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ミュージカル『ボニー&クライド』が2025年3月10日(月)から東京・シアタークリエほかで上演されます。
1930年代、世界恐慌下のアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した実在の人物、クライド・バロウとボニー・パーカー。この伝説のギャング・カップルを題材に、『ジキル&ハイド』『笑う男 The Eternal Loveー永遠の愛ー』などを手掛けた作曲家フランク・ワイルドホーンさんが、ジャジーなサウンドとポップなリズムで新たに創造したミュージカルです。
今回、クライド・バロウ役をWキャストで演じる柿澤勇人さんと矢崎 広さんに、本作に懸ける思いや見どころ、お互いの印象などを聞きました。
(取材・文:五月女菜穂/インタビュー写真撮影:番正しおり)
ボニー役 桜井玲香&海乃美月
対談インタビュー
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稽古場ダイジェスト公開!
互いの印象は「本当に真面目」「同じ人間なんだ」
ーーお二人は映画「すくってごらん」(2021)での出会いが最初だったんですね。改めて当時のお互いの印象を教えてください。
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柿澤勇人(以下、柿澤):はい。「すくってごらん」は奈良でオールロケだったのですが、実は役柄的にほとんど絡みがなかったんですよね(笑)
矢崎 広(以下、矢崎):そう、同じシーンを撮影したのは、最後のシーンだけでした。でも、奈良に滞在している間に、(主演の尾上)松也さんが親交を深めようと飲み会を開いてくださって、そこでカッキー(※柿澤さんの愛称)と初めていろいろ話した気がします!
柿澤:(松也さんは)飲ませるのが上手でね、俺はそのとき泥酔しちゃって……正直な話、あんまり記憶がない(苦笑)
矢崎:じゃあ、まだそのときは会っていないことになるね(笑)。
柿澤:僕が泥酔するその前に、スタッフさんも交えた懇親会があったよね?そのときに話したことはしっかり覚えているんです(笑)。ぴろし(※矢崎さんの愛称)も僕もミュージカルをやるけれども、やっぱり大事なのは芝居じゃない?みたいな話をしたんですよね。
それと、ミュージカルだけにとどまらず、ストレートプレイもテレビドラマも映画もやりたいと。そうだよね!そうじゃないと面白くないよね!!と強いシンパシーを感じたことを覚えています。何が正解かは分からない世界だけど、役者としてのベクトルが似ているなと思ったんです。
矢崎:僕から見たカッキーは……僕も『ロミオ&ジュリエット』(2017)をやっているんですけど、カッキーは2013年にやっているんですよね。実は同い年なんですけど、僕より上の世代にいる感じがしていました。ミュージカルという主戦場で、上の世代に混じって戦ってきた人という印象なので、「観ていた人」「追いかけてきた人」でしたね。
ーーそんなお二人が今回Wキャストでクライドを演じます。Wキャストと聞いたときは、どう思われましたか?
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柿澤:いや、すごく頼もしいですよ。映画の撮影以来、久々にちゃんと話したのが、この『ボニー&クライド』のビジュアル撮影のときだったのですが、僕はクライドに関する勉強がまだ全然できていなかったんです。でも、ぴろしは既にめちゃくちゃ勉強していて、いろいろと教えてくれたんです。
本当に真面目だなと思ったし、同時に僕も真面目にやらなくてはいけないな、「このままではダメだ!」と思わせてくれる存在ですね。
稽古場では、正解を一つに決めないで、いろいろトライしています。失敗を重ねながら、自分なりの道を見つけていくような感じです。その姿は、勉強にもなるし頼りにもなる。僕もまだまだ分からないことがいっぱいあるから、ぴろしにいろいろ聞いてみたいし、一緒に役を深めていけたらいいなと思っています。
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矢崎:「すくってごらん」の撮影の後に、韓国の著名なミュージカル俳優であるヤン・ジュンモさんのボイストレーニングを受ける機会があったんですよ。僕は明らかな歌の悩みがあったので、そのアドバイスをもらいにいったんです。結構いろいろな俳優が集まったんですが、そのレッスンにカッキーもいたんです。
これは悪口に聞こえてしまうかもしれませんけど(笑)、ミュージカルって、飄々とした人が飄々と舞台に立っている印象があったんです。僕の中で。「きっとカッキーもさらっとミュージカルをやれちゃう天性の人なのだろう」と思っていたので、そのレッスンのときにカッキーが歌の悩みを話しているのを聞いて、「カッキーにも悩みがあるんだ!人間なんだ!」と思いまして。その瞬間、僕の中で、ミュージカルに対するある種の誤解が解けたし、カッキーを同じ土俵に立つ人間として見られるようになった感じがしたんです。
だから、今回の『ボニー&クライド』で同じ役をやることが決まったときは、そんなカッキーを近くで見たいと思ったし、共に同じ役をぜひやってみたいと思いましたね。
「自分の感情に正直」な柿澤さんと「とにかく試す」矢崎さん
ーー製作発表会見ではクライドの情熱的な原動力についてお話しされていましたが、ご自身とクライドとの距離感はいかがですか。共感できるところはありますか?
