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第一線で活躍するミュージカルスターが珠玉のナンバーを歌う夢のひととき。ミュージカルを愛する人たちへの感謝を込めた贈りもの、Thanks Musical Concert『A Happiness for You ハピネスフォーユー』。その1日目『〜Going to The Future〜』に出演する鹿賀丈史と濱田めぐみによるスペシャル対談。共演を重ね、特別な関係を築いてきた二人がこれまでを振り返り、最新作にも触れながら、『〜Going to The Future〜』に向けての思いを語る。
(取材・文:小杉厚/撮影:田中亜紀)
互いのいいところを引き出せる特別な二人

――鹿賀さんと濱田さんは2013年『シラノ』、2014年『ラブ・ネバー・ダイ』と『KING&QUEEN』、そして2015年の『デスノート THE MUSICAL』で共演されてこられました。さらに8月には最新の共演作『ある男』が開幕しますが、そうした中で感じたお互いに対する印象や魅力、培われた関係性についてお聞きしたいと思います。
濱田:最初に鹿賀さんとご一緒させていただいた『シラノ』には、ラストにシラノの長台詞があって、私が演じたロクサーヌはシラノを「お兄さま」と呼ぶんです。それを今も引き継いで、リスペクトを込めて「お兄たま」と呼ばせていただいています(笑)。
鹿賀:あれが最初だったね。懐かしいな(笑)。
濱田:あの長台詞はシラノの生きざまそのものですよね。ロクサーヌの腕の中でシラノがこの世を去る寸前、その長台詞が始まるのですが聞いていて私も号泣しました。キャストもスタッフもみんな舞台袖からじっと見ているような素晴らしいシーンで。私はダブルキャストだったので舞台袖からも拝見しましたが、その印象がとにかく強烈に残っています。舞台上での俳優・鹿賀丈史の存在、唯一無二の魂を感じました。

鹿賀:『シラノ』の最後は特別にいいシーンだからね。
濱田:みんな、あのシーンに行き着くためにやっているのだと感じました。哀しいけれど、いい役でしたよね。
鹿賀:めぐちゃんのロクサーヌもかわいらしくてね。そして皆さんご存じの通り、めぐちゃんは歌も本当に素晴らしいですから。まあ、こうやって褒め合ってもしょうがないけれども(笑)。
濱田:でも私たち、よく褒め合いますよね(笑)。
鹿賀:そうだね(笑)。素晴らしい女優さんですよ、本当に。
濱田:ありがとうございます。鹿賀さんとご一緒させていただくとホッとするんです。
鹿賀:それは僕もそうですよ。
濱田:『ラブ・ネバー・ダイ』のときもそうでしたが、鹿賀さんがいらっしゃると気持ちが落ち着くというか、緊張が和らぐ感覚があって。現場に安心感や安定感が生まれます。


鹿賀:初対面の方だとやはり気を遣うこともありますが、もう我々はそういうところは超越していますからね。めぐちゃんが言いましたけど、お互いにリスペクトしていいところを引き出せるような関係。それはほかの方とは少し違うかもしれない。『KING&QUEEN』も最高のコンサートだったしね。
濱田:はい。あのコンサートのお客さまは、鹿賀さんと私のことをよくご存じの方ばかりで。幕が開くと、お客さまがニヤニヤされていて「これから二人がなにかやらかすんじゃないか」という空気が客席に漂っているんですよ(笑)。市村さんも客席にいらして、「おう!観に来てるぞ!」とおっしゃると客席がドッと沸いたり、私たちがトークでツッコんだりボケたりしたあとに間が空くと、お客さまから笑いとともに「はい、次行って!」と声が飛んだり。それに「はーい!」と答えて進行していく感じでした(笑)。とても幸せな時間で、周りからは信じられないようなコンサートだったと言われましたね。
――お二方の活動も含め、やはりミュージカルという表現が根づいてきて、ご覧になる方々の層が厚くなってきているからこそ、『KING&QUEEN』のような空気が生まれたように感じます。
鹿賀:まさにそうです。僕もホリプロさんとご一緒するようになってもう25年ですから。一番最初にやったのが『ジキル&ハイド』。今は柿澤くんたちが引き継いでくれていて、来年には再演もされますが、当時はホリプロも『ピーター・パン』などはやっていたけれど、本格的なミュージカルはそこまで多くはやっていなかった。でも、ここ25年くらいで若いミュージカル俳優も増えて『ハピネスフォーユー』というこれだけ大きなコンサートができるわけで。ホリプロの力もすごいと思いますし、こうやって若い人たちが育ってきたことも本当にうれしく思います。

共演作品で感じる女性の活躍、新世代への期待
――お二人が共演された『デスノート THE MUSICAL』もホリプロのオリジナルミュージカルでした。


濱田:オリジナル作品としては分岐点というか、とても重要なものだったと思います。初演のときに作品を立ち上げるのが大変でしたよね。あのときは鹿賀さんと音楽監督の方が侃々諤々議論しながら、格闘するように役を作っていらっしゃいましたから。
鹿賀:やはりオリジナル作品の初演は大変だよね。
濱田:とくに大変だったのが、観に来てくださる方々の原作に対する印象と、私たちが作って提示するもののギャップをどう扱うのか。絵とか文字で表現されたものを実際の人間がやるとなると、どういうふうに表現すれば上手くできるかを考えたのを覚えています。もちろんミュージカルですから音楽もあるし、衣裳をとってもどれも大変でした。

