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「ディスカッションを重ねて、丁寧にシーンを作り上げていく」/ミュージカル『ボニー&クライド』稽古場レポート
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2025年3月10日(月)よりシアタークリエにて開幕を控えるミュージカル『ボニー&クライド』。稽古場よりレポートが到着!ホリプロステージにてチケット絶賛販売中。

(文:五月女菜穂/撮影:田中亜紀)

インタビュー記事公開中

ミュージカル『ボニー&クライド』が2025年3月10日(月)から東京・シアタークリエほかで上演される。

1930年代、世界恐慌下のアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した実在の人物、クライド・バロウとボニー・パーカー。この伝説のギャング・カップルを題材に、『ジキル&ハイド』『デスノート THE MUSICAL』などを手掛けた作曲家フランク・ワイルドホーンが、ジャジーなサウンドとポップなリズムで新たに創造したミュージカルだ。

今回、稽古序盤2月上旬、東京都内で行われている稽古を見学した。この日行われていたのは、第4場(2幕)。殺人を犯したクライド・バロウが母親のカミーらに会いにいき、その後、ボニー・パーカーの待つ隠れ家に帰るというシーンである。

実際に俳優が立って稽古をする前に、ディスカッションの時間が設けられた。これは、演出の瀬戸山美咲や演出助手のスタッフのほか、そのシーンに出演する俳優らが参加するもので、初めて稽古をするシーンの前には必ずやっていることだという。

台詞を読み合わせた後に、前後のシーンの状況を確認したり、それぞれの役の動きを整理したり、どういう感情なのかを考えたり。ボニー役の桜井玲香が製作発表で「稽古場であまり自分の意見を言えなかったり、皆さんと打ち解けるのも本番が始まってからということがあるので、今回、こうして皆と話して、意見も聞ける環境はすごくありがたいんです」と話していたように、演出家からの一方通行のコミュニケーションではなく、キャストやスタッフも含めて全員で意見を出し合い、一緒にシーンを作り上げているための工夫と言える。

例えば、台詞の訳についても議論がなされていた。「座席に座って」という台詞について、クライド役の柿澤勇人が「『座席に座って』と言うかな?」と疑問を投げかけると、「『運転席に座って』の方が分かりやすいかも」「それなら『運転席で』でいいのでは?」といった意見が寄せられていた。また、クライドがボニーを「君」と呼ぶか、「お前」と呼ぶかという点について、「この時点の2人の関係性から考えると……」と考えこむ場面も。どちらもたった一行の台詞だが、その一文字一文字まで丁寧に向き合う姿に感服した。

およそ1時間弱のディスカッションが終わると、いよいよ立ち稽古だ。稽古場にはすでに本番と同じ寸法の舞台美術が組まれているほか、銃やギフトボックスなどの小道具も用意されていて、本番に近しい状況で稽古が進行していた。

最初に立ち稽古をしたのは、柿澤と桜井。「満足できる人生」(M16:What Was Good Enough for You)では、クライドとボニーそれぞれが、自身の父親や母親のようなつまらない人生ではなく、満足できる人生を送りたいという思いをジャズ・ワルツなメロディに乗せて素敵に歌うのだが、曲の中で移動をしたり、銃を出したりといろいろとしなければいけない動作が多いため、まずはその動きの確認から。

瀬戸山から基本的なアクティングエリア(芝居する場所)の指示が出されて、俳優陣はそれに合わせて一度やってみる。芝居としてやり難い部分はないか。どうしたら気持ちの流れを汲んだタイミングで動けるか。一つの“正解”を5、6回ほどシーンを繰り返す中で見つけていく。

柿澤と桜井のペアの稽古の後は、少し休憩を挟んで、矢崎・海乃ペア。先に稽古をしていた2人のペアの動きを見ていたため、だいたいの動きやタイミングは把握していたふたり。やるべきことを身体に覚えこませつつ、アクティングエリアを微妙に変えてみたり、オフ芝居(メインに見せるわけでもなく、ストーリーとも関係ないけれど、舞台上で繰り広げられる芝居のこと)をいろいろ試してみたりしていた。

瀬戸山「最後の決めポーズ、すごく良かったです!」と褒めるところは笑顔でとことん褒めるし、「ここはどういう思いだと思いますか?」などと意見を聞いて、極力それを踏まえた上での演出や表現を採用しているように感じた。その姿勢が、カンパニーを柔らかく自由な雰囲気にしているようだ。

基本的に同じ台詞・同じ演出なのに、演じる俳優によって、それが全然違うものに見えるのがWキャストの魅力。今回もクライドとボニーの4人の表現には“違い”が感じられた。

インタビューの中でも、矢崎は「カッキー(※柿澤さんの愛称)は演じる自分の感情に正直に、嘘のないように、丁寧に役を作っています。嘘のないクライドをベースとし、後から肉付けをしていく創り方をしているように見えます」と語った上で、自身の役作りについては「カッキーは考えた上で無理なく飛行機を飛ばせる真ん中のラインからスタートしているとしたら、僕は高いところからも飛行機を飛ばしてみたいし、低いところから飛行機を飛ばしたらどうなるのかも気になる、いろんな飛ばし方をやってみるタイプ」と話していた。

また、海乃も「(桜井さんは)自分に近づけて演じているので、あんなにナチュラルなお芝居ができるんだと思う」と話し「私は真逆タイプかもしれない。理想のボニー像を作って、そこに自分を寄せていかないと立っていられないんです。だから、妙に芝居がオーバーになったりする。それがうまく作用するときもあれば、観ている人の違和感になってしまうこともあるのでその線引きは難しい」と語っていた。

あくまで個人的な印象だが、柿澤は内にマグマのような熱い思いを秘めて、それが所々で表出するクライドで、矢崎はスタイリッシュだけれど、どこか少年性を持つクライド、桜井は色っぽくアンニュイなボニーで、海乃は大人かわいいボニーという印象を受けた。それぞれのクライド像とボニー像が掛け合わさったときにどんな物語を見せてくれるのか。本番がとても楽しみになった。

東京公演は4月17日(木)まで。その後大阪、福岡、愛知公演が予定されている。



作品名ミュージカル『ボニー&クライド』
期間2025年3月10日(月)~4月17日(木)
会場シアタークリエ
座席表
チケット料金チケット好評販売中!

平日:13,500円
土日祝日/Wキャスト初日・千穐楽:14,000円
Yシート:2,000円※ホリプロステージのみ取扱い
(全席指定・税込)
ツアー公演大阪、福岡、愛知公演あり
作品HPhttps://horipro-stage.jp/stage/bonnieandclyde2025/


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