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彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndの注目の第二弾!彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』が、5月8日(木)に彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて初日が開幕した。最新の舞台写真・開幕レポートが到着!
彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2
『マクベス』開幕レポート
(文:市川安紀/撮影:宮川舞子)


吉田鋼太郎が芸術監督を務め、演出・上演台本を手がける彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』が、5月8日(木)彩の国さいたま芸術劇場で初日を迎えた。
雷、稲妻、雨のなか、笑えるほどに奇っ怪な三人の魔女(吉田、稲荷卓央、海津義孝が怪演!)の登場から、怒涛のごとく物語が展開していく。タイトルロールの藤原竜也にとっては、40代を迎え、満を持して挑むシェイクスピアの四大悲劇だ。身の丈に合わない野望を抱き、引き返せない地獄の道をまっしぐらに突き進む男の末路。土屋太鳳演じるマクベス夫人と手に手を携えての道行だったはずが、いつしか別々の道を辿っていく。共依存のように見えて互いに絶望的な孤独を抱えた夫婦の、虚しさと哀しさが胸を衝く。



軍人としては有能でも、残念ながらマクベスは国王の器ではなかった。敵を殺し血飛沫を浴びることなど造作もないが、主君殺しという仁義にもとる行為には、恐れと怯えが止まらない。「いいは悪いで悪いはいい」と魔女が吐く呪文のように、マクベスの心情も秒刻みで揺れ動く。人として真っ当な道徳心を持ちながらどす黒い欲望に囚われ、王冠を手に入れるや疑心暗鬼にかられ、常軌を逸した残虐な為政者へと堕ちていく。藤原はそんな男の弱さと小ささを時に滑稽さも覗かせながら、矛盾を抱えた生身の人間として体現している。激情を迸らせる場面もあるが、妻を失い、たった一人世界に放り出されたかのような静寂のなか、噛み締めるように口にする「明日、また明日……」に万感の思いがこもる。生まれながらの悪人など滅多にいないだろうが、平凡な人間が弱さに巣食う悪の芽に侵蝕されるとどうなるのか、容赦のない最期がまざまざと物語る。こんな男を、こんな芝居を書いたシェイクスピアはやはり凄まじい劇作家だ。


そんな夫を常に叱咤し鼓舞していた妻の心は、実のところ夫よりもずっと脆かった。土屋は小柄な身体いっぱいに、夫への愛と野心を漲らせている。それは功名心や妃の座に対する欲望というよりも、「二人で幸せになりたい、ならねばならない」という強迫観念にも近い願望に思えてならない。力ずくで奪い取った幸せの崩壊を誰よりも予感していたのは、妻の方だったのではないか。名前を持たず、妻であること以外に存在意義を見いだせない一人の女性が、一蓮托生だと思っていた夫の暴走を前に無力を感じた時、その心が壊れるのも必然だろう。壊れゆく土屋がひたすらに美しく、哀れで痛ましい。「野望を企んだ夫婦の自業自得」と思えないのは、マクベスを心の底から愛し抜く夫人の真情が、土屋の全身からダイレクトに伝わってくるからだ。



マクベスの朋輩であり誠実な男として描かれることの多いバンクォーも、温厚篤実な王とされるダンカンも、この舞台では腹に一物を抱えた人物に見えるのが興味深い。河内大和演じるバンクォーは「子孫が王になる」という魔女の予言に対する野心を隠そうともせず、マクベスとヒリヒリするような腹の探り合いを見せる。考えてもみれば、もし三人の魔女がマクベスの野望が生み出した幻影だとするなら、その姿を共に目撃したバンクォーにもまた、同様の野心の炎が元から燃えていのではないか。たかお鷹はダンカンから一転、場の空気を緩ませる門番としても登場し、実に楽しげだ。



一筋縄ではいかない者たちの一方で、真っ直ぐで正義感に溢れた人物がちゃんと活躍するのもシェイクスピアならでは。マクベスと対峙するマクダフを、廣瀬友祐が立ち姿も凛々しく精悍に演じている。冷静沈着な男が家族を守れなかった慟哭に身を震わせ、復讐に燃えるさまは鬼気迫る迫力だ。その熱い男マクダフの忠誠心をやむなく試すマルカムの井上祐貴は、正統な王子としての自負と、若さゆえの生硬さを併せ持つ青年を力強く演じて頼もしい。



