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【稽古場レポート】『てにあまる』の稽古場で
2020年12月3日(木)
12月19日に初日を迎える『てにあまる』から稽古場レポートが到着。これまでと違った様子の稽古場から写真と共に”いま”の様子をお届けします。
▼Sky presents『てにあまる』
【東京公演】※公演は終了しました
期間:2020年12月19日(土)~2021年1月9日(土)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
※鳥栖、大阪、愛知、三島公演(終了)
男はベンチャー企業の経営者であり、部下(高杉真宙)が彼を支えている。部下は男の家を訪れ、見知らぬ老人がいるのに驚く。男は「家政夫だ」と老人を紹介する。部下は男に対して盲目的な憧れと畏れがあり、素直に信用する。
ある日部下は、男の別居中の妻(佐久間由衣)を連れてくる。妻は男と離婚をしたがっており、その話し合いのためだ。家政夫の老人に対して怪訝な目を向ける妻に、老人は不敵な笑みを浮かべる。
妻と部下の関係を疑い、壊れていく男。その様子に心が離れていく妻と部下。
男と妻子の間には何があったのか。そして老人しか知らない、男の過去の真実とは何か。
これは家族をやり直そうとする物語。
あるいは、家族を終わらせようとする物語。
|『てにあまる』の稽古場で
(取材・文:市川安紀)
てにあまる。不思議なタイトルだ。一瞬、何のことかわからなかった。全部ひらがなだし。
「手に余る」だとすると、「自分の力では到底扱うことができない。もてあます。手に負えない」だとか、「自分の能力の範囲を越えていて、処理しきれない」だとか、辞書にはそんな意味が載っている。
まぁ、タイトルなんて記号のようなものかもしれないし、あまり固執してもしょうがないかもしれないけれど、なんとなくこの芝居、「自分の力では到底扱うことができない」という言い方がしっくりくるような気がする。いや、あくまで個人の見解です。言葉の響きで勝手に推測しております。
というわけで、チラシの「物語」紹介も薄目でスルーし、ほぼ予備知識なしの状態で、稽古場を訪れてみた。本当は事前に台本(まだまだ変更があるようなので仮のもの)を渡されていたけど、ちゃんと読んでいなかったことをここに告白しよう。
いや、だって、藤原竜也と柄本明だもの。稽古場で何が起きてるか、曇りなく見てみたいじゃありませんか。しかも柄本は今回、演出家でもある。松井周の書き下ろしを柄本明が演出するって、マッチングアプリじゃそう導き出せない顔合わせでしょうが。そこに、清々しい若手二人、高杉真宙と佐久間由衣が加わるという。ひえ、柄本・藤原という芝居モンスターみたいな人たち(すいません)に取って食われたりしないんだろうか。大丈夫だろうか。
ちなみに、時節柄、どこの稽古場でも、これでもかというほど入念な感染症対策が行われている。『てにあまる』の稽古場でも5ページにわたる対策マニュアルにしたがって、キャスト・スタッフは毎日、微に入り細に入り「儀式」を繰り返す。検温、新しいマスクへのつけかえ、手指と衣服の消毒、上衣の着替え、等々。稽古場内で「密」を避けるように動線も考えられている。飲食は稽古場外の別スペースで。会話も必要最低限に。稽古中の役者たちも、原則マスクは着用のままだ。
という状況下の稽古場を覗いてみると、広々としたリビング風の空間に大きなソファやテーブルが置かれていた。本格的な稽古に入ってまだ4、5日といったところという。
と、いきなり、ドカッとソファに座っている藤原竜也と、へら〜っと立っている柄本明が、何やら言い争いをしている(役として、です。念のため)。柄本は演出をつけながらなので台本を手に持ってはいるが、時によって代役も立てつつ、自分の役も演じるというのは大変な労力だ。台本を既に手から放している藤原は、どうやら若くして時代の寵児となったベンチャー企業の社長らしい。自宅らしきこの場所に置かれた空しいほど大きな家具類は、きっと成功の象徴でもあるのだな。で、柄本はというと、ここで働く家政夫……? みたいに見えなくもないが、にしては態度がデカイ。藤原の態度もよそよそしいが、順当に考えて親子ってことなのだろう。しかし二人の間には、あまりにも不穏な空気がただよっている。他人様には聞かせられない家族の傷が(しかもかなりエグそう)、会話のはしばしから徐々に覗いてくるようだ。
すっとぼけた顔をして藤原を挑発していく柄本の凄み。じりじりと追い詰められ、爆発寸前で踏みとどまっている藤原の極限状態。お、もしやこれは、行くとこまで行ってしまうのか?!と手に汗握ると、「なんちゃって」とばかりに柄本が煙に巻いて去っていく。うわぁぁぁ、稽古とはいえ、この迫力はすさまじいな。ごく日常的なシーンにも見えるのに、ただならぬ緊迫感に息を詰めて見入ってしまう。しかも二人とも、ある沸点が来ると、声のボリュームをぐぃん!と一気に上げられるのがすごい。二人の丁々発止、ねじれたパワーバランスの不可思議さを体感するだけでも、劇場に足を運ぶ価値はあると断言しよう。
