特集・インタビュー

『ハリー・ポッターと呪いの子』キャストインタビュー/平岡祐太×福山康平「19年後の物語。それは衝撃的で演劇的だった。」
  • インタビュー
  • 公演情報

TBS赤坂ACTシアターで2022年からロングランを続ける舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。小説「ハリー・ポッターと死の秘宝」から19年後を描いた、“シリーズ8番目の物語”で、今年7月には4年目に突入。

今年8月からハリー・ポッター役を務める平岡祐太さんと、開幕当初からアルバス・ポッター役を演じている福山康平さんに、作品の魅力やお互いの印象などを聞いた。

(取材・文:五月女菜穂/撮影:番正しおり)

01  19年後の物語。それは衝撃的で演劇的だった。
02  「組み合わせの妙を1番感じる」
03  何度も足を運んでくれるお客様がいるから
04  テーマは意外と身近なもの。初めての舞台観劇にもぜひ!


2026年4月公演まで、チケット好評販売中!

19年後の物語。それは衝撃的で演劇的だった。

ハリー・ポッター役:平岡祐太
アルバス・ポッター役:福山康平

――ハリー・ポッター役の平岡さんとアルバス・ポッター役の福山さん。舞台上では親子ですが、回を重ねるごとに見えてきたものはありますか?

平岡:今日の本番はすごくいいグルーブ感があった気がする!お客さんも一緒に盛り上がってくれたなぁと思います。

福山:うん、いい回でしたよね。お客さんもノリノリで、僕らキャストもその熱気に巻き込まれている感覚がありました。

平岡:僕は4thシーズン(2025年8月)からカンパニーに参加しているので、開幕当初からアルバスを演じてきている福山くんのエネルギーというか、芝居のテンポや切れ味に最初は圧倒されてしまっていたんです。でも最近は2人ならではの雰囲気やグルーブ感が生まれている気がします。

福山:僕は2022年6月から24年6月まで2年間アルバスを演じて、その後少し期間が空いて、3rdシーズンにカムバックしました。本番をやっていると、ハリーもアルバスもトリプルキャストだから、意外と間隔が空くじゃないですか。だから、例えば2週間ぶりに舞台上で顔を合わせることが普通にあるんですけど、親子の関係性が全然違うものになっている感覚がありますね。

平岡:分かる、分かる。それが楽しいよね。

福山:僕は特に祐太さんと一緒にやるときは、毎回変化を感じます。

平岡:多分、お互いが微妙に演技を変えているんだろうね。本当にナマモノというか、生き物というか、そんな感覚が強い舞台です。すべてが同じということはないから楽しいです。

――平岡さんは日本版の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を観て、オーディションを受けることを決めたそうですね?


平岡:はい。僕は吉沢悠さんのハリーを観ました。その舞台を観るまで長らく「ハリー・ポッター」の世界とは離れていて、多分、10年ぶりぐらいの「ハリー・ポッター」だったんですが、舞台を観たら、想像していた世界といい意味で違いました。小説の19年後の物語で、ハリー・ポッターが息子との関係性に悩んだり、息子とぶつかり合ったりしているというのが衝撃的でした。

同時にすごく演劇だなと思いました。舞台のスポット映像でも「魔法がすごい」などと謳う文句が多いから、ショーに近いのかなと思ったら……もっと演劇的だった。ストーリー自体もタイムリープがあったりして、引き込まれて、「これだ!」と思ったんです。

――演劇として惹かれたんですね。オーディションと稽古を経て、いざ本番の舞台に立って、いかがですか?


平岡:当然ですけど、観ているのとは全然違いますね。心の整理のつけ方といいますか、俳優が物語をどういう風に感じ取って演じるかによって、物語の雰囲気自体も全然別のものになると改めて思っています。

この作品は、セリフが詩的な表現になっているところなど、シェイクスピア的な要素が垣間見える作品なんです。今日の福山くんの「君は暗闇を照らす光だ」というセリフは詩的に聞こえたし、ダンブルドア先生とのシーンもダンブルドア先生に話しているようで独白のようだし……思った以上に演劇的なんです。

『ハリー・ポッター』の世界観を深堀りするのは楽しくて、稽古そのものは勉強会というか、学校に行くような感じでした。「演出補のエリック(・ローマス)が言いたいことは何だろう」とか、感覚で話し合うときは「その人がどんなことを思っているのだろう」とか、戸惑う場面もありました。

「組み合わせの妙を1番感じる」

――これまで歴代のハリーと共演されてきた福山さんからみて、平岡さんのハリーの印象は?