昨年上演した『ハムレット』と同様、基本的にシンプルなセットのなかで、言葉と肉体を武器に俳優たちが躍動する『マクベス』。数々の名台詞でも知られる作品だが、シェイクスピアの言葉と長年格闘してきた演出の吉田は、その文脈における言葉一つひとつの意味を丁寧に掘り下げ、朗誦するだけでは取りこぼしてしまう言葉の機微に迫ろうとしている。時に荘厳に、時に妖しく、時に激しいロック調にと変幻自在な東儀秀樹の音楽と相まって、マクベスという男が辿る運命から一時も目が離せない。



埼玉公演は2025年5月8日(木)~25日(日)・彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演、その後宮城、愛知、広島、福岡、大阪公演あり。
<主な配役>
藤原竜也・・・マクベス(スコットランドの将軍)
土屋太鳳・・・マクベス夫人
河内大和・・・バンクォー(スコットランドの将軍)
廣瀬友祐・・・マクダフ(スコットランドの貴族)
井上祐貴・・・マルカム(ダンカンの王子)
たかお鷹・・・ダンカン(スコットランド王)/門番
吉田鋼太郎・・・魔女
ほか
コメント
※本コメントは5月8日の初日開幕前にキャストより寄せられたコメントです
■藤原竜也(マクベス役)
舞台『マクベス』とうとう初日を迎えます。鋼太郎さんによる大胆かつ緻密な演出のもと、素晴らしい仲間たちと共に厳しい稽古期間を乗り越えてきました。私にとっても挑戦の1作となります。劇場で皆様に観ていただけること楽しみにしております。全身全霊で『マクベス』に挑みたいと思います。
■土屋太鳳(マクベス夫人役)
舞台『マクベス』初日…この日、私はマクベス夫人の心を通して何を見ることが出来るのか、まだ想像も出来ません。ただ言えるのは、稽古の全てが宝物でした。こんなんじゃダメだと打ちのめされながら、同時に、生まれてきてよかったと思える日々。心から感謝しております。マクベス夫人が何を願い、誰を愛したのか、解釈は様々あると思います。観て下さる方々、ぜひ感想含め、教えて下さい。千穐楽まで、よろしくお願いいたします。
■河内大和(バンクォー役)
こんなに初日が待ち遠しいシェイクスピア作品はありません!稽古では、生きた人間としてそこに存在し、シェイクスピアの言葉を人間として喋ることに徹底的に向き合ってきました。鋼太郎さんの演出は、400年前のグローブ座を思い起こさせるような、ドキドキとワクワクに溢れていて、僕自身よく知っていると思っていたマクベスが、新作のように目の前に広がっていきます。想像力に満ち溢れたマクベスを、どうぞお楽しみ下さい!
■廣瀬友祐(マクダフ役)
マクダフ役を努めます廣瀬友祐です。あっという間の稽古期間でした。今は開幕に向けて静かではありながらも熱い高揚を感じております。始まれば終わります。怒涛です。この出逢いに感謝し、全身全霊で最後まで向き合いたいと思います。劇場でお待ちしております。
■井上祐貴(マルカム役)
いよいよ初日を迎えようとしています。遂に始まるんだなというワクワクと、これで大丈夫なのだろうかという不安が同時に押し寄せてきています。自分だからこそ演じられるマルカムを、少しづつですが見つけられてきている感覚があります。開幕後も日々色々なものを吸収し、まずは埼玉公演の1ヶ月を、全力で楽しみたいと思います。
■たかお鷹(ダンカン/門番役)
実に楽しい稽古だった。と言うのも出演者全員が驚く程素直だったからだ。演出家の言う事を素直に聞き、素直に演じていた。我が劇団の先輩である杉村春子の言葉を思い出した。役者は素直のプロなのよ!かなりひねた後期高齢者の僕には心地よい刺激になった。このメンバーで創る芝居はもっともっとよくなると思う。本番の幕が開いても自分に合格点をつけずに芝居に向き合いたいと思う。
■吉田鋼太郎(演出・上演台本/魔女役)
藤原竜也くんがついにマクベスを演じる。その演出を、この新しいシェイクスピア・シリーズで実現できることに改めて喜びを感じています。『マクベス』という難物にどう挑むのか、4ヶ月前には暗中模索していましたが才能豊かな俳優とスタッフによって光を見出すことができました。この作品は現代の私たちに何を呼びかけるのか。7週間の稽古で我々が見つけたものを、劇場で皆さんにもお届けすることができれば大変嬉しいです。どうぞ、お楽しみください。
彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndとは
1998年のスタート以来、芸術監督蜷川幸雄のもとで、国内外に次々と話題作を発表してきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。シェイクスピアの全37作品を上演することを目指したこのシリーズは、2017年から芸術監督を吉田鋼太郎に引き継ぎ、2021年5月の第37弾『終わりよければすべてよし』をもって完結。20年に上演中止となった第36弾『ジョン王』も改めて上演が決まり23年2月に真のラストを迎えた。シリーズ完結間近でこの世を去った蜷川幸雄から芸術監督を託された吉田鋼太郎に遺された5作は、日本ではほとんど上演されない演目ばかり。しかしその戯曲を、丁寧に読み込み大胆な解釈と繊細な演出で見事に観客を喜ばせた吉田に、新たなシリーズを望む声が多く寄せられた。そしてついに、24年5月、柿澤勇人主演の『ハムレット』を皮切りに吉田鋼太郎による彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndがスタート。25年5月には、藤原竜也主演『マクベス』、26年には『リア王』の上演を控えている。
【コンセプト】
・シェイクスピア演劇をより多くの方に気軽に楽しんでもらうことを目指す新シリーズ。芸術監督はこれまでのシリーズに引き続き吉田鋼太郎が務める。
・シェイクスピアの全37戯曲の中でも、その奥深さをもう一度伝えたい作品を吉田鋼太郎が選び、年に一本を目安に上演していく。
・吉田鋼太郎が上演台本を手掛けることで、より理解しやすいシェイクスピア演劇を届ける。
・難しいと思われがちなシェイクスピア演劇の作品理解に役立つ情報を積極的に発信し、新しいお客様にアプローチする。また、各作品のキャスティングにおいてオーディションで選ぶ役を必ず設けることで、新しい役者との出会う場をつくる。
・鑑賞サポートをこれまでのシリーズよりもさらに充実させ、様々なお客様が一緒にひとつの芝居を楽しめる機会を増やす。