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柿澤:役者をやっている人は共感する部分が多いんじゃないかな。がんじがらめの場所から抜け出したい、突き抜けたい。役者はそんなエネルギーが強い職種だと思うし、寧ろそういう気持ちがモチベーションになっているとも思う。クライドに共感する部分はたくさんあります。
矢崎:例えば「成り上がりたい」という気持ちは、きっと誰もが持っている気持ちだと思いますし、男として共感できることは確かに多いですね。
でも僕はさらにクライドと分かり合いたい。なぜこの事件を起こしてしまったんだろう、なぜこうせざるをえなかったんだろうということを、時代背景とともに探っている最中です。
やっぱり悪いことをするのにも、理由が欲しい。この作品は細かく描かれていないこともあるので、だとしたら、悪いことをする“正当な理由”があってもいいと思っているんですよね。あえてクライドをアンチヒーローだ、ワルだ、人殺しだと思わないようにしています。
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ーー映画とは違い、ミュージカル版は細かい過程も描かれるわけですね。
柿澤:映画より生い立ちも含めて、分かりやすくなっていると思います。とはいえ、出会いからその死までを2時間30分ぐらいで描かなくてはいけない他のミュージカルと同じように、この作品もジェットコースターのように一度乗ったらビューンと突っ走る感じだと思います。
ーー現時点で、お互いのクライドをどう見ているのですか?
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柿澤:ぴろしのクライドは、今、ものすごく色々なことを試しているから、最後に何をチョイスするのかがすごく気になる。
僕から見ると、チャーミングで可愛いから守ってあげたくなるタイプなんですよね。お茶目で、弟みたいな感じ。でもふとした瞬間に寂しい顔もするし、誰も信じていない子犬のような目もする。「え、今ここでなぜそういう顔をしたんだろう」と興味があります。
でも僕のクライドとぴろしのクライドは、違うベクトルというわけではないと思うんですよね。やりたいこととか目指しているところとかは割と似ている気がするんだけど、観ている側としてはきっと大きく違って見えるんだろうなぁ。不思議ですよね。
矢崎:カッキーは演じている自分の感情に正直に、嘘のないように、丁寧に役を作っていますね。嘘のないクライドをベースとして作って、後からたくさん肉付けをしていく。そんな役作りをしているように見えます。
カッキーは、きっといろいろ考えた上で、無理なく飛行機を飛ばせる真ん中のラインからスタートしているとしたら、僕は高いところからも飛行機を飛ばしてみたいし、低いところから飛行機を飛ばしたらどうなるのかも気になるし、いろいろ飛ばし方をやってみるタイプ。
間違ってたらごめんね(笑)。でも彼の作り方を見て、「そうだよな」とよく思うし、カッキーが真ん中のラインをキープしてくれているからこそ、僕もいろいろトライができるなと感じています。
ーーボニー役のお二人(桜井玲香さん/海乃美月さん)の印象を教えてください。
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矢崎:違いすぎて面白いですよ。言語化するのはなかなか難しいんですが、(海乃さんは)「ライトサイドがすごく似合う女優さん」と(桜井さんは)「ダークサイドがすごく似合う女優さん」で、ボニーはその中間だと思うんですよね。お互いにそれがどう寄っていくのか、見つめていきたいですね。
柿澤:うんうん、ぴろしの言ってくれた通りだと思います。
稽古場にいる雰囲気の話をすると……玲香とは何度か共演していますけど、彼女は可愛い役が多いというか、いわゆる王道のヒロイン像をたくさん演じてきたと思うんですよね。でも、今回のボニーはヒロインではありますけど、もっと多面的というか、いろいろな面を持っている。クライドとある意味で拮抗しなくてはいけないから、強い部分もある。初めて挑戦するタイプの役なんじゃないかな。
一方で、海ちゃん(※海乃さんのこと)は宝塚歌劇団を退団して、全く環境が違うところに飛び込んだわけですよね。恐らくいま、むちゃくちゃ怖いと思うんですよ。僕も昔、劇団を辞めてから、ずっと怖かったし、コンプレックスもあったし、なんとか変わっていかないと生き残れないと思っていたから……海ちゃんが正直どう思っているかは分からないですけど、環境が違うだけでもいろいろ悩むはず。それで、稽古場で悩んでいる顔を見かけて、「ああ、稽古場だなぁ。美しいなぁ」と思ったんです。
僕らもどんどん突き破っていかないといけない。そうしないと、芝居としても面白くないじゃないですか。ボニーとクライドとして、お互い手を取り合って、いい空気でつくっていけたらいいなと思います。
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鮮度高く、濃く生きたい
ーー改めてワイルドホーンさんの楽曲についてはいかがですか?
