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11月の再々演で3年ぶり2度目の出演を果たすアルヴィン役の太田基裕とトーマス役の牧島 輝が、いよいよ本格的な稽古を開始した。思い出と新鮮さを胸に改めて深く潜っていく『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』の世界、ふたりきりの物語を紡いでいく覚悟と自信と希望をじっくり語り合ってもらった。
(取材・文:横澤由香/ポートレート撮影:山本春花/稽古場撮影:田中亜紀)
10/28(月)18:00~注釈付席追加販売!
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ふたりともこの作品が大好き!
──3年ぶり、同じペアでの再演が決まった際のお気持ちは?
太田:そうですね…やっぱりこの作品は“ふたりのミュージカル”なので、互いの関係がすごく必要になる。だからまず2度目のお相手も牧島くんで良かったなって。1回作ったものをさらに落ち着いて作ることができる、「また一緒にできるんだ」っていうのはすごく嬉しかったですね。
牧島:光栄です。僕も前回このふたりですごく濃い時間を過ごしいろんな苦難も共に乗り越えてきたので、また一緒に作品を作れるのはとても嬉しいです。太田さんも僕も本当にこの作品が大好きなんです。
太田:どの作品もそうですけど、公演を終えても作品には終わりがないですし、やっぱり自分の中で未練だったり名残惜しいところとかもいっぱいあったりして…なのでなんとなく、なんですけど、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』は「これまたやりたいな」って思って台本と楽譜を家に大事にとっておいたんです。基本的に台本類は実家に送って保管してもらっているんですが、時々「名残惜しいな」「これはたぶんまたやる気がするかも」って思ったモノは手元に置いておくんですよ。
──その予感は…
太田:いろんな歯車の巡り合わせがあるんだと思うんですけど、不思議なもので大体当たりますね。
牧島:へえぇ〜。僕はなんかふわっとした言い方になっちゃいますけど、前回すべての公演を終えた時はちょっとぼっーとしちゃうというか、終わってしまった寂しさはあったけれど、「あ、超えられたな」という…「全部やれた」という嬉しさもあってあまり何も考えられずに力抜けちゃって。またやりたいとかそういう気持ちがすぐに湧くのではなく、ただただ「あー…」という、走り切った感覚でしたね(笑)。だから3年経って声をかけていだたいたときも自然に「またできるんだ、嬉しいな」と思えました。
太田:うんうん。
──おふたりはすでに一度生きたからこそ感じている“ご自身の中の『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』”があるかと思います。
太田:僕はもはやこれは「禅」なのかなって思っていて…なんかもうちょっと哲学的な修行みたいな感じでいます。だってふたりのやりとりも禅問答だもんね、ほぼ。アルヴィンは「この瞬間何を感じてたんだ」とかをずっとトーマスに言ってるから、だんだん「俺、どこの立ち位置?」「神みたいだけど??」って。
牧島:確かにその瞬間もありますよね。
──守護天使のようでもあり、ハイヤーセルフとの交信のようでもあり。
太田:そうそう。今日も稽古しながら「自分の立ち位置わけわからん」って思いつつ、「どこに辿り着くの?」って、修行僧みたいな気持ちになってくるんですよ。そういうキャラクターとしての浮遊感が面白いなぁと。それは前回の自分は感じていなかった。今の自分だからこそそんなことを感じられて、そこから支えられる部分や投げかけられる部分みたいなのがあるなと…だから3年前の気持ちとはまた全然違うなと思いました。また新しく禅を開始した感じ、修行を始めますみたいな感じ…って、わかる?
