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「いつか世界で活躍する俳優に」2度目の『ピーター・パン』に挑む山﨑玲奈にインタビュー
  • インタビュー

今年で44年目を迎える、青山メインランドファンタジースペシャル ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』。今年も7月24日(水)から東京国際フォーラム ホールCで上演されます。


昨年に引き続き、ピーター・パン役を演じる山﨑玲奈さんに、『ピーター・パン』に懸ける思いや作品の魅力、そしてミュージカル俳優になったきっかけなどを語ってもらいました。

(取材・文:五月女菜穂/撮影:番正しおり)

01  「いいものを作ろう」と白熱した稽古場
02  幅広い世代に楽しんでもらえる作品だから愛される
03  「不合格」を経て、掴み取った夢への切符
04  マルチに活躍できる俳優になって、いつか世界へ

フック船長 役 小野田龍之介さんインタビューも公開中!

▼2023舞台映像ダイジェスト

「いいものを作ろう」と白熱した稽古場

ーー『ピーター・パン』として2度目の夏がやってきます。まずは前回の公演を振り返っていただけますか?

2023年公演 舞台写真/撮影:宮川舞子

座長を務めるのも、フライングやアクションをするのも初めてでしたし、それこそピーター・パンの世界に入ること自体が初めての経験でした。カンパニー全体を見ても、長谷川寧さんという新しい演出家さんでしたし、小野田龍之介さんという新しいフック船長を迎える公演だったので、みんなの“初めて”が集結した年だったんですよね。


だからこそ、私自身も初めてのことだらけで試行錯誤していましたが、みんながみんないろいろと試行錯誤しながら稽古をしていて。キャストもスタッフも「いいものを作ろう」という想いを持った、熱い稽古場だったなぁと思います。


実は、最初はとても緊張しながら稽古場に向かっていたんですが、みなさんが本当に温かく迎え入れてくださったので、すぐに緊張もほぐれて、のびのびとピーター・パンにチャレンジできました。

ーー白熱した稽古場だったのですね。具体的にはどういうところで「熱い」と感じましたか?

例えば、稽古の開始時間の30分前にはみんなが稽古場に来ていて、一緒にストレッチしたり、振付や動きの確認をしたり、自主練をしていたんです。「稽古場でできることは全部やっていこう!」という気合いが感じられましたね。


キャスト同士で「頑張ろう!」と声をかけて励ましあったり、演出の(長谷川)寧さんがキャストの輪になかに入って、「こうしてみよう!」と提案をしてくださったり……。みんながみんな熱かったです。


本稽古の前にワークショップを行ったことも大きかったのかもしれません。一緒に芝居や本読みをした経験が事前にあったからこそ、本稽古開始時には互いに面識がありましたし、いきなりエンジン全開で稽古に取り組めたと思います。

ーー山﨑さんから見て、演出の長谷川寧さんはどんな演出家ですか?

寧さんと初めて会ったのは、公演が行われる前年の冬。これまでの『ピーター・パン』の上演台本を読み漁ったり、オーディションに立ち合わせてもらったり、クリエイションの初期の話し合いに参加させてもらったんです。演出家さんやスタッフさんが作品を作り上げていく過程の一部を見せてもらったことで、より『ピーター・パン』の世界やその奥深さを知ることができたなと思います。


寧さんの演出や考え方には「こんな考えができるんだ!」といつも驚かされていましたが、稽古場ではキャスト一人ひとりに寄り添う姿が印象的でしたね。寧さんは振付もしているのですが、一つ一つの動きを丁寧に教えてくださいましたし、演出面でも「こうやってみたらどうだろう」などとキャストと一緒に作品を作ってくださっている感じがしました。

ーー前回はセリフもいろいろ変わっていたと思いますが、上演台本を読み比べていたからこそなんですね!

はい。例えば、高畑充希さんのバージョンのときの台本やブロードウェイでやっているときの台本、ヴァリさんが書いた原作なども読み漁りました。いろいろと読んでいくなかで、「ここはこういう解釈だけれど、このときはこうなっているね」といった議論ができて、「じゃあ、私たちはどう考えようか」ということまで話し合って……。なかなか他の現場では出来ない経験をさせてもらったなと思っています。

幅広い世代に楽しんでもらえる作品だから愛される

ーー2回目の『ピーター・パン』ということで、今回はどんなところを深めていきたいと思っていますか?

