特集・インタビュー
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』ではハリー・ポッター役とドラコ・マルフォイ役で火花を散らしている二人。
これまでダンス作品『Clementia ~相受け入れること、寛容~』、『BALLET GENTS』、『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』で共演を重ね、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』では同役の死を演じられました。大親友の二人が語る身体表現について、また今目指すものとは?
(取材・文:三浦真紀/撮影:井上綾乃)
【2024年11月~2025年2月公演 チケット販売情報】
〈先行発売〉7月6日(土)10:00~7月19日(金)23:59
〈一般発売〉7月20日(土)10:00〜
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身体的特殊能力より演じる能力
――ハリーとドラコといえば、『呪いの子』劇中のアクロバティックな対決シーンは手に汗握る名場面です。このシーンについて、事前に話し合われたりしますか。
(撮影:宮川舞子・渡部孝弘)
宮尾俊太郎:特に話し合わないです。スピードを上げられるだけ上げよう、くらいかな?勇輔が相手の時は、速度の限界ギリギリを狙います。台詞のスピードを上げたり、間を消したり。
大貫勇輔:観ている人が息つく暇のないくらい、緊張感をキープしながら。宮尾さんは、机にのぼる、机から降りる動作がめちゃくちゃ速くて綺麗です。
宮尾:身体をそらせるのも得意です。
大貫:宮尾さんの時はヒリヒリするんですよ。きっかけがあって、そこから魔法対決へ突入していくわけですが、宮尾さんのテンポ感がとんでもなく速い。
初めて一緒にやった時、大丈夫?と心配になりました。でも全然平気でやっているから、このスピードに乗っていこうと。やっている僕ですらドキドキするから、観客の皆さんは余計にそう思うでしょうね。
ちなみに(藤原)竜也さんの時が一番速いそうです。
宮尾:竜也さんの場合、台詞がさらに速いんです。お互い、もし何かあってもここの台詞で調整できるよね、と。勇輔は対決で何か心がけていること、ある?
大貫:僕は自分が魔法をかけていて、相手が踏ん張ったり反発したりする、その相手の身体のあり方に応じて、動くようにしています。
宮尾:俺もそれ、やっています。相手にテンションを合わせるのは大事なことだから。
――身体表現の面白さも『ハリー・ポッターと呪いの子』の特徴ですね。
宮尾:だけど、僕はダンサー的身体表現はなるべく抜きたいと思っているんです。それよりも一人の人間の動きを追求していきたい。どうしても舞踊的になりがちなところがあって。
大貫:校長室の暖炉から現れるところはバレエ!という感じがします。そこで笑いが起きる唯一のドラコが宮尾さん(笑)。
宮尾:起き上がり方を上手く使って、美しく。
大貫:僕はテンションが上がると、身体が動きたくなっちゃうんですよ。だけど喋っているシーンは、身体を動かさないほうがお客さんに伝わることも多かったりします。
目の情報よりも耳の情報のほうに負荷をかけた方が、ちゃんと聞いてほしい時に効いてくるな、と。その辺り、ロングランで演じてお客さんの反応を掴めるようになってわかってきたところです。
宮尾:本当にそう。こうして素晴らしい役者さんたちを間近で見たことで、お客さんの想像を膨らませる言い方もあるんだと僕も学んでいます。
ドラコをやり始めた頃は、感情を出すことだけを心がけていました。もちろん、それが必要なシーンもあるけれど。怒るところだからってずーっと怒っているだけでは伝わらない。人間って怒る前にしばらく我慢したり、顔には出さなかったり。
人間の感情は本当に複雑なものなんです。それぞれのコミュニティで育ち構築されたものが、人それぞれの感情になっていく。感情とはなんぞや。僕はそこに関心を持ち、南アフリカからどうやって人間が分布していったのかまで研究しました(笑)。
大貫:『呪いの子』については3時間40分という上演時間、お客さんをどれだけ飽きさせないでこの世界に引っ張っていけるかが鍵。スピード感と全体のバランスが大事で、そこは意識しています。
――生徒たちが踊るワンドダンス(杖のダンス)、ご覧になっていかがですか。
