特集・インタビュー

「御上先生」「白雪姫」で話題・吉柳咲良 ロングインタビュー「1ステップ上がった時の自分を誇れるように」/4月17日開幕 舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』
  • インタビュー

現在、日曜劇場「御上先生」椎葉春乃役で出演中の俳優・吉柳咲良。3月20日公開の映画「白雪姫」では白雪姫役の声優を務め、今年4・5月上演の舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』にも出演が決定するなど、その後の活躍が目白押しの注目の俳優のひとりだ。様々なフィールドで活躍する彼女の今を知るため、インタビューを実施。

いま演じている役の裏側や想い、そしてこれからについて語ってもらった。

(撮影:番正しおり)

01  今の私があるのは『ピーター・パン』があったから
02  役を通して自分と向き合わなければいけないタイミング
03  悩みの先で、1ステップ上がった時の自分を誇れる気がする
04  「私考え抜けるところまで考えたな」

今の私があるのは『ピーター・パン』があったから

幼い頃から目立ちたがり屋な性格で、人前に出ることには緊張するけど好きなタイプでもあって、そういうのをどんどんやりたいという欲が多分昔からあったんです。もともとドラマなどをよく見る家庭で育ち、映像で石原さとみさんを見たのがきっかけで「こういう人になりたい」と本気で思い始めました。

当時12歳で、まだ子役のオーディションが多かったのですが、女優になりたいという夢を叶えてくれるオーディションを探していたら、たまたま石原さとみさんがポスターになっているオーディションを見つけて、それがホリプロタレントスカウトキャラバン(2016年開催 第41回)との出会いでした。そこでグランプリをいただいて、デビューにつながりました。

6年間、ピーター・パン役に向き合っていく中で、自分の中で意識がとても変わっていったと思います。

ただただがむしゃらに言われたことをやるしかなかった1年目から、「こうしてみたい」とか「ここはこうだと思う」とか、だんだん自我が出てきました。自分なりのピーター・パン像みたいなものが少しずつ出来上がってきたんです。でも、ピーター・パンは子どもで、子どもの本能で動くようなキャラクター。だから、最初は直感で出来てたところが、逆に深めようと思って考えることで、分からなくなっちゃったこともたくさんありました。

ピーター・パンをやりながら別のお仕事をいただく機会が年々増えていくと、初心を忘れないために原点に帰るみたいな気持ちで、毎年ピーター・パンに戻っていましたね。

舞台がどういうものかを知ったのはピーター・パンでしたし、ピーター・パンのおかげでミュージカルに出会えたので、今の私があるのはこの作品、役があったからかなと思います。

役を通して自分と向き合わなければいけないタイミング

ーーTBS系日曜劇場「御上先生」の出演が決まったときの気持ちは?



何を考えてたんだろうあの時……(笑) 

ちょうど舞台をやらせていただいていた時期にオーディションを受けていて、自分には日曜劇場という重たさみたいなものがのしかかっていく感覚だったのを覚えています。

自分が受けていた役とは違う役で話をいただいて、まず初めにこの子、椎葉春乃はどんな子なんだろうということを思いました。役柄を聞いたところ、すごくいろいろ抱えている役で。ちょうどその時の自分にとって、あんまり触れてほしくなかったことに繋がる台詞が台本にたくさんあったので驚きました。役を通して自分と向き合わなければいけないタイミングなんだなということを、役に教えてもらったような感覚です。

彼女が奥深くで抱えていることが発端となって、自分がやらなければいけない責任とは裏腹に、どこかで助けてほしいと思っているのにその声を上げることができないしんどさとか、気持ちが上手く制御しにくくなる状況が描かれていて。「あぁ分かるな」という共感が、台本には散りばめられていました。

ーー演じる椎葉春乃のメイン回(第7話 3月2日放送)の撮影はいかがでしたか?どんなことに気を付けましたか?

教室に入ってくるシーンから、「小手先で芝居するのはやめよう」「ただ正直に演じよう」と思いました。それまでずっと溜めてきた椎葉としての気持ちを、私はここで椎葉として、相手にちゃんと届けなければいけないという責任だけを感じていました。だから、細かい演技プランみたいなものがあったわけではなくて、単純にここにいる人たちが全員味方だから、みんなが言ってくれた言葉だけを信じて、ただもうやらなきゃという気持ちでした。

みんなの前に立って全員からの圧を感じながら喋るという緊張感よりも、それを話さなければいけない恐怖心と戦っていた気がします。私は、椎葉としてあそこに立っていたんだな、と後から痛感しました。

ーー「御上先生」は同世代の俳優がたくさんいると思うのですが、一緒に過ごしていて印象的なエピソードはありますか?