――そこから再演を重ねて、今年11月にも再演されるなど、ホリプロのレパートリーの一つになった感があります。そして今『ある男』でも、お二人はオリジナルミュージカル初演に携わられています。


鹿賀:今、稽古が始まったところですね。今日も音楽のジェイソン・ハウランドと打ち合わせをしましたが、その場でもう曲を書き直して。それでアンサンブルのみんなもパッと歌えるんですよ。
濱田:あの対応力はすごいですよね。鹿賀さんの1曲目はコーラスと一緒に歌われていて。
鹿賀:そうそう。僕はビッグナンバーは3曲歌いますが、そのうち2曲がコーラスと一緒でね。できる人たちの集まりなので心強いし、ミュージカルをやる人たちの実力がグンと上がってきているのを実感します。もちろん、お客さまにも目の肥えた方々が大勢いらっしゃいますから、皆さまの期待に応えられるように頑張りたい。原作も曲も演出もいいですから、かなりのものになるはず。あと、演出の瀬戸山美咲さんを始め、女性の多い現場なので男は肩身が狭い……なんてことはないですけど(笑)。昔から女性にも実力はあったのでしょうけど、発揮する場がなかなかなかった。でも、このところ世界的にも女性の力が注目されていて、『ある男』の現場でも感覚の鋭さや細やかさで女性が活躍していますし、男性より強いところも感じます。

濱田:変な甘えは通じないですよね。前向きにポジティブに厳しく「はい、次に進もう!」という雰囲気で活気がありますよね。ちょっとヨレそうになるとピッと直される感じ。私自身もそういうタイプだから、チャキチャキしていてクリーンな稽古場が居心地いいです。
鹿賀:もうテキパキやっていますよ。『ある男』は「まさか、あの長編小説をミュージカルにするとは!」という作品ですけど、それがなんと成立しているんです。これまでのミュージカルはどちらかといえば楽しく華やかな雰囲気のものが多かった。『ある男』はよく見れば楽しい作品ですが、いわゆる華やかさというところでは地味かもしれません。でも心にズンと残るものになっている。そういう意味では日本もこういう小説をミュージカル化できるところまできたのかなと感慨深いです。

濱田:さっき鹿賀さんが若い世代が育ってきたとおっしゃいましたが、私もちょっと前までは「劇団四季で観ました」といったお声をいただくことが多かったんです。でも今は『ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~』のように、子役が出演するミュージカルも多いので、お母さん方がお迎えにいらっしゃるんですよ。そのときによく「めぐさん、観てました!」と言っていただくのですが、この間はとうとう出演している子に「僕のおじいちゃんが『ライオンキング』でめぐさんを観てました」と言われて「ええっ!?」となりました。
鹿賀:(笑)。
濱田:「おじいちゃん、お歳はいくつ?」と聞いたら57歳と言っていたかな?いろいろ計算して「まあいいでしょう!」と納得しましたけども(笑)。いよいよそういう世代が活躍するようになったのだなと思います。
鹿賀:『ビリー・エリオット』に出演している子たちは、まだ小学生だったりするでしょう?でも将来スポーツ選手を目指す子供は小さい頃から練習するじゃないですか。ミュージカル界も同じような流れになってきて、子供の頃から稽古をしているご家庭も増えています。そういう意味でも日本のミュージカル界の将来は楽しみですね。
珠玉の名曲の数々を豪華なメンバーが歌う、一夜限りの夢
――それでは次に今回出演される『ハピネスフォーユー』のDAY1『〜Going to The Future〜』についてお話をいただければと思います。


鹿賀:数あるミュージカルから代表的なナンバーをたくさん披露しますので、非常に豪華なステージになると思います。本当にいいナンバーが揃っていますし、1回きりの公演ではもったいないなと思うくらいです。
濱田:ホリプロは今もいろいろな作品に力を入れていて、新しい分野を開拓しているからバラエティ豊かですよね。
鹿賀:そうなんですよ。また、これだけのナンバーをホリプロのメンバーでやる、そこにも意味があるわけです。いろいろな人が育ってきているのを感じるし、僕もうかうかしていられないな。頑張らなければいけないですね。
濱田:そうですよ!みんなお兄たまの背中を見て育ってきて、「来るな」と言われてもぞろぞろひっついていくわけですから(笑)。
鹿賀:いやいや(笑)。ラインナップを見て感じるのは、やはり近年のホリプロがオリジナルを何作も作ってきたということですね。今回歌う曲については、僕は演出の菅野こうめいさんから劇団四季でのデビュー作『ジーザス・クライスト=スーパースター』の楽曲を歌ってほしいとリクエストをいただきまして。もういい歳ですからどうしたものかな、と思いましたけども……、白い頭のジーザス・クライストもいいかなと思って歌うことにしました(笑)。