フライングは前回初めてやらせていただいて、いろいろな技を教えてもらったんですけれども、まだまだできないこともたくさんあって。「本当はこうした方が躍動感が出る」とか「本当はこうやって動いてみたい」とかいろいろと自分のなかでも思うことがあるので、今回はもちろん安全面に注意しながらも躍動感のある動きに挑戦したいなと思っています。


それからアクションですね。ピーターとフックのアクションシーンがやはり印象的だと思うんですけど、初めてのアクションということもあって、どうしても動きに囚われすぎてしまったなと思うんです。だから今回は、もっと集中して、お互いの空気感で技を仕掛けたり、決められているけど決められていると思われないように動いたりしてみたいな。


もちろん歌もダンスも芝居も、寧さんとともに深めていきたいなと思うんですけど……「フライング」と「アクション」の2つは特に昨年の自分を超えたいと思っています。

ーー前回の経験をより磨いていくようなイメージでしょうか。

そうですね。去年は去年で100点を出せたと思うのですが、今年も今年の100点を出したいと思っていますから。もちろん去年の経験で活かせる部分もあると思うんですけど、「ここがちょっと足りなかったな」とか「ここをもっとやってみたかったな」という部分をグレードアップさせたいと思っています。


それこそ新しいことにもチャレンジできる場面も、もしかしたらあるかもしれないですよね。それに今回はウェンディ役が鈴木梨央さんに変わりましたから、(前回の)岡部麟さんと作り上げたものとはまた違って、0からまた新しく作り直す部分もあると思うんです。

ーー確かにウェンディはまた全然違ったものになりそうですよね。

はい。前回の岡部さんは本当に可愛らしくて、純粋で一途で、ピーターのことをすごく好きになってくれているんだろうなと思ったんです。


一方で鈴木さんは、先日ワークショップでご一緒したのですが、かなりまっすぐにくるウェンディだったんですよ!セリフの圧も強かったですし、「あなたのことが知りたいの!」という思いも強く感じられて、ピーターが負けそうになる瞬間が何度もありました(笑)。だから負けていられないなと思いますし、堂々とどんな時も自信をもつピーターでいられるように頑張ります。

ーー改めて『ピーター・パン』という作品の魅力はどんなところにあると思いますか?

改めて幅広い世代の方が楽しめる作品だというのはすごいなと思っています。 


私が初めて『ピーター・パン』を観たのは小学校低学年のときで、唯月ふうかさんがピーター・パン役でした。そのときは純粋に楽しい作品だなという印象が強かったんですね。でも大人になったらなったで、『ピーター・パン』の奥深さを知って、それもまた楽しい。いろいろな楽しみ方ができる作品であることが一番の素敵なところだなと思います。

ーー「奥深さ」とはどういうことですか?

子どもの頃に観た『ピーター・パン』は、自分もネバーランドに行ったような気分になって、「本当に楽しい!」という感覚が強かったんです。


でもちょっと大人になって観た『ピーター・パン』ーー私の場合は中学生のときに吉柳咲良さんのピーターを何度か観させてもらったのですが、そのときはティンカーベルがちょっと弱々しくなっちゃっているときにピーターの孤独が垣間見られたり、ちょっと涙する場面があったり、ウェンディとの別れ際に「こんなに大人になるのは切ないことなんだ」と感じたり、ピーターとフックの戦いも「いけいけ!」と応援するだけではなくてざわざわする気持ちが芽生えたり……。幼い頃には感じなかった奥深さがあって、胸がぎゅっとなる作品だったんだと思い知らされたんですよね。


言い換えれば、それが長きにわたって作品が愛される理由だと思うんです。昔幼い頃に『ピーター・パン』を観た人でも、時を経て観たときに、また好きになってくださる人も多いみたいで。それはいろいろな視点から楽しめるということからなのかなと思っています。

歴代ピーター・パン左より)榊原郁恵*、笹本玲奈、高畑充希、唯月ふうか、吉柳咲良 ※「榊」は正しくは“木へんに神”と表記

ーー子どもも大人も楽しめるミュージカルということですね。

はい。ティンカーベルのシーンはお客さんに問いかけるシーンだと思うんですけど、子どもたちが必死に拍手している姿を見ると、すごく没入してくださっているんだなと思いますし、大人の方も涙を拭いながら拍手してくださっている方もいます。