宮尾:僕の方が上手くできるよ(笑)。
大貫:本当によくできているなと思います。振付と演出が秀でていることで魔法が生まれ、操り、操られることができる。振付の妙、演出の妙が素晴らしいです。
宮尾:言い換えれば、『呪いの子』の俳優は身体的特殊能力を持っていなくてもいいんです。それよりも演じる能力の方を強く求められている。ダンサーだから活きることは、それほどないんじゃないかな。
大貫:僕も同感です。
過去作品からのヒント:肉体が喋るマシュー・ボーン
――では今まで出演されたダンス作品で、『呪いの子』で何かのヒントになっている作品はありますか。
大貫:マシュー・ボーンの作品ですね。マシューの作品では肉体が喋ることが大事なんです。例えば『呪いの子』の3時間40分、全てを台詞で説明することはできません。
喋ることなく、この人は何かを語っているように見える、今こう思っているんだろうな、背景にはこういうものがあると、肉体で説明することも必要です。
どう息をして、どう立ち、どんなスピードで体の向きを変えるのかなど、身体を使って説明できることも多い。これはダンサーなら考えることで、活かせるなと思います。
宮尾:確かに僕もやっていますね。身体的にはまだまだ脱ぎ捨てられていないなぁ。
大貫:でもその方が、観ている人にはわかりやすいですよね。僕、マシューのカンパニーは最近、さらにダンスに力を入れている気がします。
若い才能を積極的に採用して、身体が利く人材を揃えています。もちろん、メンバーは皆さんお芝居のセンスもちゃんと持っているのがすごいのですが。そしてマシュー作品は独特の解釈が面白いですよね。
今度来日する『ロミオ+ジュリエット』は、近未来の反抗的な若者たちの矯正施設が舞台と、既成概念を覆してくれます。
“マシュー・ボーン・マジック”によって人々の期待を裏切らないスリリングでスタイリッシュな作品として大ヒット。待望の日本公演が来月4月10日(水)より東急シアターオーブにて開幕。公演詳細>>
宮尾:マシュー作品は『シンデレラ』を観ましたが、振付がめちゃくちゃ難しかったです。あれを踊ったらものすごく疲れるだろうなって。中でもパドドゥ!
大貫:ありましたね。最初、シンデレラが人形と踊っていたのに、途中から人間に代わって人形みたいに踊る振付。あれは超絶難しいです。その上、女性の感情がちゃんと伝わってくるのが素晴らしかった。
宮尾:『ドリアン・グレイ』も観ました。僕らが出会ったのはあの頃?
大貫:その後すぐ、ですね。
2013年上演のマシュー・ボーンの『ドリアン・グレイ』日本公演では大貫勇輔がリチャード・ウィンザーとのWキャストでタイトルロールを務めた。(撮影:田中亜紀)
――お二人は2021年上演『フィスト・オブ・ノーススター〜北斗の拳〜』でもケンシロウとラオウとして、激しい対決がありました。
(2022年上演舞台写真/撮影:田中亜紀)
宮尾:あれは僕の中で熱くて壮絶な日々でした。
大貫:宮尾さん、「北斗の拳」大好きだもんね。
宮尾:好きだし、ラオウという役が難しかった。最後まで弱さのない男ですから。ほんと満身創痍でした。
(2021年上演舞台写真/撮影:田中亜紀)
大貫:初演は命、燃やしましたよね。大人になってからの青春って感じ!
宮尾:本当に。僕は演出の石丸さち子さんにマンツーマンで、声の出し方からいろいろと見ていただき、足りないものを補えた気がしました、良い経験でした。
インバルには僕たちとは全然違う世界が見えている
――宮尾さん、インバル・ピントとダビッド・マンブッフが演出する『未来少年コナン』への出演が発表になりましたね。インバル・ピント作品は大貫さんが『100万回生きたねこ』『ねじまき鳥クロニクル』に出演。インバル作品のイメージを教えてください。
宮尾:第一印象は、暗くてメルヘン。だけどインバルが描いたセット画を見たら、とても素敵でした。独特な色づかいで絵本みたい。
あの色味は日本ではなかなか生み出せないだろうなと思いました。あれが舞台のセットになると想像しただけで楽しみです。
『未来少年コナン』の原作アニメは重いテーマをキャラクターたちの明るさで中和した作品、インバルさんがその世界を一体どう表現するのか。
大貫:僕も想像つかないですね。『100万回生きたねこ』も『ねじまき鳥クロニクル』も初演はめちゃくちゃ大変でした。
(2013年上演『100万回生きたねこ』/撮影:渡部孝弘)
(2023年上演『ねじまき鳥クロニクル』/撮影:田中亜紀)
宮尾:何が大変なの?
