらキビキビと稽古を進めていく演出家。そのオ・ルピナの「ハナ、トゥル、セッ!(いち、に、さんっ!)」の掛け声に戸惑うこともなく瞬時に動き出すキャストたち。早くも爽やかな一体感を生み出しているカンパニーは、未生(ミセン)から完生(ワンセン=完全に生きた強い石)となる日を目指し、ここからさらに進んでいく。

▼【披露曲フル収録】 稽古場映像公開中!(全53分)


期間2025年2月6日(木)~2月11日(火祝)
会場めぐろパーシモンホール 大ホール
座席表
チケット情報チケット絶賛販売中!

・エグゼクティブシート:16,000円(優先入場ほか特典付)
・S席:13,500円
・A席:11,000円
・U-25:7,500円(11月13日~販売)
・Yシート:2,000円(11月18日~11月24日販売)※販売終了

チケット情報詳細>>
ツアー公演大阪*、愛知公演
*=ホリプロステージでのチケット取扱いあり
作品HPhttps://horipro-stage.jp/stage/misaeng2025/

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