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ミュージカルスターが歌う珠玉のナンバーを楽しむ、2夜だけの極上の時間。ミュージカルを愛する人たちへの感謝を込めて開催される、Thanks Musical Concert『A Happiness for You』。1日目の『〜Going to The Future〜』は、ホリプロ創業65周年を記念してホリプロのミュージカルスターが勢揃い。2日目の『〜Musical Metropolis Tour TOKYO/SEOUL〜』では、韓国と日本のミュージカル界が誇る豪華スターがコラボレーションする。その構成・演出を担当する菅野こうめいに、公演に向けての思いと見どころを聞いた。
(取材・文:小杉 厚)
▼ホリプロ65周年記念 ラジオ特別番組放送決定!

◉構成・演出:菅野こうめい[Komei Sugano]
1979年から10年間、木の実ナナ・細川俊之出演の『SHOW GIRL』シリーズで福田陽一郎氏の演出助手やショー構成を担当。85年『小堺クンのおすましでSHOW』で演出家デビュー。90年から91年にかけて米国留学。ジャンルを超えた多くのアーティストのショーやコンサート演出、ブロードウェイ・ミュージカルの翻訳・演出、近年ではオリジナルミュージカルの脚本・作詞・演出にも精力的に取り組む。近年の主な作品に、【舞台】『日劇前で逢いましょう―昭和みたいな恋をしようー』【アイスショー】『プリンスアイスワールド2025-2026 The Best of BROADWAY』などがある。
――今回、Thanks Musical Concert『A Happiness for You』の構成・演出を担当されることになりました。
お話をいただいて大変なことになったと思うと同時に、とても光栄だと思いました。ホリプロが上演するミュージカルは、ブロードウェイやウエストエンドの作品を、向こうのクリエイティブ陣も招聘して高いクオリティで上演されていて素晴らしいですよね。
さらに『デスノート THE MUSICAL』や『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』を始めとするオリジナル作品にも挑戦なさっている。ロンドンや韓国での公演など、ビジネスとしてワールドワイドに展開していて画期的ですし、我々が進むべき道を示してくれていると思います。


――『A Happiness for You』というタイトルには、どのような思いが込められていますか。
エンターテインメントを生業する以上、観客に幸せをお届けするのは最も重要な課題ですし、それこそが自分の仕事だと思っています。タイトルの通り、自分たちがやるべきことをやって、みんなに幸せになってほしい、ということですね。
また、DAY1には『〜Going to The Future〜』というサブタイトルをつけましたが、これはホリプロの65年にわたる歴史を一度まとめ、その先の未来へ進むことをイメージしたものです。
――DAY1のセットリストは、どのようにして決められたのでしょうか。
とにかく作品、そして楽曲がたくさんあって選ぶのが大変でしたね(笑)。ホリプロのオリジナル作品についても改めて勉強しましたし、出演される俳優の皆さんにも歌いたい楽曲を伺いました。俳優さんには「こうめいさんにお任せします」という方もいらっしゃいましたし、「この曲を歌いたいです」と、希望を詳細に伝えてくださる方もいらっしゃいました。それを整理して……当然、演出する人間としては候補曲リストを見ると妄想が膨らむわけです(笑)。「こうなったらいいな、ああなったらいいな」と、まずは理想的な構成案を作り、そこから試行錯誤を重ねて企画や構成を調整していきました。オーディエンスにハッピーになってもらうには、舞台上がハッピーになるのが一番いい。そこを目指してできあがったセットリストだと思います。

実は今回のセットリストは、鹿賀さんと市村さんがお出になるということで「それでは『ジーザス・クライスト=スーパースター』の「ヘロデ王の歌」や「ゲッセマネの園」を歌っていただけませんか?」とお願いしたところから始まったんです。
というのも、僕は大学1年生のとき『ジーザス・クライスト=スーパースター』のエルサレムバージョン初演を日生劇場で観て、衝撃を受けたんですね。終演後に舞台前まで行って、セットに触れた思い出があります。鹿賀さんのジーザスや市村さんのヘロデが観たいというのは個人的な希望でもあったので、それを快諾していただいたときが一番うれしかったかな(笑)。そういう意味では僕自身、ミュージカルを信じているし愛しているので、その思いが舞台に表れお客さまに伝わる演出になればと思っています。