Vol.1 『ハムレット』
演出・上演台本:吉田鋼太郎
主演:柿澤勇人
シンプルなセットで俳優の芝居を引き立たせ、「シェイクスピアの言葉」の力を前面に出す異色の演出で大きな注目を集め、ただならぬ熱量でお客様を魅了した。
<埼玉公演>
期間:2025年5月8日(木)~25日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
協賛:ロイヤル・ブラックラ
制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ
公演詳細>>https://horipro-stage.jp/stage/macbeth2025/
※ほか宮城、愛知、広島、福岡、大阪公演あり
ストーリー
マクベス(藤原竜也)とバンクォー(河内大和)は荒野で三人の魔女(吉田鋼太郎ほか)と出会い、魔女たちはマクベスがコーダーの領主となり、国王となることと、バンクォーの子孫が王となることを予言する。夫からの手紙で予言について知ったマクベス夫人(土屋太鳳)は、野望を遂げさせようと決意。マクベスはダンカン王(たかお鷹)を暗殺し、王座を手にするが、すぐさま良心の呵責に苛まれていく。不吉な予言に不安と怒りに駆られ、マクベスはさらに残忍な行為を重ね、気丈だったはずのマクベス夫人は罪悪感と血の幻影に悶え苦しみ錯乱状態に陥っていく。マクベスへの復讐をたぎらせるマクダフ(廣瀬友祐)とマルカム(井上祐貴)の軍勢が攻め入り、荒唐無稽な予言は現実のものとなっていく――。
チケット販売詳細
<チケット料金>
【SAFメンバーズ】https://www.saf.or.jp/arthall/members/
・S席:9,300円
・A席:7,500円
・B席:5,600円
【一般】
・S席:10,000円
・A席:8,000円
・B席:6,000円
・U-25:2,000円 ※25歳以下/B席対象/劇場のみ取扱/要身分証明書
(全席指定・税込)
ホリプロステージチケット販売詳細>>
https://horipro-stage.jp/news/macbeth2025_ticket/
<公演中イベント他>
【さいたまアーツシアター・ライヴ!!】
開場20分前から劇場内光の庭(1階)にて多彩なメンバーによるライヴ演奏を行います。大ホールのロビー開場をお待ちいただく間に是非お立ち寄りください。
開催日:
5月10日(土)12:30/17:30
5月11日(日)12:30
5月17日(土)12:30/17:30
5月18日(日)12:30
5月24日(土)12:30/17:30
【鑑賞サポート対象公演】
鑑賞サポートを実施します。
開催日:
5月23日(金)13:00
5月24日(土)12:30
詳細はこちら>>https://www.saf.or.jp/arthall/information/detail/102990/
ツアー公演詳細
【宮城公演】
期間:2025年5月30日(金)~6月1日(日)
会場:仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
主催:仙台放送
共催:仙台市市民文化事業団
お問い合わせ:022-268-2174(平日11:00~16:00)
https://www.ox-tv.jp/sys_event/p/index.aspx
【愛知公演】
期間:2025年6月6日(金)~6月8日(日)
会場:刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
主催:中京テレビクリエイション
共催:刈谷市/刈谷市教育委員会/刈谷市総合文化センター
お問い合わせ:052-588-4477 (平日11:00~17:00/土・日・祝日 休業)
https://cte.jp/macbeth2025
【広島公演】
期間:2025年6月12日(木)~6月14日(土)
会場:広島文化学園HBGホール
主催:TSSテレビ新広島
お問い合わせ:TSSイベント事務局 082-253-1010(平日10:00~17:30)
https://www.tss-tv.co.jp/event_information/engeki/20241120.html
【福岡公演】
期間:2025年6月20日(金)~6月22日(日)
会場:福岡市民ホール 大ホール
主催:インプレサリオ
お問い合わせ:TEL:092-600-9238(平日11:00~15:00)
E-mail:info@impresario-ent.co.jp
https://www.impresario-ent.co.jp
【大阪公演】
期間:2025年6月26日(木)~6月30日(月)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
主催:梅田芸術劇場/ABCテレビ
お問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3888(10:00~18:00)
https://www.umegei.com/schedule/1250
公演概要
彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』