 
 
 
 
 
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今回は学園物で、同世代の役者がたくさんいる状況でお芝居ができるので、いろんな人からのいろんな刺激をいただきました。

私の演じる役が全体的に重たかったので、現場ではなるべくそれに飲み込まれないようにと思い過ぎて、役と距離を取ろうとした時期があったんです。その時に影山優佳ちゃんが、自分の目線から見た私自身と椎葉という役について話してくれたり、私が悩んでることの話を聞いてくれたり、常に寄り添ってくださってとても助かりました。

それと、親友役の髙石あかりちゃんが、こちらの芝居を全部受け取ってくれる絶対的な安心と信頼があったので、あかりちゃんとの掛け合いを楽しみにできました。2人がいてくれたのはとても大きかったなと思います。

ーーそして、今春公開の実写映画「白雪姫」の吹替も決まりました!決まったときの気持ちは?

本当にちゃんと「受かってよかったな」って思ったのは予告映像が出た後でした。声を録っていく中でももちろん実感していたんですけど、本予告が出たり、歌番組に出させていただいて、色々なところで歌を褒めていただけたり、おめでとうとたくさん言ってもらったときに、「私、本当にプリンセスを演じたんだな」というのを改めて実感して凄く嬉しかったです。

 
 
 
 
 
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ーー「白雪姫」を演じるにあたって、気をつけたことはありますか?

実写の吹替が初めての経験だったので、とても難しかったです。アニメに当てるよりも距離感が立体的でなければいけないうえに、自分が思うよりも声を出さなきゃいけない中で、絶妙なバランスを取らなければならない点が難しかったです。

私が普段から喋っているポジションで声を当てると、ババっと言葉が投げられるくらいの軽さになってしまうのですが、プリンセスは話す言葉の一音一音を大切にしながら話していると思いました。なので、優雅なプリンセスらしさや美しさを出すには、語尾の使い方とか言葉遣いだけじゃなくて、スピード感とかその言葉一つ一つを出すためにどれぐらい丁寧かによって説得力が出ると思ったので、いつもの自分とはちょっと違う丁寧さを心がけました。

ーー俳優と声優での違いはありますか?

お手本があるかないかの違いですかね。

吹替はそもそも演じられている方がいらっしゃるので、そこに声を当てるとなると、その人のニュアンスを崩してはいけないと思います。自分が役と向き合うよりも、その役を通して演じた方と向き合っていくという作業になっていくので、その人が表現しているニュアンスを残せるかがすごく大事だと思っています。なので、なるべくちゃんと音を聞くようにして、どういうテンションでどういう風にセリフを言っているのかを聞きながら演じました。

悩みの先で、1ステップ上がった時の自分を誇れる気がする

今の時代に観たい作品だと思いました。

作品内で摂食障害が扱われている一方で、“家族”という、あまりにも距離が近いように感じる間柄だからこそ、見えなくなっていくものとか、向き合えなくなっていくことも描かれていて、家族が本当の意味で分かり合えることなんて、きっとないのかもしれないと感じました。でもそんな中で、家族というある種特別な関係値だからこそ生まれる、いざこざのようなぐちゃぐちゃな感情を、本人たちが分かり合えたり、気づいていくことができる舞台です。

シビアな問題を扱っているんですけど、この舞台をどう届けるべきか、最終的な着地はどうなっていくのか、どこに落とし込むのが良いのか、などを考えています。

<あらすじ>
命が脅かされるほどの摂食障害を抱えていた大学生のレイチェル(吉柳咲良)が、施設での治療を経て、4か月ぶりに家族の元へと帰ってきた。家族とともに食事をして、以前のように自立した生活を手に入れるためだ。母・ジョーン(寺島しのぶ)と父・ピーター(松尾貴史)は愛する娘の帰宅を心から喜び、弟・ブロディ(富本惣昭)も交えて家族との平穏な時間を過ごすように思えた。 ジョーンは、移民として苦労しながらもキャリアを築いた経験があり、娘もこの状況を乗り越えて明るい将来を掴み取ってほしいと期待を膨らませる。しかしレイチェルは、セラピストであるブレンダ(名越志保)との会話を思い出しながら、次第に愛する母親からの愛情を苦痛に感じ、家族こそが自分を追い込んだ原因なのではないかという疑問に変わる。 すれ違う母と娘。愛情に隠れた本当の気持ちを知ったとき、家族は大きな一歩を踏み出す。

ーー舞台「リンス・リピート」で演じるレイチェルは、どんな役ですか?