牧島:はい、なんだかわかる気がします。作り手がこんなふうに思っているということは、観る側も色々な見方があって、それは多分舞台上の物語を自分の色々な思い出と照らし合わせながら観るうちに“自分の作品になってくる”という感覚なんじゃないかなと思うし、その感じは僕たちも一緒で、「この作品はこうなんですよ」とやる作品ではないような気がするんですよね。
前回はちょうどクリスマスの時期に公演をやっていて、作品の中にもクリスマスイブとかが出てきて、そういう時期にやれたことがタイミング的にも作品自体が自分の日常にも溶けていくような感じがしていて「いいなぁ」と、すごく思ったんです。だから自分にとっては「冬になったなぁ」と感じたり、肌寒い夜道を歩いているときとかにふと思い出せるような、そんな作品なんです。
──日常に溶けていく。そうやって観客が自分の具体的な何かと共鳴させ、グッとくる瞬間をキャッチできるのも、本作の大きな魅力だと思います。
太田:みんな通ずるものがあるんでしょうかね。やっぱり生きていく上で色々な苦しみがあって、喜びもあって。それぞれがそれぞれに感じ、それでも生きていくというものがあるから、すべての根底に。僕はこれは意外と日本ぽいかもとも思うんですよ。この作品にある繊細さが日本の侘び寂び的な繊細さと似ているなって。音も行き過ぎない、ちょっと抑制を効かせた要素が多いというか。
牧島:確かに。だからみんなに共感できる部分が多いのかもしれないですね。
前回以上のイマジネーションで
──初演では2役をスイッチして上演されていました。おふたりは固定ですが、役を交代しての上演というのは…
太田:それ、今日たまたま言われました。(演出の)高橋(正徳)さんに「次は逆でやるか」みたいな。
牧島:で、周りのみなさんも「見たい見たい」って盛り上がって。
太田:軽いテンションで言われたんでね、とりあえず「いや、まずはこっちを、今を大事にしてください」ってお答えしました(笑)。
牧島:本当に。僕らはもう今で必死なんですから(笑)。でも、もしかしたら…??
太田:うわっ、それはさらに新たなる修行が!
牧島:でも太田さんが作るアルヴィンと僕のアルヴィンとは全然違うと思うから…
太田:だからそれが面白いんじゃない?
牧島:まぁ…そりゃあ面白いでしょうねぇ。
──「このペアでもいつかは2役を」と期待しているお客様も多いと思いますよ。
太田:いやいやいや、怖い怖い。怖いですよ〜。もう〜、初演でそんなすごいことしちゃうから!
牧島:ですよね。初演のおふたり、よくやったよなぁと思います。ホント、怖い怖い(笑)。
──稽古場では本日からセットの中での立ち稽古も始まっています。本番を見据え、今はどんな課題を掲げているのでしょうか。
太田:やっぱりすごく透き通ってるなって思うんですよ、アルヴィンは。人間的な業だったり欲深いところもあるんだけど、それでも透き通っていたいという意思がすごくまっすぐで、美しくて。そこはやっぱり輝いて見えるし、僕も彼のセリフを…言葉を見てても「うわー、美しい、こんな言葉が出てくるの、美しいな」ってすごくその輝きが眩しいので、そこをもっともっと「美しい」と思えるように演じられたら彼の世界もより広がって見えるし、もっと研ぎ澄まされて見えるかもしれないという感じですかね。
前回以上のイマジネーションでアルヴィンの世界の範囲をもっと広げて、もうちょっと遠いところまでいけるといいな。感覚的にね、そういうことがもっと豊かにできたらいいですよね。
牧島:トーマスはやっていて盛り上がろうと思えばいくらでも盛り上がれちゃうというか、結構想像の中で物語が進んでいったりするので、演じていてその塩梅が難しいなと思う瞬間が色々なところであって。怒ろうと思えばいくらでも怒れるし、楽しもうと思えばいくらでも楽しめるけど、でも実際人って、トーマスって日常そんなに全力で感情表現するかな?もっと抑えてるんじゃないか?とか、どこまでリアルに作って、どこまでその物語に乗っかっていくのかみたいなバランスを、もうちょっと前回よりも細かく取れたらいいなと思っているところです。
アルヴィンはある意味ちょっと普通の生活には馴染めないだろうなというところがあるけど、トーマスは多分社会に適応して順応していけそうな気がするから…そういう瞬間、自分自身も共感できる部分がすごい多いです。
──常識からはみださないよう擬態している。
牧島:そこが説明的になっちゃったら嫌だなとも思うので、トーマスがどこで我慢しているのか、どこで気持ちを抑えてるのかという部分を、前回を踏まえてより大事にできたらなと思っています。
アルヴィンとトーマス、“綺麗過ぎない友情”がいい
──アルヴィンとトーマスの友情は本当に美しく切実で嘘がない。このふたりの絆をどう捉えていますか?
