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ダイナミックな魔法の世界と奥深い人間ドラマが楽しめる舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。2022年7月からロングランを続けてきたが、ついに2026年末のクローズが発表された。現在、舞台に立つスコーピウス・マルフォイ役の久保和支とドラコ・マルフォイ役の渡辺邦斗、マルフォイ家の二人が和気あいあいトーク。意外な舞台裏の様子、そして本作へのひたむきな情熱を語ってくれた。
2026年4月公演まで、チケット好評販売中!
似ていないようで似ている父と息子。
母を含め、マルフォイ家の絆は永遠。


――お互いの印象を教えてください。
渡辺:最初に会ったのはいつでしたか?
久保:僕が4期キャスト(2025〜)の稽古場に行った時ですね。
渡辺:初めましてで、いきなりスコーピウスを演じてくださった。その完成度の高さには圧倒されました。役が油みたいに染み込んでいて、解像度が高かったんですよね。
久保:僕ら3期キャスト(2024〜)も1&2期キャストが稽古で演じるのを見た時に、うわぁー!ってなりました(笑)。
渡辺:自分が先輩として、4期キャストの稽古場で立った時はどうでした?まだまだだなぁ!と思った(笑)?
久保:思わないです。同じ役をやっても人によって全然違うので。僕は稽古で初めて原島(元久)さんのアルバスと合わせた時、めちゃくちゃワクワクしました。早く本番を一緒にできたらいいなって。
渡辺:久保くんのスコーピウスはオタク気質で、いじめられているが故に何かに怯えているという繊細な芝居が印象的。蓋を開けてみたらご本人にも重なるところがありましたが、僕はどうですか?
久保:ドラコ役3名の中で、邦斗さんのドラコは一番スコーピウス性があると思います。とても繊細で一緒にやっていると親子だと思う瞬間が多い。ハリーとドラコが喧嘩した後のシーンなどちゃんと繋がっている感じがして、パパだなぁ、素敵だなと思って見ています。
渡辺:スコーピウスは貴族出身なのに貴族っぽさがない。逆にドラコにはオタク気質がない。今も共通の部分を見つけることを意識しています。たまたま昨日、映画「ハリー・ポッターと賢者の石」を観たら、ドラコがすごく優しい子だったことに気がついて。気の遣い方を間違えてハリーとバチバチしてしまうけれど、心根は優しいんです。この優しさは親子共通なのかもしれないですね。
久保:確かに!映画を観ていると、ドラコはスコーピウスと同じところがたくさんあるなと思います。
渡辺:大事なのは、この舞台にマルフォイ家のお母さん(アストリア)が出てこないところ。お母さんをどれだけお客様に届けるかは一番の課題です。
久保:スコーピウスがこういう子に育ったのも、きっとお母さんの影響がものすごく大きいから。
渡辺:ドラコにしても息子のことはとても大事。同時にアストリアが残してくれた息子だとどれだけ伝えられるか、ですね。
久保:スコーピウスが母親について言及するのは三箇所くらいで、全て強い瞬間なんです。ショッキングな思い出も強い。その分、母親像がぶれないように、しっかり言葉にしていきたいと思っています。

――話が遡りますが、『呪いの子』デビューの時を覚えていますか。
久保:必死だった記憶しかないです。僕はスコーピウスが大好きで、だからこそ稽古期間中ずっと僕を通して彼の魅力を具現化することへの恐怖心がありました。でも初めての本番を終えたら、いっぱいいっぱいだったけど楽しかった!その後落ち着くと、改めて彼の魅力を届けられたかが不安になりました。けれどもお客様からお手紙や感想をいただいて、ようやく安心しました。
渡辺:丸2カ月稽古した後、劇場入りして朝から晩まで場当たりをしました。それがあまりに怒涛すぎて、稽古と地続きのまま冷静に初日を迎えた感じです。30回目を過ぎた頃からキャストの入れ替わりが激しくなり、今は順応する難しさを感じているところです。
久保:一役にキャストが3人いたりするので、すごく久しぶりに舞台上で会う方もいて。各々がいろんなことを考えながら公演を積み重ねてきているので、同じ相手でも以前やった時とは少し違う形になるんです。そこが面白いし新鮮です。
渡辺:緊張感はずっとありますね。この舞台は決まりごとが多く、幕が開いたら寸分狂わずにやっていかなければいけない。しかもキャストが変わる。今日も袖から見ながら、みんな約1300の決まりごとがある中でしっかり熱量を持って芝居していることに感心していました。
久保:僕、舞台上であれをやって、これをやって…と、たまに頭の中がうわーっとなります(笑)。芝居でテンションが上がると身体も気持ちも追いつかなくなる、スリリングな一瞬が!