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柿澤:今回の曲も、疲れます(笑)。歌を歌うことはもちろんエネルギーがいることなんですけど、今回は特にそういう曲が多いですね。喧嘩をしたり、誘ったり、強い想いがある曲ばかり。それに、僕にとってはキーがすごく高くて。ぴろしは高いところもガンガン出るからいいけど……。(苦笑)
矢崎:辞めてよ!記事になっちゃうよ!そんなことないです!
柿澤:でもワイルドホーンさんは、役者の心が動いて、言葉が観客に聞こえて、その曲が格好よくなるならば、もう何しても構わないという、心の広い作曲家という方ですから。
矢崎:僕はすごく好きなんですよ、ワイルドホーンさんの曲。特に『ドラキュラ』の曲とか大好き。僕は2011年と13年に出演しているんですけど、和央ようかさんをはじめ、こにたん(※小西遼生さんのこと)や辛源などと一緒にやって……!それから『スカーレット・ピンパーネル』に出演したこともあって、ワイルドホーンさんの楽曲にいろいろ触れてきました。家に帰っても歌いたくなるような、耳の凝りのいい楽曲をたくさん書かれていますよね。
ただ、この『ボニー&クライド』に関して言えば、「ああ、ワイルドホーンさん、こんな休ませてくれないんだ!」と思っています。曲を歌って疲れるのはいいんですけどね、休憩がないんですよ。それとどう向き合っていこうか、今、作戦を練っています。
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ーーお二人が好きなシーンや曲を教えてください。
柿澤:僕はラストシーンですね。まだ稽古してないんですが、これがいい歌なんですよ。ボニーがずっと歌っていた曲にクラウドも一瞬寄り添って、最後はユニゾンで終わるんですけど、どうなるんだろうなぁ。すごく楽しみだし、おしゃれで素敵なシーンになる予感がしています。
矢崎:僕は1幕の歌が全部好き。1幕では、クライドが刑務所に入って、脱獄するところまでが描かれるんですが、「ピクチャー・ショー」から入って、途中いろいろな曲が入って、メインテーマのような大ナンバーで終わる。この流れがね、コントラストがあって、すごいセットリストだなと思っています。
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ーー今回はシアタークリエでの上演ですが、クリエについてはどういう印象をお持ちですか?
柿澤:とても好きな劇場のひとつです。僕はミュージカル『ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~』(2016)でクリエの舞台に立ちました。すごくいい作品だったし、自信もあったし、「絶対他には負けないよね」というところまでいけていた。なのに、僕が本番中に大怪我をしてしまって……“苦い思い出”で終わってしまいました。
だから今回はとにかくみんなでゴールテープを切りたい。それしかないです。
矢崎:お客さんとの距離が本当に近いから、ダイレクトにお客さんの熱が伝わってきますよね。僕が関わった作品が、そういう熱が感じやすい作品だったからかもしれないですけど。好きな劇場です。
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ーー最後に、観劇を楽しみにされている方々へメッセージをお願いします!
矢崎:ミュージカル好きにはもちろん観てもらいたいんですけど、そんなに観たことないかもという人の方が実は刺さっちゃったりなんかして、と思っています。あまりにも力強い楽曲に物語が乗ってきて、スピーディーかつスタイリッシュ。いろいろなドラマを見たい人はハマるはずです。
ボニーとクライドの刹那的な物語。悪いことはしているんですけど、それでも皆さまに愛していただけるような2人になっていければいいなと思います。ポップな曲もあったり、素敵なバラードもあったり、僕は作品自体がすごく格好いいな、イケてるなと感じるんですね。それをお客様にもぜひ劇場で体感していただきたいです。
柿澤:これは(演出の)瀬戸山(美咲)さんが顔合わせのときに仰っていたんですが、ボニーとクライド含め、いろいろな人たちの感情の起伏を全部色濃く見せたい、と。怒るときは怒る、楽しいときは楽しい、悲しむときはめちゃくちゃ悲しい。それを鮮度高く、濃く描きたいと仰っていました。
シンプルなセットで、俳優の身体と声と歌とで魅せられる作品になると思います。ぴろしも僕も、ボニーの2人も、みんなの様々な面が見えるので、ファンの方たちにも楽しんでもらえると思いますし、つらい世界を必死に生きた人々がきっと美しく見えると信じています。
この記事を読んでくださっているすべての皆さまに何かをお渡しできる、そんな作品にしたいです。ぜひ劇場でお待ちしております。
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作品名 | ミュージカル『ボニー&クライド』 |
期間 | 2025年3月10日(月)~4月17日(木) |
会場 | シアタークリエ 座席表 |
チケット料金 | チケット好評販売中! 平日:13,500円 土日祝日/Wキャスト初日・千穐楽:14,000円 Yシート:2,000円※ホリプロステージのみ取扱い (全席指定・税込) |
ツアー公演 | 大阪、福岡、愛知公演あり |
作品HP | https://horipro-stage.jp/stage/bonnieandclyde2025/ |