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第48回ホリプロタレントスカウトキャラバン「THE ACTOR」。今回は舞台と映像を横断する「次世代俳優」の発掘・育成を掲げ、技術以上に“のびしろ”を重視する。10月18日開催の本選に先駆けて、三次審査のレポートが到着。
ホリプロタレントスカウトキャラバン三次次審査レポート
「まず台詞を言うところからスタート。相手と気持ちをキャッチボールする楽しさを知ってほしい」
1976年に始まり、多くの俳優やタレントを輩出してきたホリプロタレントスカウトキャラバン。第48回目の今回は「THE ACTOR(ジ・アクター)」のタイトルで、舞台と映像作品で活躍する次世代俳優を探す、育成型オーディションになっている。ここで問われるのは“のびしろ”だ。今、何ができるのか?ではなく、これから俳優を目指してレッスンを積むことでいかに才能を伸ばせるのか。その選考が進んでいる。
都内のスタジオに集まったのは書類審査・一次・二次審査を経て三次審査に選ばれた12~16歳の男女12名。経歴はバラバラで、演技経験者も未経験者も同じように、全5日間にわたって行われた三次審査に横一線で参加している。




今回のオーディションの大きな特徴は、専門の講師による「レッスン型審査」だ。演劇の第一線の現場で活躍する3名の講師に話を聞いた。
■演出・演技指導 松井 周(劇作家・演出家・俳優)

――参加者の皆さんに対して心がけていること、引き出したいことを教えてください。
すでに俳優を志している人や俳優として活動している人なら、何を提出すべきか、自分をどう見せるかを考えられますが、今回はまっさらの状態で何をしていいのかがわからない参加者もいます。ですから、まずは台詞を言うことから始めました。内側に何が眠っているのかがまだ謎ですが、時折それがちらほら見えるのが面白いところです。
今回のレッスンの中で歌唱の後藤先生が「無理せず気持ちよく出せる、声のセンターがある」と仰っていたのですが、演技にも気持ちよく無理せずできる、自分のセンターがあると思います。それはその人しか出せない唯一無二のもので、魅力にもなります。最初は乗れなかった自転車でも、コツを掴めば操縦できて楽しくなるように、演技でもその人ならではの表現や操縦方法を引き出せたらと思っています。
――俳優に適性のある人はどんな人だと思いますか?
俳優に向く人とは、僕は自分で勝手に遊んで楽しめる人、どんな役でも深掘りして自分とリンクさせられる人だと思っています。ピンボールのように球を打ち出すと、それがあちこちに当たって勝手に跳ね続ける、そんな俳優が理想です。たくさんの人とコミュニケーションをとって、時には傷つき、喜んだりもして、いつしか物語の中に迷い込み、自分で物語を進めていける人。そのためには役や物語をよく知る必要があり、調べたり、繰り返し台本を読む努力も大切です。自分が楽しめる場所をしっかり準備して作り、その上で手放しで遊べる人が理想です。
<松井 周(劇作家・演出家・俳優)>
1996年俳優として劇団青年団に入団。作・演出を手がけるようになり、2007年劇団[サンプル]結成、青年団から独立。2011年『自慢の息子』で第55回岸田國士戯曲賞受賞。主な作品に『レインマン』(演出)『てにあまる』(脚本、演出・柄本明)『終点まさゆめ』(作・演出)『ほぐすとからむ』(脚本、演出・振付・美術:近藤良平)など。またNHKの脚本開発特化チーム<WDR>メンバーとして、土曜ドラマ『3000万』、『会社員』(10月~放送開始) 等を手がける。2020年より「演劇」を通して世の中に思いをめぐらそうと立ち上げたスタディ・グループ、「松井周の標本室」を運営している。
■振付・ムーブメント指導 辻󠄀本知彦(振付家・ダンサー)

