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笑って泣ける?「ただごとでない」芝居に挑む 吉田鋼太郎&柿澤勇人、熱い稽古場を語る!『スルース〜探偵〜』対談
2020年12月21日(月)
(取材・文/市川安紀)
“笑って泣ける?「ただごとでない」芝居に挑む
吉田鋼太郎&柿澤勇人、熱い稽古場を語る!
年明けの開幕に向けて、白熱の稽古が繰り広げられている『スルース〜探偵〜』の現場。
プライベートでも交流のある吉田鋼太郎と柿澤勇人だが、稽古場では妥協や馴れ合いは一切なし。真剣勝負に挑む二人は、膨大な台詞と格闘しつつも、とてつもなく楽しそうだ。
芝居好きだけでなくミステリーファンにも熱視線を浴びるこの傑作。俳優二人の丁々発止を、ぜひ目撃してほしい。
──『スルース〜探偵〜』は1970年のイギリス初演以来、日本でも何度も上演されていますし、二度も映画化されている人気作です。発表から半世紀経って今度お二人が新たに挑戦されるわけですが、実際に稽古が始まっていかがですか。
吉田 いや、これはね、ただごとじゃない作品ですよ。僕は舞台を観たことがなかったんだけど、もちろん映画は知っていたし、いわゆるウェルメイドプレイ、“よく出来た芝居”ぐらいに思ってたんだよね。ところがいざ稽古してみると、作品の面白さ、すごさに驚いてますね。
柿澤 面白い芝居ですよね。僕としては吉田鋼太郎という俳優と一緒にやれるというだけで、すごく嬉しいし、楽しいんですけれど、鋼太郎さんがおっしゃるように作品そのものが本当に面白い。鋼太郎さんが有名な推理作家で、僕が鋼太郎さんの奥さんを寝取る役なんですけど。
吉田 妻の不倫相手であるカッキー(柿澤)を俺が自分の家に呼び出すんだよな。そこからは屋敷の中だけで話が展開する。二人は寝取り・寝取られという関係だけど、俺がカッキーに家にある宝石を盗めとけしかけて、いかにも泥棒が入ったかのように見せかけるために二人で工作していくうちに、不思議な連帯感が生まれるんですよ。
柿澤 僕が演じるマイロはなぜかピエロの格好をさせられるんですよね。
吉田 そう、そこに至るまでの導入部分がまずすごい。家に彼を招き入れて、こっちは彼に威圧感を与えていく。でもマイロはそれに負けないように、一生懸命対等に振る舞おうとするんだけど、どんどん俺の役、アンドリューのペースに巻き込まれて、しまいにピエロの格好をさせられる。そんな格好で動きづらいブーツまで履かされてるのに、必死にアンドリューの言う通りにやろうとするんだよね。
柿澤 なんだかんだ言ってマイロも素直ですよね(笑)。
吉田 そう、彼にも愚かな理由があるからね。最初はお互いに牽制し合っていたのに、いつの間にか二人でめちゃめちゃ楽しんでるわけ。本読みの段階である程度のイメージはあったけど、実際にピエロの格好した人間がその場にいて、一生懸命何かをやってる、もうそれだけで笑えるし、その滑稽さがちょっと泣けるんですよ。人間ってなんてバカなんだろうって。そのエネルギーが凄まじくて、まるでシェイクスピアみたいだよ。
柿澤 あははは、確かに!
吉田 この作品が何度も上演される理由が、稽古してみてやっとわかった。やる役者によっても全然違うだろうしね。とにかくすごい作品ですよ。
──柿澤さんも稽古をしながら作品の面白さを改めて実感されているとか。
柿澤 作品も面白いですし、僕はマイロとアンドリューの立場とか関係性がけっこうリアルに感じられるんですよ。マイロは若くて金もなくて、仕事もパッとしない。アンドリューは金も名声も手に入れていて、圧倒的に敵わない存在。「お前、稼いでるのか」ってアンドリューに聞かれるんだけど、役者としてまだまだ売れていない自分が、この役に重なるんですよね。日本の演劇界を牽引している鋼太郎さんに対して、自分はなんてクソ野郎なんだといつも思ってるし。
吉田 カッキーはそう言うけど、売れてるじゃん! 日生劇場とかで主役やってるんだよ?