――では鹿賀さん、市村さんのパート以外で、DAY1でお客さまに楽しんでほしい部分は?
もう全部ですね(笑)。たとえば今回は名シンガーの方々が揃っていますので、皆さんの代表曲を続けてお聴かせする「ベスト・ベルティング・ソングス」というコーナーを作りました。また、お客さまにもミュージカルのワンシーンに参加していただくことで、ナンバーができあがるコーナーも。ここは劇場が一体となってミュージカル音楽を楽しむ時間にしたいですね。
そして今回は、なんと出演者全員で“あの名作”をやるコーナーもあります。当日あっと驚いていただけると思いますので楽しみにしていただければ。ホリプロからは若手の注目株がどんどん出ていらしていて、『ピーター・パン』はもちろんですが、『ジキル&ハイド』や『レ・ミゼラブル』なども、ホリプロの中で役が連なっているわけです。継承こそミュージカル文化の素晴らしさの一つだと思いますし、同じプロダクションの中でそうした系譜が生まれるのは素晴らしいことですよね。今回の公演ではそうした方々に舞台上に並んでいただくので、きっと65年の積み重ねを実感していただけると思います。
――ホリプロ作品の楽曲も多数、披露されると伺っています。
ホリプロが上演してきたミュージカルには名曲が目白押しです。たとえば笹本玲奈さんの『ラブ・ネバー・ダイ』から「愛は死なず」、安蘭けいさんの『サンセット大通り』から「As If We Never Said Goodbye」、濱田さんの『カム フロム アウェイ』から「Me And The Sky(私と空)」という、三大ディーバの共演も見どころの一つになると思います。



――お話を伺っていると、男性キャストの見どころも気になります。
今回、柿澤勇人さんは『ロミオ&ジュリエット』から「エメ」を歌いますし、お客さまからリクエストも多かった『ジキル&ハイド』から「対決」を鹿賀さんと披露します。さらに小野田龍之介さんは『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』などの楽曲を歌います。そして大貫勇輔さんと宮尾俊太郎さんには、ある有名ミュージカルナンバーをダンスアレンジにして、たっぷり踊っていただく予定です。


この男性陣に若手の髙橋くんがどう入ってくるのかも楽しみですね。『ジェイミー』で共演されるベテラン、石川禅さんとのハーモニーを公演に先駆けて披露しますので、お楽しみいただければと思います。

――そして若手の女性キャストも出演されていますね。
先代ピーター・パンの吉柳咲良さん、そして現ピーター・パンの山﨑玲奈さんには、「ネバーランド」を大人っぽい特別アレンジで、唯月ふうかさんには再演が決定した『デスノート THE MUSICAL』の楽曲を歌っていただきます。そのほか『メリー・ポピンズ』や『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』からも名曲をたっぷりと披露予定です。



ですから単なるミュージカル・コンサートというよりは、ミュージカル・バラエティに近い内容になると思います。それもこのメンバーだからできることですね。皆さんが卓越したスキルをお持ちだからこそ、舞台上で遊びながらクオリティをキープすることができる。ミュージカルごっこのような遊び心にあふれたコーナーでも、「このクオリティでやられたらもう敵わない!」というものをお見せします。
――演出での注目ポイントはどのようなところになりますか。
僕の演出の特徴は音楽からアプローチしていくところですし、そこが持ち味だと思っているので、まずはオーケストラの編成にこだわりました。これだけ大きなミュージカルナンバーが揃っているので、それに応える力量を持つミュージシャンに集まってもらうことが、一番の条件だと考えました。
21人編成のオーケストラを用意していただいたので、それが舞台上に並ぶのもセットの一部になっています。そして皆さんがご想像されるような、中央に階段があってオーケストラがいて……とありきたりなものにならないよう、ちょっと変わったセットを考えています。
さらに楽曲の世界観を1枚の絵として表す映像……、オペラでいえば背景幕のような映像も用意しつつ、懐かしい写真などもインサートしていくことで楽曲を視覚化していますし、大きな会場での公演ですので、歌っている俳優たちの表情も見えるように工夫しています。
ミュージカル楽曲は曲だけで成り立つわけではなく、前後のストーリーや役のキャラクターとの関連もありますし、さらに言えば、先ほどお話しした僕の『ジーザス・クライスト=スーパースター』体験ではありませんが、観客のお一人おひとりに観劇したときのバックストーリーがある。ですから楽曲にまつわる思い出をたどったり、明日への希望を描いてみたり、ご覧になる方々とそうしたひとときを共有できるコンサートにしたいですね。
――こうしたステージが開催されることには、やはり日本でミュージカルがポピュラーなものになってきた影響もあるかと思います。
その感覚はすごくあります。僕は今『プリンスアイスワールド』というアイスショーの演出も担当していますが、そこでは3年続けてミュージカル楽曲を使ってショーを作っています。ミュージカルファンだけでなく、スケートファンにもミュージカル楽曲の魅力が浸透しているのを感じますし、まさに文化がクロスオーバーするのを目の当たりしています。それこそ40年前、僕がミュージカルを志してニューヨークに行った頃には考えられなかったことです。「そうなればいいな」と思った未来が今、現実になっている。サブタイトルの通り、ここからさらに未来へと進んでいければと思いますし、僕はホリプロのミュージカルはまだ演出していないので、それも込みで未来に進んでいきたいですね(笑)。
――そしてDAY2では『〜Musical Metropolis Tour TOKYO/SEOUL〜』と題して、ホリプロ作品に縁のある方々、韓流ミュージカルでご活躍の方々が出演されます。
このサブタイトルは「東京とソウル、アジアの二大メトロポリスにおけるミュージカルの今が感じられるものに」と思ってつけたもの。日本と韓国のミュージカルスターがガチで激突しますのでどういうことになるのか、僕も今から楽しみなんです。

