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ミュージカル『ボニー&クライド』が2025年3月10日(月)から東京・シアタークリエほかで上演されます。
1930年代、世界恐慌下のアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した実在の人物、クライド・バロウとボニー・パーカー。この伝説のギャング・カップルを題材に、『ジキル&ハイド』『デスノート THE MUSICAL』などを手掛けた作曲家フランク・ワイルドホーンさんが、ジャジーなサウンドとポップなリズムで新たに創造したミュージカルです。
今回、ボニー・パーカー役をWキャストで演じるのは、桜井玲香さんと海乃美月さん。本作に懸ける思いお互いの印象、相手役のクライド・バロウ(柿澤勇人さん、矢崎広さんのWキャスト)の印象などを聞きました。
(取材・文:五月女菜穂/インタビュー写真撮影:阿部 勝)
クライド役 柿澤勇人&矢崎 広
対談インタビュー
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稽古場ダイジェスト公開!
ディスカッションの時間は「新しい発想や解釈が得られる」
ーー今は1幕までの稽古が終わって、これから2幕の稽古が始まるとお聞きしました(※取材時)。各シーンの前に、必ずディスカッションの時間があるそうですね。
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海乃美月(以下、海乃):はい。まず本を読み合わせた後、「このときのボニーはどういう気持ちなんだろう?」などと、その場面の気持ちや流れを確認・共有する時間を(演出の)瀬戸山(美咲)さんが設けてくださっています。
あっさり終わるときもあるけれど、すごく盛り上がることもしばしば。玲香ちゃんだけでなく、周りのキャストの方がボニーについて言及してくださることもあって、自分の中では生まれなかった新しい発想や解釈が得られる時間です。すごく勉強になります。
桜井玲香(以下、桜井):そうですね。こうしたディスカッションがあることで、丁寧に場面を作りながら進めていけるので、とてもやりやすいです。
特に私は初めましての人が多い現場は緊張してしまって、なかなか打ち解けるのに時間がかかってしまうのが悩みなんですけど、こういう風に顔を合わせて、一緒に喋ったり、話を聞いたりしていると、早い段階で“壁”がなくなっていくのを感じています。ディスカッションを通じて、皆さんの人となりが分かるので安心できます。ありがたいです。
ーー今回はインティマシー・コーディネーターが稽古場に入られているそうですね。お二人としてはどう感じていますか?
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海乃:私は今回が宝塚歌劇団を退団してから初めての現場なので、コーディネーターさんなしで稽古をやっていたときがどういう状況なのか、あまり知らないのですが……稽古で「こういう風に撫でると、2人の距離感はこういう風に見える」とか「手をどこに添えるかで、2人の関係性の密度が変わる」といったお話があって。
密着度の高いシーンに対してどう思うかという俳優自身の気持ちの面だけではなく、お客様からの見え方も考慮しながらご指導くださるのがとても新鮮ですし、的確なご指導で勉強になります。
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桜井:そうですね。確かに今回の『ボニー&クライド』は、2人の密着度がだいぶ高いし、しかもそれが結構重要になってくるんですよね。そこで「胸に手をあてると親密さが出るから、今は触らないでおこう」などと、やっている自分たちからは分からない、客観的な目線でのアドバイスをいただけるのはありがたいです。
なかなかお相手の方に「どこを触っていいですか?」なんて聞きづらいですし、第三者のコーディネーターさんを交えて、お互いの思いを共有することはめちゃくちゃ大事ですよね。
「自分に役を寄せる」「理想像に近づく」。アプローチは異なるけれど……
ーー稽古を通じたお互いの印象を教えてください。
海乃:もうめちゃくちゃ可愛いじゃないですか!玲香ちゃんを見ているだけで私は日々癒されているんですが、この配役が決まったときから史実などを調べていると、ビジュアルから何から本当にボニー像そのまんま。色っぽさも可愛さもあって、ボニーに必要な素材を元からお持ちだなと思っていました。
そして、お稽古場でご一緒していると、お芝居がとにかくナチュラルで、無理矢理な感じが一切なく、丁寧に演じてらっしゃる。もう日々「こういう風にやるんだ」と勉強させてもらっています。
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桜井:え〜、嬉しい〜!海ちゃん(※海乃さんの愛称)は『俺たちに明日はない』版のボニーにすごく近いなと思っています。すらっとしていて綺麗だから、クライドの隣に立っているだけで様になっていて、本当に素敵!