柿澤 いやいや、まだまだ、全然です。
吉田 君の向上心は果てしなく、どこまでもだね! 俺なんかカッキーの年ぐらいの時はバイトもしてたし、まったく売れてなかった。でもやっぱり「有名になりたい」「お金持ちになりたい」ってめちゃめちゃ思ってたから、そういう意味では昔の自分もマイロと一緒だったなと思うよ。……今、ふと思ったんだけど、マイロって、昔のドラマ『傷だらけの天使』の水谷豊さんにちょっと似てるかも。全然作品は違うんだけど、道化みたいなところがある役だったんだよね。
柿澤 へぇ〜、そうなんですか。
吉田 そう、若かりし日の水谷さんに少し被る気がする。まぁでも、マイロはとにかく大変な役ですよ。前半は悪いオジさんに騙されて、コテンパンにやられるわけだから。特にこの芝居が難しいのは、さっきも話した導入部分。
柿澤 出会いの時点からお互いに腹に一物持った状態なので、最初から心理戦なんですよね。ホントは、会って10秒後に殴り合いのケンカをして、どっちかがボコボコにしたらそれで終わり、って話だと思うんですよ。
吉田 本来はね(笑)。
柿澤 でもそうじゃなくて、アンドリューのクレイジーさに操られる部分はあるけど、マイロとしてもいわばゲームに「乗る」わけですよね。そこに至るまではアンドリューが何か言うたびにイライライライラ、ぴくぴく反応する。「くっそ〜、このジジイ〜〜ッ!」って思いながらも虚勢を張って、「いや、別に僕、余裕ですけど?」みたいに見せないといけないわけで。もう、この導入部分の1ブロックを稽古するだけで、首のあたりが硬くなりますもん。
吉田 ハハハハ、そうだよなぁ。
柿澤 すっっごく疲れますね。でも、楽しいです。
吉田 カッキーは貪欲だから、この作品の経験をしっかりモノにして、芝居が終わる頃にはまったく違うカッキーになってると思う。今は色んなものを取り込んでいる最中だから、これからさらに稽古してどこにたどり着いているのか、楽しみでしょうがないね。
──鋼太郎さんは稽古中、演出家と出演者としてのバランスはどう取っているんですか。
吉田 台本がよく出来てるから、演出という演出はしなくてもいいくらいなんですよ。会話の意図をちゃんと汲んで、ホンに書いてあることをきちんと表現すれば、おのずと出来上がる作品なんです。もちろん、動きや立ち位置といったことは決めなきゃいけないけど、芝居部分に関してはカッキーと二人でやりながら、「今のはちょっと違うかな」「俺はこうやってみよう」「今、手ごたえあったね、じゃあこれでいける」って作り方ができる。なかなかこういう芝居作りはできないんですよ。だから今は本当に文字通りの“PLAY”、遊んでるみたい。遊びながら色んなことを見つけていける、僕にとっては一番理想的な稽古ですね。いつもは自分が演出すると、役者としての部分がないがしろになってしまうのもやむを得ないところがあったんだけど、今回は絶対にそれを見せないでやる。もう初日までに、100%にしたい。
柿澤 そうしたら僕は150%でやるしかないですね。
吉田 じゃあ、155%に上げていこう!
──そんなところで競っても(笑)。
吉田 いやもう、本当に楽しいのよ。才能のある、しかもプライベートでも仲良くできるカッキーと芝居ができるって、贅沢だよね。すごく嬉しい。
柿澤 本当にありがたいです。今はしんどいですけれど、このしんどさを越えれば光が見えてきて、さらに楽しくなるのはわかっているので。もっともっと芝居も良くなっていくだろうし、早くそこまで行きたいですね。年末年始にオフが数日あるんですけど、たぶん芝居のことで気が気じゃないだろうなと。
吉田 家で台詞合わせぐらいはできるでしょ。台詞合わせしとくと、だいぶ違うよ。
柿澤 あ、稽古します?
吉田 うん、やろうよ。
柿澤 やった、お願いします!
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演出:吉田鋼太郎
出演:柿澤勇人 吉田鋼太郎 ほか
<東京公演>
日程:2021年1月8日(金)~1月24日(日)
会場:新国立劇場 小劇場
主催:ホリプロ
<大阪公演>
期間:2021年2月4日(木)~7日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
主催:キョードーマネージメントシステムズ/サンケイホールブリーゼ
お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888
(平日・土11:00~16:00)
<新潟公演>
期間:2021年2月10日(水)・11日(木)
会場:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
主催:公益財団法人新潟市芸術文化振興財団
お問合せ:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521
(11:00~19:00/休館日除く)
<仙台公演>
期間:2021年2月13日(土)・14日(日)
会場:電力ホール
主催:仙台放送
お問合せ:仙台放送事業部 022-268-2174 (平日10:00~17:00)
<名古屋公演>
期間:2021年2月19日(金)~21日(日)
会場:ウインクあいち大ホール
主催:中京テレビ放送
お問合せ:中京テレビ事業 052-588-4477 (平日11:00~17:00/土日祝休業)
企画制作:ホリプロ