福山:一言で「こうだ!」と言うのは難しいんですけど……アルバスはハリーを結構困らせるんですよね。そこに対してすごく向き合って、もがいている印象を強く感じました。「俺は悪くない」という感じよりも、「何がいけないんだ?」という葛藤があるように見える。アルバスとして感じるというよりも、外から見たらそう見えるんだろうなという印象ですが。

それに、どのハリーとやってもみんな違う、《美しい丘》と呼ばれる作品最後のシーン。祐太さんのハリーは、断絶があった後だけれど、父として励ましてくれるような、元気づけてくれるような、明るいパワーをくれるんです。毎公演違った感覚を受けつつも、最後のシーンだけは、いつもそう感じるかもしれません。

――これまでのカンパニーとはまた違うものを感じますか?

福山:そうですね。人がこれだけ変わると、カンパニー全体の雰囲気はもちろん変わります。その違いを一言で言語化するのは難しいんですけど……1つの役に対してキャストが増えているんです。最初はみんなダブルキャストだったけれど、今はトリプルキャストのことが多い。だから、本当にいろいろな色が出る。その組み合わせの妙は4thシーズンが一番感じるかもしれません。

また、トリプルキャストだと、これまでと比べて、期間が空いてしまう。1年目は週10公演近くやっていたので、ある意味、毎回の新鮮さを取り戻すことがとても大変だったんですが、今は同じキャストが連続することがなくなってきて、久しぶりの共演も多いので、新鮮に芝居ができる。それは僕らにとってとてもいいことだと思いますし、ぜひお客さんの楽しみであって欲しいと思います。

平岡:確かに、(ロン・ウィーズリー役の)関町(知弘)さんと確か11日ぶりだったから、もう会っただけで抱き合っちゃったよ(笑)

福山:スコーピウスでも1カ月会わない組み合わせもあったりしますから(笑)。舞台上で会うと、本当に別人みたいな感覚です。

――1年目は立ち上げるために色々な面で大変だったと思うんですが、4年目になっての余裕はありますか。

福山:どうでしょう。4年目とはいえ、キャストが変わるとまた1から作るので、時間との勝負だったと思います。僕自身も受けたことがない演出をたくさん受けたし、少しずつマイナーチェンジしていますから。セリフが入っているとか、そういうことは1年目に比べて余裕があるのかもしれませんけど……人が変わる分、何が飛んでくるか分からないですから。毎公演、身が引き締まる思いで臨んでいます。

何度も足を運んでくれるお客様がいるから

――改めて好きなシーンや作品の見どころを教えてください。

平岡:物語的には時空を超えていくというところが見どころだと思うんですけど、僕個人としてはアルバスとスコーピウスのシーンは、いろいろな組み合わせを観ていて面白いなと思います。だから「暗闇を照らす光」が大好きで!

福山:嬉しい!

平岡:あのシーンでは、僕はちょうど後ろにいるんですけど、いつもセリフを聞きながら「この2人の関係性ってこんな感じなんだ」とか「今日は近いな」「今日はなんか距離あるな」とか思って。すごく楽しんでいます。

福山:どのハリーとやっていても、《美しい丘》と呼ばれる作品最後のシーンはご褒美なんです。上演時間3時間40分(休憩込み)で、肉体的にも精神的にも結構ハードな中で、最後の2人だけのシーンをやれるのは。「無事、ここまで来られた」という安堵もあって、1番好きなシーンです。