――今回のレッスンで心掛けていることを教えてください。また身体面で参加者のどんなところを成長させたいですか?
レッスンでは芝居、役者としての表現を意識しています。心情や内面に起こっていることをいかに身体で表現できるか。引き出したいのは、自分自身で考える力。そして自分に集中することです。
実際、ダンサーと俳優では表現方法が違う気がしています。ダンサーは型に身体を合わせるところがありますが、俳優はそれ以上に内面で思っていること、何を表現したいのかが大切です。そのために身体を駆使する。顔のシワのように、身体がある種の表情になればいいなと思います。できたら、指先からつま先まで自由に動かせる、もしくは神経が行き届く身体を作ってほしいです。今レッスンでも、つま先を床にタッチし、踵を引き上げながら、一本の線の上を歩くように重心を移動させ、綱渡りのようにバランスを取る動きなどをやってます。
――全くの初心者が演じる際、何を手がかりにしたらいいですか?
俳優は自分ではない誰かを表現する仕事でもあります。その際、まずは等身大の自分から引き出した演技でもいいんじゃないかなと思います。中には全くの別人になりきる、憑依する俳優もいます。それももちろん素晴らしいことですが、自分というフィルターがあることで他にはない魅力を出せたりもするので、自分自身を上手く使ってもらえたら。また俳優は見た目も大切ですが、内面から滲み出るものが大きいと僕は思います。もし何かコンプレックスがあるなら、それを補うために技術を磨くことで良い味わいになる。その意味でも参加者の皆さんには、努力して内面を膨らませてほしいなと思っています。
<辻󠄀本知彦(振付家・ダンサー)>
シルク・ドゥ・ソレイユ日本人男性初のダンサーとして活動後、『Michael Jackson The Immortal World Tour』に27カ国485公演出演。NHK2020応援ソング『パプリカ』振付(菅原小春と共作)のほか、米津玄師・MISIAのMV、NHK大河ドラマ『青天を衝け』タイトルバックや、NHK連続テレビ小説『ブラッサム』タイトル映像の振付を担当。
■歌・ボイストレーニング 後藤祐香(歌唱指導・ボイスコーチ)

――レッスンで大切にしていることを教えてください。
参加者の皆さんのやりたいことを探り、各自の良さが出せるようにと努めています。これを届けたいという意志が見えると、人に何かを伝えられる俳優になれるのではないでしょうか。私は歌が専門なので、声の高低や骨格を見ながら歌の技術も指導しています。真面目に取り組めば、歌は誰でもある程度上手くなることは可能です。だけど、こう歌いたいという意志や、歌を好きになる気持ちは本人の内側から生まれるものなので、そこは大事にしたいですね。
――歌手と俳優の違いを教えてください。また俳優に適しているのはどんな人でしょうか。
歌手と俳優はかなり違う仕事だと感じます。私の中で、歌手は音楽が前面に出て、自分自身や得意なことに寄せられる仕事。ある意味それを極めたい人がやる職業かもしれませんね。俳優が歌う時は、ミュージカルのように役として歌うことが求められます。自分がなくて染まりすぎてもいけないし、かといって自分のままでいることもできない。そのバランスを取るのが難しく、確固とした自分がないと難しい仕事だなと思っています。
観客目線だと、俳優は素が破天荒だったり、社会不適合の人のほうが面白く感じられるかもしれません。でもドラマや映画、舞台は共演者やスタッフ、マネージャーなど多くの人と関わる面があり、コミュニケーション能力は大事です。実際に、私が今までご一緒した俳優さんたちには不真面目な人が全くいません。とにかく皆さん、真面目で努力家な方ばかりです。
歌は俳優の仕事に必須ではありませんが、表現の幅を広げる意味では大きな武器の一つ。トレーニングをして、歌の技術も積み重ねていってほしいです。
<後藤祐香(歌唱指導・ボイスコーチ)>
桐朋学園芸術短期大学演劇科卒業後、2011年に初舞台。以降、ミュージカルをはじめ、劇団☆新感線や大人計画、TEAM NACSなど幅広い舞台作品に出演。ハリウッド式ボイストレーニングを基盤に音声学・解剖学を学び、ボイスコーチとして活動を開始。Estill Voice Trainingも学びながら、俳優へのボイストレーニングや作品の歌唱指導に携わる。近年ではミュージカル『デスノート THE MUSICAL』『ロマンティックス・アノニマス』『ジキル&ハイド』『ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート』『ディア・エヴァン・ハンセン』『New HISTORY COMING ARENA LIVE-The Imperial Theatre Symphony-』などにスタッフとして参加している。
俳優・須賀健太が演じて、魅せて、アドバイスも!
三次審査は5日間にわたって、演技、歌、ムーブメントなど多角的なレッスンが行われた。中でも時間をかけているのが芝居稽古だ。松井 周 作の演劇部を舞台にした戯曲が使われ、登場人物は演劇部の大学生顧問、高校生部長、中学生部長、ダンス部の部員の4名。12名いる参加者は3グループに分かれて、本読み、パート稽古、ラストにはシェイクスピアの芝居シーンを入れるなど、さまざまな稽古を重ねてきた。