一人になった藤原がなんとか気を落ち着かせようと音楽をかけていると、どこからともなく高杉真宙と佐久間由衣が現れた。殺伐としていた柄本&藤原とは打って変わって、二人とも無邪気で楽しげだ。ソファで戯れる恋人同士のように見えるが、言葉はない。む、これはどういうシーンなのだろう? 夢とも現ともつかない不思議な空気が流れている。ここで台詞とリンクした、とある有名な演歌がかかるのだが、演出家モードに切り替わった柄本が「イントロがあって、歌が始まる手前くらいのタイミングで去っていけるかな」。二人に出す動きの指示は具体的だ。
場面変わって、どうやら高杉は藤原の部下らしいということがわかった。「大丈夫ですか?」と高杉が登場するシーンを繰り返したあと、柄本はおもむろに自ら演じてみせる。「大丈夫ですかぁぁ〜〜っっ?!」とものすごい大声で息せき切って現れ、ウロウロとあきらかに挙動不審。それだけでなんでこんなにおかしいんだ。稽古場内からも笑いがもれる中、柄本も思わず自分で笑いながら「これはちょっと大げさかもしれないけど、方向はこんな感じで」。俳優にとってこれほど贅沢な時間はないだろう。柄本のデモンストレーションを受けてもう一度高杉が演じてみると、先ほどとはガラッと印象が違う。ん、なんでこの人、こんなにキョドってんの?? なんかやましいことでもあるの? と観る者の想像力をかき立てる場面になった。んん、マジック。そして高杉の対応力。柄本はまた高杉のそばに寄り、そっと言葉をかけている。
と、ここで今日の稽古は終了。今回見学している間に佐久間のシーンはさきほどの短い時間しかなかったが、まっすぐに稽古を見つめる眼差しが印象的だった。台本を読んでみると、佐久間は藤原の妻らしい。しかしここの関係もかなり冷えきっているようで、高杉演じる部下との関係も何やら気になる。いったいこの4人の関係性はどうなっているのだろう。そこから何があぶり出されてくるのだろうか。胸ざわつかせながら、稽古場を後にした。
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【公演概要】
Sky presents 舞台『てにあまる』
<キャスト>
藤原竜也 高杉真宙 佐久間由衣 柄本明
<スタッフ>
脚本:松井周
演出:柄本明
美術:土岐研一
照明:日高勝彦
音楽:朝比奈尚行
音響:藤田赤目
衣装:宮本まさ江
ヘアメイク:大和田一美
演出助手:吉橋航也
音楽助手:鈴木光介
舞台監督:幸光順平
公式twitter:@teniamaru #てにあまる
<東京公演>
期間:2020年12月19日(土)~2021年1月9日(土)
(12月28日~1月3日休み)
会場:東京芸術劇場プレイハウス
主催:ホリプロ/TOKYO FM
お問い合わせ:ホリプロチケットセンター 03-3490-4949(平日11時~18時/土日祝休み)
<鳥栖公演>
期間:2021年1月16日(土)~1月17日(日)
1月16日(土)12:30/17:30
1月17日(日)12:30
会場:鳥栖市民文化会館大ホール
主催:RKB毎日放送/インプレサリオ/鳥栖市/鳥栖市教育委員会/鳥栖市文化事業協会
お問い合わせ:インプレサリオ info@impresario-ent.co.jp
<大阪公演>
期間:2021年1月19日(火)~1月24日(日)
1月19日(火)19:00
1月20日(水)14:00/19:00
1月21日(木)14:00
1月22日(金)14:00
1月23日(土)12:30/17:30
1月24日(日)12:30
会場:新歌舞伎座
主催:新歌舞伎座
お問い合わせ:新歌舞伎座 06-7730-2121(11:00~16:00)
<愛知公演>
期間:2021年1月26日(火)~1月27日(水)
1月26日(火)19:00
1月27日(水)13:00
会場:刈谷市総合文化センター大ホール
主催:メ~テレ/メ~テレ事業
お問い合せ:メ~テレ事業 052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
<三島公演>
期間:2021年1月30日(土)~31日(日)
1月30日(土)19:00
1月31日(日)13:00
会場:三島市民文化会館・大ホール
主催:静岡朝日テレビ/三島市民文化会館
お問い合わせ:
静岡朝日テレビ総合ビジネス部 054-251-3302(平日10時~18時)
三島市民文化会館 055-976-4455(9:00~20:00 休館日を除く)
特別協賛:Sky株式会社
企画制作:ホリプロ