渡辺:これ、書いたら怒られるかもしれないけど、全スコーピウスの楽屋のテーブルは混沌としています。
久保:(爆笑)。確かにアルバスは机の上が綺麗な人が多いですね。スコーピウスは頭の中が散らかっているのかな?

渡辺:多分、せかせか演じなきゃいけないからじゃない?
久保:楽屋の机の上から役作りを始める、みたいな(笑)。スコーピウスは気持ちの部分ではとことんテンションを上げる、でもどこか冷静にならなければいけないところもあるので、そのバランスが難しくて机の上に表れるのかも。
新しい気持ちで毎回言葉が出てくる
――『呪いの子』が独特だと感じるところはどんなところ?
渡辺:舞台では一般的に俳優陣の動線が決まっていますが、このカンパニーはスタッフたちの決まりごとも多いことに驚きます。スタッフの動線、誰がどこを通るのかをお互いが把握しています。劇場を俯瞰して見たら、精密な時計の中身みたいになっているでしょうね。ロングランならでは、そしてハリー・ポッターならではの見えないところの面白さですね。
久保:スタッフが入れ替わる時も、そのポジションを新しくやる方が本番中に裏付きをして、その仕事を引き継ぎます。
渡辺:細かいことで言うと、ドラコは衣裳のボタンがとても多くて。衣裳を脱ぐ時に、ボタンを上から外すのか下から外すのかさえ全て決まっています。僕の場合、脱ぐ時は下からで着る時は上から。早替えでは衣裳さんがアシストしてくださいます。


――衣裳や小道具、行動などでご自身の役をよく表しているものは何でしょう?
渡辺:ドラコの髪が絶妙な編み込みになっていること。ドラコは舞台上で後ろを向いている時間が長いので、ぜひオペラグラスで見ていただきたいです。この編み込みは一人ではできない。貴族だから仕える人が整えているんでしょうね。毎回、ヘアメイクさんがほどいて結び直してくださいます。僕が作ったオリジナルストーリーとしては、ドラコの父親も髪の長さは同じだけど結んではいなかった。ドラコは父親を反面教師のように捉えていたから、自分は違うと髪を結んだ。そんなふうに想像しています。

久保:スコーピウスもキャストによって前髪や分け目がちょっとずつ違います。
渡辺:久保くんのスコーピウスは前髪が長い。
久保:はい。左眉にかかるくらい長めです。またドラコとスコーピウスは靴が同じなんですよ。おしゃれな革靴!
渡辺:そうそう!同じデザインで先がとんがっている。多分、ドラコが作らせたんだね。
久保:マルフォイ家はオーダーメイドしてそうです。僕、カーテンコールでパパと隣同士で並んでお辞儀をする時、靴が同じだ!ってニコニコしちゃいます。
渡辺:久保くんは僕のお辞儀の仕方を真似てくる。可愛い(笑)。
久保:ドラコ役は皆さん、貴族っぽくつま先の角度が洒落た感じ。最近、カーテンコールでパパの真似をするのがマイブームです。