<埼玉公演>
期間:2025年5月8日(木)~25日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
協賛:ロイヤル・ブラックラ
制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ
※ほか宮城、愛知、広島、福岡、大阪公演あり
<スタッフ>
作:W.シェイクスピア
翻訳:小田島雄志
演出・上演台本:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)
音楽:東儀秀樹
美術:松生紘子
照明:原田 保/原田飛鳥
音響:鹿野英之
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:大和田一美
擬闘:栗原直樹
振付:藤山すみれ
演出助手:井上尊晶
舞台監督:千葉翔太郎
舞台監督補:南部 丈
<キャスト>
藤原竜也・・・マクベス(スコットランドの将軍)
土屋太鳳・・・マクベス夫人
河内大和・・・バンクォー(スコットランドの将軍)
廣瀬友祐・・・マクダフ(スコットランドの貴族)
井上祐貴・・・マルカム(ダンカンの王子)
稲荷卓央
海津義孝
天宮 良
坪内 守
塚本幸男
鈴木彰紀
内田健司
堀 源起
蔵原 健
松本こうせい
谷畑 聡
齋藤慎平
伊藤大貴
松尾竜兵
河村岳司
坂田周子
近藤陽子
佐藤雄大
小川向日葵(Wキャスト)
嶋瀬 晴(Wキャスト)
稲田有梨
たかお鷹・・・ダンカン(スコットランド王)/門番
吉田鋼太郎・・・魔女
公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/macbeth2025/
公式X:https://twitter.com/Shakespeare_sss
#マクベスSSS2