平岡:確かに《美しい丘》は、「ここまでたどり着いた」と僕もほっとします。3時間40分も上演時間があるけど、僕としては間のびする瞬間がなくて、ずっと走りっぱなしで駆け抜けている感じがするんですよね。観に来てくれた友達も言っていましたけど、転換もすごく多くて、どんどん物語が進んでいく。それが本当にうまく、ある意味芸術的に噛み合っているのも気持ちがいいんです。1、2ページで転換していく舞台、あんまり他になくないですか?(笑)

福山:ですよね(笑)。「どうなっているんですか?魔法ですか?」とよく聞かれるんですが、転換も含めて、だいたいフィジカルで乗り越えていますよね(笑)

平岡:うん。役者のエネルギーで乗り切っている。

福山:それが祐太さんがさっき仰っていた「ショーじゃなくて演劇」 という感想につながってくる気もしています。

――人間ドラマが描かれていて、キャストの組み合わせによる違いがあるからこそ、何度も足を運ぶお客様がいらっしゃるのでしょうね。お客様から得るパワーはありますか?

平岡:絶対あると思います。あまりに客席がシーンとなっていたら、何か変なことしたかなって思います(笑)

福山:そうですね、ドキドキする(笑)。何度も舞台に立っていますが、ドライブがかかる日ってあるんです。お客さんが物語に巻き込まれて、僕らもお客さんのパワーに押されて、劇場全体で前に進んでいる感じ。

今日の公演でも、嘆きのマートルが出てくる前に、その第一声を持って、客席から歓声が上がったんですよ。もう舞台上に出てきた、(出口)稚子ちゃんの顔!本当に生き生きしていて!「今日は特に生き生きしていたぜ」と言うと、「分かりました〜?」と言われました(笑)

平岡:そうなんだね!いや、だから本当に大人しく観る必要はなくて、どんどん盛り上がって欲しいですよね。

福山:何度も劇場に足を運んでくださったり、ファンミーティングが開催されたり、すごくありがたいことです。日本でこれほどの長期間の公演をやること自体、異例ですよね。セリフが一言一句ほとんど変わっていない中でも「観たい」と思って、劇場に来てくださる。そういうコアなファンの皆様に支えられているなと感謝の気持ちでいっぱいです。僕らよりも僕らのことを観てくださっているお客さんが大勢いるので、本当に気が抜けない!(笑)

平岡:公演回数も1300回を超えていますから。日本だと劇団四季さんはありますけど、それぞれの俳優が集まっての長期間の公演はありませんし、いち俳優としてもこんな経験はなかなかできません。

――長期間の公演ですので、体調管理にも気をつけていると思います。お二人のルーティンやリフレッシュ方法を教えてください。


平岡:僕は自分のペースを崩さないため、劇場に入ってから、まず台本を開いて、自分の関わるシーンを1回全部通すようにしています。もちろんこの世界に近づく役割もあるし、声を起こす役割もあるんですが、そのルーティンは欠かさずやっています。

福山:リフレッシュ方法でいうと僕はこれまでの取材でもいろいろ語らせてもらっているんですけど、ひたすら魚のことを考えて、お寿司を握るのが好きなんです。いろいろな人が僕のお寿司を食べてくれるんですけど、「次はどのコースを出そうか?」とか、「あ、この魚の時期が来たな!」とか、そういう献立や仕込みを考える時間がとてもリフレッシュになっていると思います。

平岡:今日も本番前にクエの話をしていて、すごくクエが食べたくなったよ(笑)

福山:寒くなってきて、使いたい魚がありすぎてですね……(笑)

平岡:本当に面白いし、引き込まれる。こんなに魚のこと、考えたことないもん(笑)。本当に魚の話をしているときは生き生きしていて、こちらもパワーをもらっていますよ。

福山:ありがとうございます。いつかお寿司、食べてほしいです(笑)。

本番前の心がけとしては、リラックスするというか、あまり考えすぎないようにしています。これだけ舞台に立っていても、毎回毎回今の自分にできることは何だろうと問い続ける必要があると思うし、何か新しいものが出るようにチャレンジしていかなくてはいけない。だから、何かを用意して挑むというより、相手が変わっても、そこで起きたことにちゃんとベストに向き合えるように力を抜くことを意識しています。

平岡:分かるなぁ。僕、今日は40回目の本番だったんですが、同じことをやろうとするとダメですよね。昨日描いた絵は昨日のものでしかなくて、それをなぞろうとしたら、絶対に面白くないんですよ。


――それぞれ他のハリー役やアルバス役についてはどんな印象をお持ちですか?

