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「面白くて仕方ない」/彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.3『リア王』ゴネリル役の石原さとみにインタビュー&稽古場レポート
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彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.3『リア王』が2026年5月5日(火・祝)から5月24日(日)まで、彩の国さいたま芸術劇場大ホールで上演される。
2024年5月に吉田鋼太郎が立ち上げた「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」。第三弾はシェイクスピアの最高傑作とも評される四大悲劇の一つである『リア王』。
今回は、長女ゴネリル役を演じる石原さとみさんにインタビュー。第二子出産後の復帰作となる今回、お稽古の手応えや役柄についてなどを聞いた。

(文:五月女菜穂/ポートレート撮影:SHUN ITABA)

01  「新鮮さ」を追求する、今までにないシェイクスピア
02  悪女ではなく、一人の「娘」としての葛藤
03  「本番は1日でいいから、ずっと稽古をしていたい」
04  シェイクスピアは「究極のおままごと」?
05  俳優として、母として、今を全力で
06  稽古場レポート

「新鮮さ」を追求する、今までにないシェイクスピア

――稽古の手応えはいかがですか。

今回、ゴネリルという女性の気持ちがすごくよく分かるんです。彼女はシェイクスピア特有の「歌うようなセリフ」が比較的少なくて、具体的な会話や指示出しが多い役。その分、感情が乗らなくてセリフが言えないということが、これまでの作品よりも少ない気がします。

撮影:SHUN ITABA

演出の長塚圭史さんが掲げているのは「新鮮さ」です。シェイクスピアの言葉は非常に強固なので、つい言葉の力に引っ張ってもらいたくなりますが、長塚さんは「その瞬間に起きたことへのリアクション」や「瞬発力」を何より大切にされています。
そのため、相手のセリフを今まで以上に深く聞くようになりました。「この人のこの言葉に引っかかれば、私のこのセリフが言いやすい!」という気づきが毎日のようにあり、毎日ワクワクしながら探求しています。

悪女ではなく、一人の「娘」としての葛藤

――ゴネリルについてはどう捉えていますか。

難しい役ですが、鋼太郎さんの演じるリア王を真っ向から受けてみると、実はゴネリルは間違ったことは言っていないんじゃないか、と思えるんです。彼女なりの正義感や、「私が正さなければ」という切実な思い。そこを軸にすると、非常に人間味のある女性像が見えてきました。

これまでの上演では「女性社長のような貫禄」や「冷酷な悪女」として描かれることも多かった役ですが、私のゴネリルは、もっと「娘としての葛藤」が強い気がしています。鋼太郎さんや共演者の皆さんと芝居を重ねる中で、日々新しい感情が引き出されています。

「本番は1日でいいから、ずっと稽古をしていたい」

――稽古場の雰囲気はいかがですか?

舞台に立つたびに言っていますが、私は稽古の時間が一番好きなんです!「本番は1日だけでいいから、残りの時間は全部稽古をしていたい」と思うくらい(笑)。
共演者の皆さんも本当に刺激的です。エドガー役の藤原竜也さんは、舞台を端から端まで自由に使いこなしていて、その唯一無二の説得力には圧倒されます。エドマンド役の矢崎広さんは、稽古初日から役を完成させてこられていて、尊敬と共に背筋が伸びる思いでした。

撮影:田中亜紀
撮影:SHUN ITABA

鋼太郎さんとの共演も最高です。私にとって鋼太郎さんは、安心して感情をぶつけられる、会うだけでほっとする存在。鋼太郎さんのアドバイスを受け、長塚さんにチューニングしてもらう。このお二人に支えられている環境は、俳優として本当に幸せなことだと思います。

撮影:田中亜紀

シェイクスピアは「究極のおままごと」?

――石原さんが感じる、シェイクスピア作品の魅力とは?