宝塚歌劇団の娘役さんだったから、指の先まで神経が行き届いていて、女性らしい動きは絵になるんですよ。クライドとのいい感じのシーンもとても綺麗で、惚れ惚れしちゃいます。けれども、海ちゃん本人はすごく明るくて、ずっと喋っている(笑)。
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海乃:あはは。ごめんね、うるさいよね(笑)
桜井:ううん!全然!話せることがとても嬉しいです。現場によってはWキャスト同士でなかなか話せないこともある中で、いい意味で一緒に役を作れている感じがするから。海ちゃんとは役のことも、日常の些細なことも、いろいろ話せてすごく心強いです。
ーー演じられるボニーとご自身との距離感はいかがですか?どういう風に役と向き合っているのでしょうか?
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桜井:私は役を自分に寄せてしまう癖があるからか、そんなに自分の感情とボニーの行動がノッキングを起こすことはないですね。クライドに対する愛情の変化、濃いながらも愛情の濃度が変化していると思うので、その過程は稽古でもう少し丁寧に深めていかなくてはいけないなと思っているところですけど……全体的に割と近い感じでやっているのかもしれないです。
海乃:なるほど。今の言葉を聞いて納得しました。自分に近づけて演じているから、あんなにナチュラルなお芝居ができるんだ。
桜井:私はボニーと話し方が似ているところがあるからそんなに無理がないのかも。
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海乃:そういう意味で言うと、私は真逆タイプかもしれない。理想のボニー像を作って、そこに自分をはめていかないと立っていられないんです。
だから、妙に芝居がオーバーになっちゃったりする。「そんな急に感情変化する!?結構無理やりじゃない!?」みたいなところも、自分の気持ちはさておき、はめ込めてしまう。それがうまく作用するときもあれば、観ている人の違和感になってしまうときもあるから、その線引きは難しいなと思っています。
桜井:ボニーもボニーで、急に感情が変化するからね。
海乃:そうそう。私自身は急に泣いたりしないで、割となだらかな感情で生きているから、ボニーほど振り幅がないんですよね。だからそこは作ってはめていかないといけない。
でも生い立ちの部分は似ているところもあるかなと思うんです。本を読むのはそこまで好きではなかったんですけど、女優に憧れていたり、田舎で育っていたり、1個決めたら曲げないところとかは似ている。
ボニーはクライドと一緒にいると決めたら、最後までブレなかったじゃないですか。そういう自分が決めたものに対する芯の強さ、頑固さはなんか自分とリンクできるのかな。私も玲香ちゃんみたいにナチュラルな芝居要素を取り入れたいなと思っているので、そういうところから自分を出してみようかなと思っています。
ーークライドのお二人の印象を教えてください。
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桜井:まずカッキー(※柿澤さんの愛称)は「ああ、カッキーだ!」と思います(笑)。
特に1幕の後半で、クライドが初めて殺人を犯してしまう際に、自分の思いを歌う曲があるんですけど、やっぱり床から始まるんです!個人的にも、おそらくファンの皆さまとしても、カッキーは床でのたうち回るイメージが強いので、「そうそう、これこれ!これぞ柿澤勇人!」と思って(笑)。いや、のたうち回りながら、あれだけ歌えていることは本当に凄いと思います。
海乃:私はまだご一緒していないんですけど(※取材時は柿澤/桜井ペア、矢崎/海乃ペアで稽古を進めていた)、ご一緒したら私は食われてしまうのではないかと思うぐらい、勢いがすごいなと思いながら、いつも芝居を拝見しています。
柿澤さんは本当にその時代を生きていた人のようにお芝居されますよね。自分の感情の全部を使いつつも、もちろん演劇ですからルールのようなものがあるわけで、そういう決められたことなどを冷静にこなしている。さすがプロフェッショナルだなと思っています。
桜井:一方の矢崎さんのクライドはめっちゃ可愛いところがありません?ものすごい母性をくすぐられる……!