――それぞれお気に入りのシーンを教えてください。
渡辺:やはりドラコがハリーと喧嘩するシーン(デュエル)です。アミューズメントパークみたいで楽しい。今日の公演では台詞の掛け合いが最高で、舞台をはけてからハリー役の上野(聖太)さんと、「すごく楽しかったね!」と喜び合いました。このシーンはまだまだ追求、探求できるなと嬉しかったです。
久保:デュエルは飛んだり跳ねたり、どうしてあんなことができるのかが不思議です。羨ましいシーンですよ。スコーピウスは魔法を使うシーンがほぼなくて、使うのはクッションの呪文くらい(笑)。
渡辺:スコーピウスは苦しい魔法をたくさんかけられる側だから(笑)。
久保:僕が好きなのは、禁じられた森からホグワーツ城を見上げるシーンです。世界がぱーっと広がって、初めて観劇した時に泣き、観るたびにうるっとしてしまいます。アルバスと並んで話していると、拗らせているアルバスを愛おしく思えて。「君の方がいいよ」という台詞を言う時、日によってかなり変わります。思わずぽろっと笑顔で出る時もあれば、君は素敵だよと真剣に伝えたくなる時もある。新しい気持ちで毎回言葉が出てくる感じ、日によって変わる感じが僕は好きです。
渡辺:僕も袖で見ていて泣いていますよ。
久保:僕も泣きそうになったりします。何回やってもこんな気持ちになるんだって、もっとやりたくなる。僕はデビューした年は大体週1回の出演で、4期が始まってから出演頻度が増えて感じ方も変わりました。きっと100回目と200回目では感じ方が全然違うだろうなぁ。

一人の人間と長い時間向き合える
――この舞台に関わってよかったことは?
渡辺:同じ芝居でこんなにキャストが変わって、同じ台詞を言い続けることは、まず他の作品ではないでしょう。何が飛んできても対応する、演者としての力とメンタルが鍛えられます。カンパニーのみんなと家族みたいになれたこともよかった。
久保:距離が近いですよね。ロングランは身体的にも精神的にも大変だけど、でもこの舞台を届けるためにみんなで支え合い、寄り添い合っている。
渡辺:スタッフの気遣いを含め、長いからこそ築ける絆、テンションを保つための方法がしっかりできているところも魅力です。
久保:僕は一つの役、一人の人間とこれだけ長い時間向き合えるのが面白いです。僕自身は人間として日々変化するけれど、スコーピウスの台詞や台本は変わらない。ただ見え方が変わっていく。僕は役と脳内でイマジナリー会話をする人で、本番前に鏡を見つめて、スコーピウスに「今日はどうですか」と話しかけるんです。稽古で思っていたスコーピウスと今、話しているスコーピウスは性格が違っていて、彼を表出する媒体として、僕の変化が影響しているのだろうと考えたり。
渡辺:作品が深くて、未だにどうやって台詞を言ったらいいのかわからないところがあります。ドラコは言葉の選択が上手くないから、台詞が本当に難しい。
久保:ドラコ役のキャストの皆さん全員からその悩みを聞きます。パパ頑張れ!

積み重ねてきた作品の歴史をぜひ
――来年末のクローズが発表になりました。今のお気持ちと読者へのメッセージをお願いします。
久保:劇場をこの作品のために改造して、オリジナルのプランそのままで、照明、音響、装置、マジックの至るところに本気で挑んだ力作。歴史に記される作品だと思っています。マジックはもちろん、人間模様が繊細で面白い。あと1年の間にぜひ観に来てください!
渡辺:1300回を超える公演数、自分がその歴史の一部になれたことに感謝しています。僕は長年いろんな作品を見てきましたが、声を大にして言いたいくらい、演出とストーリー性、芝居力も含めて日本最高峰の作品だと思います。ハリー・ポッターファンの人たちはもちろん、単純にお芝居が好きな人たち、そしてまだ舞台を観たことない人たちにも届くように頑張っていきたいです。


▼ハリー役 平岡祐太インタビュー

▼アルバス役 原嶋元久×スコーピウス役 大久保 樹インタビュー
▼ハリー役 平岡祐太×アルバス役 福山康平インタビュー

| 作品名 | 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』 |
| 日程 | 上演中~2026年4月 |
| 会場 | TBS赤坂ACTシアター 座席表 |
| 上演時間 | 約3時間40分(休憩あり) 本公演は、演出の都合上、 開演した後はお客様のお座席にご案内ができるお時間が限定されております。 詳しくはこちら>> |
| チケット情報 | 2026年4月公演まで、チケット好評販売中! チケット詳細はこちら>> |
| チケットに関するお問合せ | ホリプロチケットセンター 03-3490-4949 (平日11:00~18:00/定休日 土・日・祝) |
| 作品HP | 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公式Webサイト https://www.harrypotter-stage.jp |