最初は「難しいもの」というイメージでしたが、今は面白くて仕方がありません。人間の業や裏切りといったドロドロした感情が100%の濃度で放出される、まるで「感情の濃縮還元ジュース」のようです。
また、リア王の劇中では、何もない場所を崖に見立てたり、裁判所に見立てたり、身体を解剖したりする、ある種の“おままごと”のようなシーンが多いんです。

私はよく家で子供たちとおままごとをしているのですが、『リア王』の稽古が始まってからは、ゴネリルの役に影響されています。家でぬいぐるみを並べて、様々な設定を細かく決めるのですが、結構リアルにやりたくて。

これまで医者や解剖医、看護師、薬剤師の役を演じてきたので、病院のおままごとの時には「アルコール消毒で肌がかぶれた事はありますか?」なんて聞いたりして。今はゴネリルの理論的かつ冷静な役の雰囲気で子供とおままごとしてると、子供はポカーンとしています。(笑)でも最近、おままごとって芝居の原点のように感じるんですよね。

俳優として、母として、今を全力で

――第二子出産後の復帰作。両立は大変かと思います。

想像以上にハードですね(笑)。接する時間が減ってしまう分、今は子供たちの心のバランスを取ることに全力を注いでいます。夜泣きで眠れない日も多いですし、産後の物忘れ(マミーブレイン)でセリフを忘れないか不安になる瞬間もあります。

でも、この充実した稽古場があるからこそ、救われている部分がたくさんあります。このままの勢いで、大千穐楽まで無事故で駆け抜けたいと思います。

――最後にお客様へのメッセージをお願いします。

『リア王』は関係性が複雑なので、事前に少しだけ相関図をチェックしていただくと、より物語に没入できるはずです。私たちも、皆さんにこの熱量がしっかり届くよう精一杯務めます。ぜひ劇場でお待ちしています。

稽古場レポート

開幕まで1ヶ月を切った4月上旬。
この日行われていたのは第三幕第七場「グロスターの城」の場面。演出の長塚圭史のディレクションのもと、丁寧に、豊かにシーンを作り上げていく。

撮影:田中亜紀

豊かにというのは、言い換えれば全体的に余白がたくさんある稽古だということ。焦らず、慌てず、ただそのシーンに向き合う。「絶対にこうしてほしい」という指示があるわけではなく、ましてや一つひとつセリフを止めることもない。何かハプニングややや意図とズレたことが起きてもまずはやってみる。その上でディレクションを重ね、時に個別にディスカッションをする。「このセリフってさ……」という相談もする。

撮影:SHUN ITABA

石原さとみ演じるゴネリルは「目玉をくり抜いてやるといいわ」というセリフのみだが、佇まいも視線も含めて計算し尽くされているようで、目を引く。

そして、続くグロスター伯爵が目玉をくり抜かれるという残忍な場面では、どうしたらそれがリアルに見えるか、動きの確認や提案が盛んに行われた。ここに衣装や照明などのスタッフワークが重なると、どう見えるのか。

撮影:SHUN ITABA

取材の終盤、吉田鋼太郎が稽古場に到着。なんと顔に血が滴るようなメイクで登場。ご本人いわく「この後、こういう格好のシーンの稽古でしょう?だからだよ」とのこと。それを見た藤原竜也は「さすがだわ」と笑う。石原の言う通り、熱量が高い稽古場だと感じた瞬間だった。

撮影:田中亜紀

作品名彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.3『リア王』
日程2026年5月5日(火祝)~5月24日(日)
会場彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
座席表
チケット料金【SAFメンバーズ】>>
S席:11,000円
A席:9,300円
B席:7,500円
 
【一般】
S席:12,000円
A席:10,000円
B席:8,000円
U-25:3,000円※公演時25歳以下/B席対象/劇場のみ取扱/入場時要身分証明書
(全席指定・税込)
ツアー公演宮城、愛知、大阪、福岡、岡山公演あり
作品HPhttps://horipro-stage.jp/stage/kinglear2026/

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