海乃:分かる分かる。
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桜井:「守らなきゃ!」と思わされるんですよね。でもずる賢さもすごく感じられて……カッキーがばーっと突っ走るクライドだったら、矢崎さんは緻密な計算をしながら、交わされまくるクライド。だからクライドによって、ボニーの居方(いかた)がまた変わるだろうなと。
海乃:そうだね、私もお芝居が変わる気がする。
桜井:矢崎さんのクライドは一生懸命手を掴んでないと、離れていっちゃう感じがして。どうなるんだろうとドキドキしながら見ています。
海乃:矢崎さんのクライドを目の前にすると、妙にお母さんになったような気持ちになるんですよ。「この人には自分がいないと」と思わせる何かを持っていらっしゃる。それが全面に出ていたかどうかは分かりませんが、きっとボニーもそういう思いがどこかにあったと思うので、この気持ちはリアルに持っておきたいと思っています。
そして矢崎さんご自身は史実などをいっぱい調べて現場に来られているので、あれを全部計算してやっていると思うと……逆に怖い(笑)。しかもとても周りをよく見ていて、ユーモアというか、周りを楽しませようとするお気持ちがある方なので、セリフの言い方や距離感も全部計算してやってらっしゃると思うと、本当にすごいなぁと思います。
ーーワイルドホーンさんの楽曲についても伺います。お好きなナンバーはありますか?
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桜井:全部好きだけど、クライドがウクレレを弾きながらボニーに送る「ボニー」が好き。ロマンティックで、メロディーもめちゃくちゃ素敵で、浸ってしまう……。まだその場面は稽古をしていないから、早く聴きたいな。めちゃくちゃ楽しみです。
海乃:私は自分が歌わない曲の中なら、「ハンドル握れば」が好き。ああいう賑やかな曲が大好きで、このナンバーも振り付けがついて、とても楽しいシーンになっています。
あとは1幕ラストの「残すのさ 名前を」も好き。作品の代表曲を歌えるのはすごく嬉しいし、「これぞ、『ボニー&クライド』!」と思って。
桜井:テンション上がるよね!
海乃:ボニーとしてもクライドと一緒に行くと覚悟を決めるところ。気持ちと曲がリンクして、本当に気持ちがいい。
私はワイルドホーンさんの楽曲がもともと大好きでした。ただ、聞く専門だったので、今回、歌うチャンスをいただいて、とても光栄です。特にブロードウェイ版が格好良くて好きなので、「あんな風に歌いたい!」と思いながら、稽古を頑張ってます。
新たな『ボニー&クライド』をお見せしたい
ーーお二人はいろいろな舞台作品に出演されていますが、舞台の魅力は何だと思いますか?どんなときに舞台の醍醐味を感じますか?
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桜井:舞台上でお芝居をしていても、意外とお客さんの反応って分かるんですよ。「あ、今スベったな」ということも分かるけど(笑)、人が心を打たれて、しーんとする、何とも言葉で言い表せない瞬間があるんですよね。何かが聞こえてくるわけでも、何かが見えるわけでもないんだけど、真空状態というか、誰も身動きも取らずに、黙って見ている瞬間。自分でも他の人の場面でも、その瞬間が訪れると、「あ、届いているんだ」「今、人の気持ちを動かしているんだ」と思うんです。
それはやはり同じ空間を共有している舞台でないと味わえない。そうそう出会えるものではないけれど、あの瞬間があるから、やりがいを感じています。
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海乃:お客さんとの間に生まれる一体感のようなものは舞台ならではのものですよね。毎回同じことを言って同じ動きをしているはずなのに、日々新しいものが生まれることにも、ワクワクしたりドキドキしたりして……。みんなで共鳴しあって、お客さんに何かを届けられたと感じる瞬間はすごく嬉しいし、楽しいなと思います。
それから、今回ならボニーという、自分が普通に生きていたら味わえない人生や感情を味わわせてもらうことがいっぱいあるんです。それも舞台をやる醍醐味だなと思いますね。
ーーとても素敵なお答えです。まずはこの『ボニー&クライド』だと思いますが、今後挑戦してみたい役などはありますか?