大貫:予想を遥かに超えてくるから。インバルには僕たちが思っている世界とは全然違う世界が見えていて。そこにいろんな人たちとの化学変化が起きることで、形を変えていく。とにかく作っては壊す時間が長いんです。
宮尾:なかなか固まらないんだね。
大貫:最初のうちは。だけどそのクリエイションの時間が非常に大事で、カンパニーの人たちがどれだけ面白いものを提案できるかによって、作品が大きく変わります。
もちろんインバル自身にも確固とした構想があるのだけど、面白いものが出てくると、臨機応変に寄せていく。
宮尾:ダンスカンパニー育ちの僕にとっては、新作前のクリエイトみたいな感じかなと予想。作っては壊し、また作る。ただ、キャストは異なるバックグラウンドから集まっているから、擦り合わせが必要かも。
大貫:そうですね。とにかく、どんどん提案することをおすすめします。その方がいい作品になります。
――身体面もそうですが、ロングラン公演では精神面のケアも大切です。お二人が普段心がけていることを教えてください。
宮尾:基本は身体を休めること。疲労をためないこと。疲れてくると、舌が回らなくなるなど、如実に出てきますから。逆に元気すぎても余計な力みが入るので、それを抜くためにあえて二日酔いになったり(笑)。
大貫:僕も心身をきちんと休ませることを何より大事にしています。僕にとって心休めるのはお風呂、お酒、子供との時間。それをバランスよく。
また最近、歌のレッスンを始めました。新しい挑戦はリフレッシュになりますし、いかに声で表情や思いをお届けできるか。ダンサーとしての肉体を手放すことが今の目標です。
宮尾:そこは僕も同じです。ダンサーの殻を脱ぎ捨てて、一人の人間を表現すべく努めます。
Q1.お父さんにしたいキャラクターは?
【大貫】ハリー・ポッター:誰だろう…全員癖があるからなあ…。いろいろ苦労があって生まれ変わってからのハリーかな。他がいない!(笑)
【宮尾】いないです。
Q2.お母さんにしたいキャラクターは?
【大貫】ジニー・ポッターorハーマイオニー・グレンジャー:大変な夫を持つ妻として、そして母親として、仕事もちゃんとしながら子供のことを一番に思って生きているところが信頼できるから。
【宮尾】ハーマイオニー・グレンジャー:いいお母さん。僕がしっかりしていないから、しっかり者がいいな。
Q3.親友にしたいキャラクターは?
【大貫】ロン・ウィーズリーorハーマイオニー・グレンジャー:心根が優しくて、面白くて、やっぱりいい奴らだから。
【宮尾】ロン・ウィーズリー:ロンはずっとふざけてるけど、ハリーのことをずっと見守り、繊細に心情を汲み取っている。親友としていいよね。
Q4.一度、じっくり飲んでみたいキャラクターは?
【大貫】ハリー・ポッター:「どんなことを感じてきたの?」って聞いてみたい。聞きたいことだらけです。
【宮尾】ドラコ・マルフォイ:入口が悪いイメージの人の方が話してみると案外話が合ったりするものだから。
Q5.気が合いそうなのは?
【大貫】ハリー・ポッター:ハリーの気持ちが結構わかるから。
【宮尾】セブルス・スネイプ:笑わせる自信があります。
Q6.怖いけど話してみたい存在は?
【大貫】セブルス・スネイプ&アルバス・ダンブルドア:「話してもいいかな?」ではなく、ちょっとだけなら「話したい」。どんな人となりなのかを知りたい。
【宮尾】アルバス・ダンブルドア:全て見透かされてそうで怖いけど、自分が迷った時とか助言をもらいたいからです。
Q7.このキャラクターにこれを言いたい!
【大貫】アルバス・ダンブルドア:「ちゃんとしろ!!お前いろいろ、ややこしくしてるぞ!!」(笑)
【宮尾】特になし。
Q8.手に入れたい魔法や道具は?
【大貫】ほうき:飛んでみたいから。
【宮尾】特にないかな。過去に戻りたくないからタイムターナーもいらない。魔法は舞台上で自分にかかるものだし、お客さんにもかけています。
Q9.入寮するならどこの寮?
【大貫】グリフィンドール:自分でグリフィンドールっぽいと感じるから。
【宮尾】スリザリン:アプリでやると、いつもスリザリン(笑)
作品名 | 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』 |
日程 | 上演中~2024年10月 |
会場 | TBS赤坂ACTシアター / ▼座席表 |
上演時間 | 約3時間40分(休憩あり) 本公演は、演出の都合上、 開演した後はお客様のお座席にご案内ができるお時間が限定されております。 詳しくはこちら>> |
チケット情報 |
2024年6月公演まで、チケット好評販売中! 7月~10月公演チケット、3月9日(土)10:00より先行販売開始! |
チケットに関するお問合せ |
ホリプロチケットセンター 03-3490-4949 |
作品HP |
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公式Webサイト |