ピーターとフックの戦いでは「ピーター、頑張れ!」と声をかけて、勝ったら本気で喜んでくださっている子どもや、最後、客席で歌うシーンで、全力で一緒に雄叫びダンスをやってくれてる子どもたちがたくさんいるんです。


稽古場では「どんな反応が返ってくるんだろう」とちょっと不安になることもあったんですが、いざ幕が開いたらものすごく反応があって、とても安心しましたね。こんなに楽しんでもらえるんだとすごく嬉しかったです。

「不合格」を経て、掴み取った夢への切符

ーーそもそもミュージカル俳優になろうと思ったきっかけを教えてください。

小さい頃から歌うのが好きで、家でよく歌っていたんです。そんな私の姿を見た母親から「どこか教室に行ってみたら?」と言われて、ミュージカルスクールに通うことになったんです。みんなで歌う楽しさを知って、市民ミュージカルにも何度か出演させていただきました。その団体は愛媛県内の団体で年に2回公演をするのですが、発声のやり方や滑舌の練習から始まって、歌やダンスも基礎から教えてくださいました。


そして、その市民ミュージカルの演出家さんに「『アニー』のオーディションを受けてみたらどう?」と勧められて、試しに1回受けてみたんです。何も対策をしなかったので、当然、結果は不合格。そのときに「悔しい!もう一度受けたい!」と思って、母親に相談の上、上京して、苦手なダンスを中心にレッスンを受けて……そうして2回目のリベンジで『アニー』になることができました。


『アニー』の稽古や本番を通じて、ミュージカルを仕事にするミュージカル俳優という職業に憧れを抱き、そこからよりミュージカル俳優になりたいと思うようになりました。

ーー1度不合格となってから再びの挑戦で合格した山﨑さん。当時の年齢を考えても、上京するなんてかなりの覚悟ですよね。

私はそれまで夢がなくて、ぼんやり生きていたんです。でも『アニー』のオーディションに落ちて、初めて「もう1回挑戦したい」という気持ちになりました。もちろん愛媛という生まれ育った街から離れるのは寂しかったんですけど……まぁ、またみんなにも会えるだろうと思っていましたし、上京したら大好きなディズニーランドも近いしと思って、寂しさよりも楽しみの方が大きかったんです。


それに父が単身赴任で愛媛から離れていることや転校しやすい学校だったこともあり、母親がOKなら上京できる環境で。母も私の思いを応援してくれていたので、上京を決意しました。

ーー上京してからはどんな日々でしたか?

「あなたに何が足りない」と問われたら「ダンス」と即答するほど、私は踊れませんでした。週1~2回はジャズダンス、週6日はバレエを習って、ダンス漬けの日々を過ごしていました。途中で休むこともなく、頑張って通っていましたね。

ーー念願の『アニー』の出演。今、振り返ってみてどうですか?

当然といえば当然なのですが、『アニー』の現場は「プロ」が集まっている場所。それまで地元の人たちとワイワイやっていた私は、業界の厳しさを知りました。


例えば、プロとしての礼儀ですね。当時は敬語も全然使えなかったですし、人見知りながら仲良くなると距離を一気に縮めるタイプなので、いろいろと失礼だったなぁと思うのですが、そういう礼儀も一つひとつ覚えました。


とはいえ、『アニー』は今振り返ってもとても楽しい経験でしたね。アニー役はWキャストなので、もう1人のアニーの稽古を見たり、演出家の方にいろいろアドバイスをもらったりと学びの連続で、充実していました。

ーーそして第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン(以下、TSC)「ミュージカル次世代スターオーディション」でグランプリを獲得されました。

はい。『アニー』に合格した瞬間と、TSCでグランプリを獲得した瞬間は今でもはっきり覚えてます。

実は『アニー』の後に『スクールオブロック』のサマー役で出演予定だったのですが、コロナ禍で全公演が中止になってしまいました。そんなときにホリプロの方からTSCのご案内をいただいて。もともとフリーでやっていた私は、高畑充希さんに憧れていたこともあり、ホリプロに入れるチャンスかもしれないと思って、TSCに応募したんです。そして、グランプリを獲得することができました。