濱田:とても楽しみです!私は『ジーザス』の劇団四季初演のCDを取り寄せて、折に触れて聴いているくらいなので。CDには鹿賀さんにサインをいただきましたし、その曲を生で聴けるわけですから。きっとこうめいさんも「聴きたいけど、歌ってくださるかな?」と思ったのでしょうし、そう思う気持ちもすごくわかります。私もこのセットリストを見たときに「よし!お兄たまありがとうございます!」という気持ちになりました(笑)。「ゲッセマネの園」、とてもかっこいい曲ですよね。
鹿賀:そう、やはり曲がいいんですよ。僕は『ジーザス』の初演をやるときにレコード店に行って、その視聴覚室で聴いたんです。1971年だったかな。曲の素晴らしさに全身総毛立ちましたよ。ロイド・ウェバーにはほかにも名曲がいっぱいありますけど、『ジーザス』の楽曲は僕を世に出してくれた曲でもありますし、そういう意味でも非常に感謝しています。あとは『生きる』というオリジナルミュージカルから「青空に祈った」という歌を歌いますが、これもジェイソンが作った大変いい曲ですので、歌うのを楽しみにしてます。

濱田:ジェイソンは本当にいい曲を作りますよね。
鹿賀:しかもあっという間にね(笑)。めぐちゃんが歌うのは?
濱田:私は『カム フロム アウェイ』の「Me And The Sky(私と空)」、そして『デスノート THE MUSICAL』の「愚かな愛」を歌います。2曲ともお気に入りの曲です。曲には歌えること自体がうれしい曲、歌っていてつらい曲といろいろなパターンがありますよね。たとえば歌うまでの2時間、劇中で気持ちを作っていって流れの突端で歌うものとか。この2曲はどちらも曲としてすごく素敵なので、コンサートというまた違う状況で歌ってみてどうなるかな?と楽しみです。

鹿賀:ミュージカルナンバーとして歌うのとコンサートで歌うのとでは、やはり意識が違いますからね。めぐちゃんがそのあたりを踏まえてどういうふうに歌うのか。そこも楽しみですよ。ミュージカルでは流れの中で歌うから気持ちも作りやすいけど、コンサートでは前の人は全然関係ない歌を歌うわけですから。まあ、それも楽しみのうちですよね。
――『ハピネスフォーユー』では、菅野こうめいさんが演出を担当されますが、菅野さんは以前、濱田さんのコンサートの演出も手がけられています。
濱田:こうめいさんは舞台が本当にお好きで、それが演出にもにじみ出ていると思います。演出の際には、さまざまな作品について言及されるので、いろいろなことを研究する好奇心がおありになる方という印象です。今回の演出もおしゃれでストーリー性を大切にされています。曲と曲のつなぎも、違う作品の曲がきても流れが途切れないように作ってくださりますし、セットもシンプルでちょっと重厚感があって色味も上品で。すべてが揃ったときにどんな感じに仕上がるのか、とても楽しみです。
鹿賀:一度きりの公演なのに、セットにしても衣裳にしても「これ、1回で終わっちゃうの?」というくらい贅沢な作りになっていますからね。我々も楽しんでやりたいと思います。ホリプロの65周年記念にふさわしいコンサートになるでしょうし、一つのプロダクションでこれだけのものができるくらい、ホリプロのミュージカルも大きくなってきたのかなと思います。お客さまには存分に楽しんでいただきたいですし、感動を持ち帰っていただけたらうれしいですね。
濱田:きっと今のタイミングで一番旬な楽曲、歌声、演出をお楽しみいただけるコンサートになると思います。これまで支えてくださった皆さまにお返しができるよう、素敵なひとときをお届けしますので、会場に足をお運びいただけましたら幸いです。


作品名 | Thanks Musical Concert『A Happiness for You ハピネスフォーユー』 |
日程 | [DAY1]2025年6月28日(土)開場:17:00/開演:18:00 [DAY2]2025年6月29日(日)開場:15:30/開演:16:30 ※本コンサートは配信、映像化の予定はございません。 |
会場 | 東京国際フォーラム ホールA 座席表 |
上演時間 | [DAY1]120分予定(休憩なし) [DAY2]100分予定(休憩なし) |
チケット情報 | チケット絶賛販売中! S席 2DAYSセット券:24,000円(特典付)*予定枚数終了 プラチナ席:22,000円(特典付)*予定枚数終了 S席:12,000円 *予定枚数終了 A席:10,000円 B席:7,000円 Yシート:2,000円(20歳以下対象・当日引換券・要証明書) U-25:5,500(25歳以下対象・当日引換券・要証明書) ※S席 2DAYSセット券、プラチナ席、Yシート、U-25はホリプロステージでのみ取扱い (全席指定・税込み) |
チケットに関するお問合せ | ホリプロチケットセンター 03-3490-4949 (平日11:00~18:00/定休日 土・日・祝) |
作品HP | https://horipro-stage.jp/stage/happinessforyou2025/ |