太田:ふたりだけの関係じゃなくて、それぞれの環境や色々なものが彼らをずっと繋いでいてくれる…蝶々のエピソードもそうだし、親のこともそうだし、なんかいろんなことがふたりを留めておいてもくれている。そういう事実にひとつの奇跡みたいなものは感じているんじゃないかな。特別な何か、それは説明できるものじゃなく、感覚として手放しちゃいけないものというか…そういうのってありますよね。人ではなく物でも「これはなんか捨てちゃいけないな」と細かい理由があるものもあれば、なぜかわからないけど肌なじみがいいとか、離したくないという感覚的なことが。アルヴィンとトーマスの間にもそういうものがあるのかなと思います。
牧島:この関係が大人になってしまったらもう手に入れられないものだってお互いわかってるというか、過去に戻って友達を作り直すことはできないし、やっぱり小さい頃からの友達はもう手に入れられないじゃないですか。だから成長するにつれてお互いにちょっとすがってるようにも見えたりして、あんまりきれい過ぎない友情っていうところも、僕は好きですね。それぞれ相手にちょっと嫉妬している部分があったりするのも、言葉にはしないけどなんとなく伝わっている、そういうひりついてる感じとかも。でもそういうのは日常的に友達同士の間でもあると思うし、この物語はそれが色濃く見えているので、ふたりの人生がより鮮明に伝わる気がします。
──おふたりにとっての“再演”、本番がとても楽しみです。
太田:とにかく始まったら終わりまで止まれないですからね。何があってもとりあえずやる。僕に何があっても牧島くんが絶対助けてくれるので(笑)。間違えても、何かアクシデントがあっても、喉がカラカラになっても、とにかく最後までやるぞという気概で臨みます。本番はこちらがどう提示するかだとは思うんですけど、前回やったことをなぞるのではなく、無味無臭スタートで、五感で受け取りながら観てもらえると嬉しいです。澄んだいい空気の中で開演できたらいいな、そこを目指したいなと僕は思っています。
牧島:丸3年経って、太田さんの周りの環境も自分の身の回りの環境もすごく大きく変わっている部分もあって…だから、「前回と同じペアだから同じものを観に行こう」という気持ちではなく、また新しいペアを観に行くような気持ちで来てくれたら、僕らも一緒になってこの作品をより楽しめるような気がしています。太田さんが言うように少なくとも僕たちはなぞろうとはしてないし、何があっても受け止めたいと思いますし(笑)。また新しいものを作る気持ちでやるので、それを一緒に楽しんでくれたら嬉しいです。多分このお話、変な刺さり方をすると思いますので。
太田:そうなんです!観る方によって響くところが全然違ったりするので…ぜひ色々なところを刺されてください、みたいな感じですね(笑)。
牧島:はい(笑)。
作品名 | ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』 |
期間 | 2024年11月5日(火)~11月15日(金) |
会場 | よみうり大手町ホール 座席表 |
チケット料金 | チケット好評販売中! ・9,500円 ・注釈付席:9,500円 (全席指定・税込) |
ツアー公演 | <大阪公演> 期間:2024年11月22日(金)~11月23日(土) 11月22日(金)14:00/18:30[太田・牧島] 11月23日(土)13:00[山崎・小野塚] 会場:サンケイホールブリーゼ 詳細はこちら>> |
作品HP | https://horipro-stage.jp/news/soml2024_event/ |