もしも『スクールオブロック』が中止にならなかったら、TSCのことも知らなかったかもしれません。だから案内をくださった方にはとても感謝しています。

2020年開催 ホリプロタレントスカウトキャラバン(TSC) 授賞式の様子
2020年ミュージカル『スクールオブロック』

ーーホリプロの新作ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』のリン役も印象的でした。

最初にこのお話をいただいたときに、家族の中で特に『北斗の拳』世代の父親が大興奮していたことを思い出します(笑)。


実際に『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』に参加することになって、第一線で活躍されているミュージカル俳優の方々に囲まれて稽古をする贅沢さといったら……!歌もうまいし、お芝居も素敵だし、(主演の)大貫(勇輔)さんをはじめダンスもキレキレだし、毎日いろいろなことを吸収しまくりでした。


また、世界初演ということで、1から作品を作り上げることの大変さと面白さも知ることができた作品でしたね。

2021・22年上演 ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』撮影:田中亜紀/©武論尊・原哲夫/コアミックス1983 版権許諾証GS-111 ©ホリプロステージ

マルチに活躍できる俳優になって、いつか世界へ

ーー着実に俳優としてのステップを踏んでいる山﨑さんですが、「こんな俳優になりたい」というビジョンはありますか?

私は高畑充希さんに憧れています。ミュージカルにも映像にもCMにもバラエティにも出られる高畑さんのように、幅広くマルチに活躍できる俳優さんになりたいと思っています。


具体的には、20歳までにテレビドラマにレギュラーで出演したいですね。舞台だと、『レ・ミゼラブル』と『ミス・サイゴン』に出演するというのが目標。憧れの先輩と一緒に舞台に立てる日が来るように頑張りたいです。


そして、将来的にはブロードウェイに出演するなど、世界で活躍する俳優になりたいです。そのためにも語学の勉強を頑張らなくてはいけないなと思っています。

ーー素敵ですね。山﨑さんを突き動かす「原動力」はどこにあるのでしょう?

ただただ楽しくて!もちろんお仕事ではあるんですけど、自分が楽しいからずっとやっていられると思うんですよね。


特に今は芝居が楽しいです。山﨑玲奈から違う人になれるって、やっぱり俳優しかできないことだと思うんですけど、それが本当に楽しい。自分とは別の人生を歩んで、いろいろな人生を楽しめるなんて、すごく素敵なことだなと思いません?出演作品が増えれば増えるほど、いろいろな役に出会えて、いろんな役の人生を歩めて、何度も生まれ変わっているような気持ちになれる。それが楽しいんです。

ーーちなみに今後やってみたい役はありますか?

悪役をやってみたいです!アニーもピーター・パンもリンもそうですが、私は太陽みたいな存在というか、物語を進めていく明るい象徴のような役をやらせていただくことが多いんです。年齢も影響していると思うんですけども。


だからこそ、ちょっと影があるというか、物語を悪化させる役をやってみたいと思います。

ーーそれでは最後に『ピーター・パン』を楽しみにされているみなさんに、この夏、どんな山﨑さんの姿を見せてくれるか、一言お願いします!

1年目に観に来てくださった方ももちろんいると思うんですけれども、今回はフライングもアクションも歌もダンスもお芝居も全部さらにパワーアップした姿をお届けできるように頑張ります。また新しいキャストさんも加わって、前回とは一味も二味も違ったネバーランドをお届けします!劇場でお待ちしています。


期間7月24日(水)~8月2日(金)
会場東京国際フォーラム ホールC / ▼座席表
チケット料金ネバーランドシート:おとな・こども平日/土日共通 10,000円(妖精の粉付)
S席:おとな 平日8,500円/土日8,900円
S席:こども 平日6,500円/土日6,900円
 
パイレーツシート特典・パイレーツフラッグ デザイン見本>>
パイレーツシート:おとな 平日8,500円/土日8,900円
パイレーツシート:こども 平日6,500円/土日6,900円
注釈付パイレーツシート:おとな 平日8,500円/土日8,900円 ※
注釈付パイレーツシート:こども 平日6,500円/土日6,900円 ※
(パイレーツフラッグ付)
 
A席特典・紙製VRゴーグル詳細>>
A席:おとな 平日4,800円/土日5,200円 ※
A席:こども 平日3,200円/土日3,600円 ※

(全席指定・税込/こども 3歳~12歳)
※先着先行から販売
公演詳細https://horipro-stage.jp/stage/peterpan/

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