審査終盤の4日目には特別講師として須賀健太が参加。松井が「こんな機会は滅多にないので、須賀さんに芝居に入ってもらいましょう」と言うと、参加者たちから驚きの声が上がった。芝居稽古を当日見たくらいで、台本は全くの初見。前日が出演していたホリプロ製作のミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』の千穐楽だったという須賀は「失敗できないなぁ」と苦笑いしつつ、舞台に上がった。
須賀は最初に顧問役を演じた。部員が入ってくる場面では、須賀は自ら立って椅子を引き、「ここに」と誘った。そんな動き一つが自然で自由。松井も、「こういうやり方もあるよね」と感心しきりだ。終わった後、松井に顧問役がどんな人物かを聞かれて、須賀は「面倒なことや争いごとは嫌い。部員に対する関心もさほどなく、波風が立たないことが一番。問題が起きてから、ちゃんとやってますよ感を出し始めた感じ」と、具体的かつ独自性あふれる解釈を展開した。


松井は「じゃあ次は部員に圧をかける感じで」とリクエスト。須賀の台詞回しがシャープになり、親みやすさが消えて部員たちと壁のある雰囲気に。その空気のせいか、部員たちも怒る場面ではヒートアップ。芝居全体に緊張感が増した。
松井が須賀に何を大事にしているかを聞くと、須賀は「相手の目を見ること」と答えた。「芝居を通して、相手をどれだけ知ることができるか。相手のリアクションを見て、この人はこう考えているのかな?と探るのが面白いんです」。一緒にやってみた参加者たちは口々に「凄すぎます…」とただただ圧倒されている。

次に須賀は違う参加者たちのグループで、一番年下の演劇部員を演じた。「こういう役、好き!」とやる気満々の須賀。無邪気さと今時のドライさを押し出し、笑ったり怒ったり、時にはアドリブも入れて、振り幅の大きい後輩役を自在に表した。先輩役はそのノリに反応して、涙声になるところも。逆に顧問役が大人の落ち着きで芝居を締めていたのにも驚いた。
面白かったのが、先ほど須賀が言った「相手の目を見る」が参加者たちに浸透していたこと。こうしてスポンジのようにみるみる吸収していく素直さが眩しい。
「今回は怒りを全部受けることを大事にしました。芯の強い人なら動揺しないかもしれないけど、この役の子は怒りをピュアに受け取って、即、沸点が上がる。あと後輩感も大事に」と須賀。松井に参加者たちへのアドバイスを求められ、須賀は「知らない人がたくさんいる前で、突然泣いたり叫んだり、演技するのは本当に大変なこと。それだけのエネルギーを自分に蓄えておくことが必要です。また自分でプランを考えてきても、相手役によって演技は変わるものだから、捨てることも大切。相手が何を言い、自分の台詞が相手に何を届けられるのか。そこを意識すると世界が広がると思います」。

この後、参加者同士で芝居するのを見て、須賀が「この時はどんな気持ち?」「この人の目的は?」と質問を投げかけ、一人ひとりに細かくアドバイス。それを聞いていると、芝居とは人と人の心の交流なんだなと改めて実感した。参加者たちがその感覚を掴み、芝居に目覚める日はそう遠くないだろう。



「ホリプロタレントスカウトキャラバン」としては異色とも言える5日間のレッスンの三次審査を経て、10月18日に行われる本選に進出する7名の参加者が決定した。この中から、いかなる才能が開花するのか。その日を心待ちにしている。
(取材・文:三浦真紀)
※10月18日(日)の本選はマスコミにのみ公開、一般公開はございません。
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