平岡:本番期間に入ると、昼公演と夜公演の交代のタイミングで、「最近どうですか?」といった話をするぐらいなんですが……稽古期間中も一緒に話し合いながらハリーを作ったわけではないんですよね。特に稲垣(吾郎)さんのハリーと僕のハリーは、そもそもの前提や出発点が違う感じがするから。本当に、例えば、「映画版だと、闇の印が腕にあるけれど、舞台版だと、あのシーンはどうしたらいいのかな?」みたいな、細かいやりとりを重ねてきた感じです。(※稲垣さんは10月31日の公演で卒業)

福山:アルバスは今4人います。(藤田)ハルはもう1年目からずっと2人で走ってきたし、本当にもう大感謝しているんです。身体も強くて、倒れないし、ダブルキャストとしていい距離感でいてくれた。昔から芝居の中身の話はそんなにしてこなくて、それこそ僕が寿司会を開くときに、久しぶりにハルに会ったりするぐらい。

平岡:やっぱり、ハルくんが卒業していくのは寂しい?(※藤田さんは10月31日の公演で卒業)

福山:いや、寂しくはないです。彼も彼で次の作品があるだろうし、僕は彼の芝居が好きだからまた見たいなと思うし、どうせプライベートではまた会うだろうし、きっとずっと心地いい関係なんだろうなと思っています。

(佐藤)知恩は怪我から戻って、復帰間近なんです。稽古や本番を見に来てくれるけれど、彼とも芝居の中身というより、くだらない話をしていることの方が多いかな。(※佐藤さんは11月公演より出演中)(原嶋)元久くんは初めましてなんですが、怪我しないためのポイントをお伝えするぐらいで、彼ともそんなに芝居の中身は話していないかなぁ。あ、でもこの間、サンマの話をしたんですよ。そうしたら、どうしても食べたくなったみたいで、オフの日に山梨県まで行って、炭火でサンマを焼いて食べたそうです(笑)

平岡:すごい影響受けているじゃない(笑)

テーマは意外と身近なもの。初めての舞台観劇にもぜひ!

――最後に、読者にメッセージをお願いします!

平岡:物語が深化してきて、今、ものすごくカンパニーがいい状態だと思います。僕自身も手応えを感じているので、ぜひ劇場に観に来てもらいたいです。

福山:観たことがある方には、これだけ人が変われば全然違う魅力がまたあると思うので、機会を見つけて、またぜひ足を運んでほしいです。

また、まだ観たことがない方や「ハリー・ポッター」にあまり触れてこなかった方には、結構壮大なことをやっているようで、テーマは家族の話だったり、友達との話だったりして、身近に受け取れるものがあるエンタメだということを伝えたいですね。この舞台をきっかけに「初めて舞台を観た」とか「舞台って面白いんだ」と思ってくださる方も多くいらっしゃるので、まずはご覧いただきたいです。

僕らも毎公演毎公演、全力で頑張ります!

▼特別番組 TVerにて無料配信中!

▼ハリー役 平岡祐太インタビュー

アルバス役 原嶋元久×スコーピウス役 大久保 樹インタビュー


作品名舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
日程上演中~2026年4月
会場TBS赤坂ACTシアター
座席表
上演時間 約3時間40分(休憩あり)
本公演は、演出の都合上、
開演した後はお客様のお座席にご案内ができるお時間が限定されております。
詳しくはこちら>>
チケット情報2026年4月公演まで、チケット好評販売中!
チケット詳細はこちら>>
チケットに関するお問合せホリプロチケットセンター 03-3490-4949
(平日11:00~18:00/定休日 土・日・祝)
作品HP舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公式Webサイト
https://www.harrypotter-stage.jp

PICK UP CONTENTS