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第二子出産後の復帰作として長塚圭史演出・吉田鋼太郎主演の舞台『リア王』に挑む石原さとみ。演じるのは老王リアを父に持つ三人姉妹の長女ゴネリルだ。二人の子育てに奮闘する中で、よりにもよって気力・体力ともに相当なエネルギーを要するシェイクスピアの舞台に挑戦するとは、なんという心意気。「こんなつもりじゃなかったのに(笑)」と率直な胸の内を明かしつつも、新たな扉を開けることに心を弾ませている。
(取材・文:市川安紀)
背中を押されて新たな挑戦
──前回出演された『終わりよければすべてよし』(21年)に続いてシェイクスピア劇が復帰作とは、また挑戦しがいのある道を選びましたね。
こんなにハードルが高い作品で復帰するとは、正直思っていませんでした(笑)。でも『終わり〜』とその前の舞台『アジアの女』(19年/長塚圭史作)を演出してくださった吉田鋼太郎さんとの出会いが、私の役者人生の中ですごく大きかったんです。その鋼太郎さんが望んでくださるのであればもちろんやります!という気持ちでしたし、今回演出される圭史さんが私に「ゴネリル役を演じてほしい」と言ってくださったともお聞きして、心が決まりました。私に挑戦の場を与えてくださったお二人に感謝です。

──確かに今回、石原さんがゴネリル役と聞いた時は「おっ、そう来たか」と思いました。純粋に父親を思う末娘コーディリアに対して、長女ゴネリルと次女リーガンは欲得ずくで父親を邪険にする悪役ポジション、と捉えられがちです。
ゴネリルってすごく面白い役なんですよ。悪役と言われますけど、私は人間的な魅力をたくさん感じています。客観的に物事を見ている人で、長女としての責任感もあるし、ちゃんと努力もして来た。それなのに親から愛されていなかったという、悲しみや孤独を抱えていると思うんですね。リアは娘たちに「言葉で愛を語ってくれ」と言いますが、言葉でしか愛を判断しないのは本当の愛情と言えるのだろうか?とも思います。しかもリアはその愛を「土地を与える」というやり方でしか表現できない。老いていく親を見るのは辛いけれど、年老いたこの人にはもう国を任せられない、と思うのも無理はないかもしれないですよね。孤独さや脆さ、「これだけやって来たのに」という自負、「もっと欲しい」という欲……。ゴネリルはそんな様々なエネルギーを持つ人間だと感じられるんです。
子育てをしていると、まず共感するところから入るんですよ。(子どもに)「わかるよ〜、そうだよね〜」って、もう何百回も言ってます(笑)。共感と切り替えの繰り返しですけれど、こんなに小さな生きものでも、共感するためには知る力、理解する力、寄り添う力が鍛えられるんです。共感力が強くなっている分、ゴネリルに対してもそんな風に見られるようになっている自分がいることが大きな発見ですね。今の自分だからこそ感じられる部分が、稽古を通してもっと見えてきたらいいな、という希望があります。
現代に通じる親子の物語
──リアと三姉妹の親子関係をどう感じていますか。
どんな時代でもゆがんだ親子関係はありますよね。年老いていくことの怖さや孤独、親世代と子世代の分断、あらゆる面で現代に通ずる問題を提起しているようにも感じます。多分、みんな自分が正義だと思っていて、みんなが間違っている(笑)。そのボタンのかけ違いからこれだけの悲劇になってしまいますけれど、人間の悩みって昔からまったく変わらないんだなと。この作品を400年以上も前に書いたシェイクスピアはすごいと思います。
──またシェイクスピアの言葉と向き合うことになりますね。
『終わり〜』で鋼太郎さんの演出を受けて、シェイクスピアの美しい台詞回しが大好きになりました。今回のゴネリルは感情や願望を謳い上げるというよりも、現実的で理論的な台詞が多いんです。自分の中に落とし込める言葉が多いので、これまでのシェイクスピアとはまた違った、リアルな人間らしい台詞を楽しめるんじゃないかと期待しています。

──今回は俳優としてリア王役に専念される鋼太郎さんをはじめ、藤原竜也さんや山内圭哉さんなど舞台で共演経験のある方たちの存在も心強いのでは?
そうなんです!鋼太郎さんも竜也さんも舞台の上で同じエネルギーを発する方々ですし、圭哉さんはいつも心が軽くなる言葉をかけてくださるんですよ。私としては甘えたいチームが勢揃いで(笑)。とにかく私は稽古が大好きなので、これから皆さんにも大いに甘えさせていただきながら、たくさん失敗して役を深めていきたいです。そして自分が一番ゴネリルを理解している人間になれたらいいなと思っています。

| 作品名 | 彩の国シェイクスピア・シリーズ 2nd Vol.3『リア王』 |
| 日程 | 2026年5月5日(火祝)~5月24日(日) |
| 会場 | 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 座席表 |
| チケット料金 | 【SAFメンバーズ】>> S席:11,000円 A席:9,300円 B席:7,500円 【一般】 S席:12,000円 A席:10,000円 B席:8,000円 U-25:3,000円※公演時25歳以下/B席対象/劇場のみ取扱/入場時要身分証明書 (全席指定・税込) |
| ツアー公演 | 宮城、愛知、大阪、福岡、岡山公演あり |
| 作品HP | https://horipro-stage.jp/stage/kinglear2026/ |