摂食障害を患い、施設での治療を経て、4か月ぶりに家族の元へと帰ってくるが、次第に愛する家族からの愛情を苦痛に感じる自分に気付き始める。

私はレイチェルにすごく共感できました。心の奥底で思っていることを必死にもう一人の自分が止めてるみたいな感覚が私にもあって、きっと他人を気にしてしまうからこそ、自分のことが正しいと思えないというか、自分の意思に自信を持っていないタイプだと思っています。レイチェルは、誰かを優先的に考えられる人なのかなと思うし、だからこそ責める対象が自分になっていくというか、そうすることが楽だった子だと思いますし、それ以上の答えが見当たらなかったというのも一つあると思います。

重圧と鎖に繋がれたような状態のレイチェルが、闇から抜け出すことができるようになるまでの話でもあります。なので彼女を表現することは難しいのですが、成長していく過程で最終的に彼女が何を思ったのかや、どこで大きな気づきがあったのかを重点的に考えていきたいなと思っています。

最終的に登場人物が立ち上がっていく物語って多いですが、私はどんな結果であれ自分を否定する必要はないと思っています。もちろんその状況から抜け出せた先は素晴らしいのかもしれないけど、その過程であった苦しみとか、一歩踏み出せなかった時の自分の中に溜まっていく自分に対しての黒い気持ちというのは大切に演じたいと思っています。

レイチェルの場合は、それがかなり赤裸々に台本に書かれているイメージがあって、立ち上がれなかった瞬間とか、でも別に立ち上がりたくないわけではなくてただその瞬間だけうまく立ち上がれなかったという葛藤は、絶対に一番届けなきゃいけないと思うんです。

一歩踏み出せた先に何があるかは、抜け出せた人間にしか分からないんです。でも、抜け出せなかった人たちだってきっといるし、抜け出せないから苦しむこともあって、その苦しみに私は共感できました。そういった悩みが、その先で1ステップ上がった時の自分を誇れる気がするので、レイチェルの苦しさほど慎重に表現したいです。

ーー今回寺島しのぶさんと共演されますが、どういう印象ですか?

稽古がこれから始まるのでまだ深くはお話しさせていただいていないのですが、やはり大先輩ということもあって緊張しています。

「リンス・リピート」では、家族なのに、母と娘の関係なのに、二人の間に謎の緊張感がずっとあるんですよね、特にレイチェルからはすごく感じるというか。でもそれは彼女が気遣いの人だからこそ感じる緊張感なのかなというのもあって。

私はとにかくお客様にレイチェルの細かな心情を、等身大で演じることでお伝えできればと思っています。

「私考え抜けるところまで考えたな」

ーーいままで色々な役に挑戦していますが、自分はどういう性格の人だと思いますか?

影響を受けやすいタイプだなと思います。何にでも影響を受けやすくて、その全てが自覚なく糧になっていると思うし、私の人間性は世の中からの影響によって形成されてきた気がします。思想や価値観を広げていったり、どんなに考えても分からないことを考え続けることが好きだし、それが今の仕事を続けている理由でもあると思います。

ーーこれから俳優としてのキャリア、どういうことにチャレンジしていきたいですか?

俳優という職業をこなしていく中で、その先にある自分の生き様というか、歩んできた道を振り返ったときに、「私考え抜けるところまで考えたな」と思えればいいなと思います。

それと、「常にいただいたお仕事を責任を持ってやりきる」ということは意識し続けています。巡りあえたお仕事を考え抜いて、自分が「その時の100%を出し切れた」と思えるようにしていきたいです。

未来のためにまずは今を大事にしたいし、先のことばかり考えていたって仕方がないので、将来のことももちろん考えながら、その理想になるために今何をしなければいけないかを考えています。

ーー最後に応援してくださっている方々に向けてメッセージをお願いします。

私を知ってくださる方は、何をきっかけに知っていただいたかで、その人が持つ私のイメージがそれぞれ違うと思うんです。まだ知られていない部分もきっとたくさんあるので、私は飽きない人間でいれたらいいなと思っています。

それと、ファンの方々が仕事の悩みとか人間関係の悩みとかを私のSNSに吐き出してくれるのが、私はとても嬉しくて。私という存在がいることで少しでも吐き出せる場所があるなら、それはすごく素敵なことだと思っています。応援してくださる方々にとって身近で、味方になれる存在でいたいと思います。

<吉柳咲良 プロフィール>
2004年、栃木県生まれ。
「第41回ホリプロタレントスカウトキャラバン PURE GIRL 2016」グランプリを受賞後、2017年上演のブロードウェイミュージカル「ピーター・パン」より、10代目ピーター・パンとして同公演に2022年まで出演。現在、TBS系日曜劇場「御上先生」に出演し、今年3月に実写映画「白雪姫」プレミアム吹替版に白雪姫役声優、今年4,5月に舞台『リンス・リピート』レイチェル役としての出演を控える。
近年の主な出演作品に、【ドラマ】「ブギウギ」、「光る君へ」、「マル秘の密子さん」【映画】「天気の子」、「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」、「聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメン VS 悪魔軍団〜」【舞台】『デスノート THE MUSICAL』、『ロミオ&ジュリエット』など。


作品名舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』
期間2025年4月17日(木)~5月6日(火・休)
会場紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
チケット料金チケット好評販売中!

全席指定:8,800円
U-25:6,000円[2月19日~販売]
Yシート:2,000円[2月24日~3月2日販売]※ホリプロステージのみ取扱い
(税込)
ツアー公演京都公演あり
作品HPhttps://horipro-stage.jp/stage/rinserepeat2025/

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