桜井:なんだろう……。たまにライブの感覚をもう1回味わいたいと最近思ったりするかも。ミュージカルは緊張感があるけれど、ポップスのライブは「いえーい!」と何も考えずに自由に全力でみんなで発散する感じがあって、いいなぁと。
海乃:私はライブを経験したことがないから、ミュージカルこそ発散のイメージがあるなぁ。稽古の序盤なんて全然できないことばかりですけど、練習を重ねるうちに、できなかったことができるようになって、それをお客さんの前でお見せできるようになるのが楽しい。だからミュージカルには関わっていきたいなぁ……。
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桜井:ふふ、占い師さんにも言われたんだよね?(笑)
海乃:そうなんです!仕事で台湾に行ったときに、すごく有名な占い師さんに「75歳までバリバリ仕事する」と言われたんです(笑)。今まで歩いてきた人生の倍以上、この仕事を続けていくかな?
桜井:それだけやっていたら、もうやっていないことなさそう。全部できちゃいそう(笑)
海乃:本当に(笑)。もちろん求められないといけないけれど、長く役者人生を歩みたいと思います。
ーー最後に観劇を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします!
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桜井:今回のミュージカルは新演出ということで、歌うナンバーが一部変わっています。また、歴史の中でボニーとクライドは様々な描かれ方をしていますが、その中から自分たちでチョイスしながら自由に役を作っているところなので、新たな『ボニー&クライド』をお見せできると思います。
とても悲しいストーリーではありますが、とにかく楽曲やビジュアルが格好よくて、憧れられるような、好きになっちゃうような、そんな2人を演じられたらいいな。最後、観終わった後に「スカッとしたな〜!」「最高に気持ちよかったな〜!」と思ってもらえるような作品にしたいです。
海乃:そうですね。とにかく楽曲は素晴らしいので、その素晴らしい楽曲をちゃんと役として歌いこなせるようになりたいですね。他の皆さんは歌が本当にお上手なので……。
桜井:あなたもよ!
海乃:私、玲香ちゃんみたいに色っぽい声が出せないもん……。
桜井:何を言っているの!最高だよ!!
海乃:ありがとう。こうやって褒めてもらって自信をつけて頑張ろうと思います(笑)。
ボニーとクライドがWキャストでまた全然違うものになると思いますので、組み合わせもいろいろと楽しんでいただきたいですね。「同じストーリーで同じ演出のはずなのに、こんなにも解釈が変わるんだ」という発見があるかもしれないですから。
こんなに頑張って生きている2人も、結局はあの閉鎖的な時代から抜け出せなかったんだという切なさがあって。お客さんは、2人を観ているときもあれば、俯瞰して捉えているときもあって、きっとフォーカスする場所を変えると、作品の捉え方もだいぶ変わるはずです。そんな演出も楽しんでいただけたらと思います。
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作品名 | ミュージカル『ボニー&クライド』 |
期間 | 2025年3月10日(月)~4月17日(木) |
会場 | シアタークリエ 座席表 |
チケット料金 | チケット好評販売中! 平日:13,500円 土日祝日/Wキャスト初日・千穐楽:14,000円 Yシート:2,000円※ホリプロステージのみ取扱い (全席指定・税込) |
ツアー公演 | 大阪、福岡、愛知公演あり |
作品HP | https://horipro-stage.jp/stage/bonnieandclyde2025/ |