2024年に韓国ミュージカルの『メイビー、ハッピーエンディング』がブロードウェイで上演され、今年のトニー賞10部門にノミネートされたのは、日本ミュージカル界の我々に衝撃的な出来事でした。先ほどの話ではないけど、日本のミュージカルは、40年前に「こうなったらいいな」と思っていたところに近づいてきたけれど、ここで韓国に先を越されてしまったわけで。そのくやしさを舞台上で晴らしたいですね(笑)。
もちろん韓国は東アジアの仲間であり友人でありますし、柿澤くんも「ガチでやるけど、マジで友達なので」と言っていましたので(笑)、ミュージカルバトルを通じて、お互いの仲のよさと表現に懸ける真剣さを表現できれば。ハラハラドキドキしながらも「ワーッ!」と興奮できるステージにしたいです。今ちょうどDAY2の構成を詰めている段階ですが「お客様の聴きたいあの曲」が盛りだくさんの内容になると思いますので、ぜひご期待いただければ。
――ありがとうございます。それでは最後にインタビューをお読みの方々に、Thanks Musical Concert『A Happiness for You』へのお誘いの言葉をお願いします。
僕は小学生の頃に劇団四季の『王様の耳はロバの耳』というファミリーミュージカル、そして先ほどお話ししたように大学生になって『ジーザス・クライスト=スーパースター』を観て、この仕事をしようと決めました。ミュージカルで音楽、そしてエンタテインメントの素晴らしさに触れ、衝撃を受けたことが人生を決めたんですね。
『A Happiness for You』もミュージカルファンの皆さまはもちろん、これまでミュージカルに触れる機会がなかった方々にもご覧いただき、興味を持っていただけたらうれしい。ホリプロという枠を超えてミュージカルの素晴らしさ、楽曲の魅力を全員で、それこそガチでお見せしますので、ぜひ会場に足を運んでいただけたらと思います。

作品名 | Thanks Musical Concert『A Happiness for You ハピネスフォーユー』 |
日程 | [DAY1]2025年6月28日(土)開場:17:00/開演:18:00 [DAY2]2025年6月29日(日)開場:15:30/開演:16:30 ※本コンサートは配信、映像化の予定はございません。 |
会場 | 東京国際フォーラム ホールA 座席表 |
上演時間 | [DAY1]120分予定(休憩なし) [DAY2]100分予定(休憩なし) |
チケット情報 | チケット絶賛販売中! S席 2DAYSセット券:24,000円(特典付)*予定枚数終了 プラチナ席:22,000円(特典付)*予定枚数終了 S席:12,000円 *予定枚数終了 A席:10,000円 B席:7,000円 Yシート:2,000円(20歳以下対象・当日引換券・要証明書) ※S席 2DAYSセット券、プラチナ席、Yシートはホリプロステージでのみ取扱い (全席指定・税込み) |
チケットに関するお問合せ | ホリプロチケットセンター 03-3490-4949 (平日11:00~18:00/定休日 土・日・祝) |
作品HP | https://horipro-stage.jp/stage/happinessforyou2025/ |