FEATURE・INTERVIEW
特集記事・インタビュー
特集記事・インタビュー
平方元基「未知だったミュージカルにコツコツ挑み続けた10年」|ホリプロステージ・インタビューシリーズ《現在地》
2021年3月15日(月)
ある俳優のこれまでとこれからにクローズアップするインタビューシリーズ《現在地》。
□ □ □
ノーブルなルックスと伸びやかな歌唱力が魅力の俳優・平方元基が今年、ミュージカルデビュー10周年を迎えた。着実に力をつけて、最近では『エリザベート』の皇帝フランツ、『ローマの休日』の新聞記者ジョー、そして『メリリー・ウィー・ロール・アロング』の主役フランクなど、大役を担うように。もともと芸能もミュージカルも未知の分野だったという平方が、なぜ快進撃を続けているのか。これまで、そしてこれからを聞いた。
(取材・文:三浦真紀)
▼インタビューダイジェスト
東京公演日程:
2021/5/17(月)~5/31(月)
会場:新国立劇場 中劇場
一般発売 3/17(水)11:00
プレミアム会員 入会案内>
《先着先行》3/6(土)9:00~3/15(月)23:59
ホリプロステージ無料会員
《先着先行》~3/15(月)23:59
Yシート(20歳以下限定)
3/18(木)17:00~3/24(水)23:59
U25 (25歳以下限定)
3/25(木)11:00~
※予定枚数に達し次第終了
ほか名古屋、大阪公演あり。
#1
何も知らずに飛び込んだ世界。
ーー芸能界に入ったきっかけを教えてください。
故郷の福岡でバイト暮らしをしていた時に、お世話になっていた人からホリプロの方が来るので会ってみないかという話がありました。そこでお会いしたのが今の社長だったんです。芸能の世界に興味はなかったのですが、何しろお金もないですし、毎日ドキドキしながらお財布の中を見ているような状況だったんです(笑)。
なので、後日連絡を頂き、東京に呼ばれた際には「行きます!」と即答しましたね。このまま福岡にいてもどうなるのかわからない。それならとにかく東京を見てみようと思ったんです。
生まれて初めて上京して会社の人たちに会ったら好きな俳優やテレビ番組を聞かれました。でも俳優もテレビ番組も全く知らなくて。あまりに知らないから皆さん笑っていましたね(笑)。
ーー子供の頃は何になりたかったのですか。
パイロットです。今も飛行機は大好き(笑)。4、5歳の頃、母に「パイロットになりたい」と話したら、「元くんはすぐお腹が痛くなるから、500人の命を乗せて空を飛ぶのは責任が重すぎて無理よ」と言われました。そうして夢がなくなっちゃいましたね(笑)。
それからは、いい子でいなきゃ、と学校での勉強を頑張っていました。
ーー25歳の時に『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役でミュージカルデビュー。そもそもミュージカルに興味はありましたか。
2011年上演『ロミオ&ジュリエット』 撮影:宮川舞子
全く知りませんでした。
会社に入って、大先輩である鹿賀丈史さんの『シラノ』初演を拝見したくらい。まさか自分が舞台で歌って、カツラをつけて、メイクをするなんて思ってもみなかったです。だってミュージカルは気軽には行けないものだと思っていましたから。
オーディションの話をいただいた時も最初、なぜ僕に?と思ったくらいです。歌い方も譜面の読み方もわからない。初めてのオーディションでは質問の意味がわからず、ずっと困り顔をしていて小池(修一郎)先生が笑っていたのを覚えています(笑)。ほんと、一か八かやるしかない!と必死だった。そこがティボルトと重なったのかもしれません。
#2
誰かにあれほど深く心の中を
“ほじくられた”ことはなかったです。
ーーその後、次々と大作ミュージカルに出演。ターニングポイントとなった作品は?
2014年上演『アリス・イン・ワンダーランド』 撮影:渡部孝弘
2015年上演『サンセット大通り』 撮影:宮川舞子
30歳の頃、『アリス・イン・ワンダーランド』から『サンセット大通り』にかけての演出家・鈴木裕美さんとの出会いは大きかったです。平均60点の及第点の演技をすることと、平均は20点だけど、時々劇的なヒットを飛ばすこと、その狭間で戦う裕美さんを見て、僕の意識も変わりました。
とても厳しい方で、誰かにあれほど深く心の中を“ほじくられた”ことはなかったです。それでも役と向き合っていく中で孤独に陥った僕を裕美さんは理解し、役として作り上げ、舞台上に送ってくれました。衝突もしましたが、それが出来る演出家と出会えて本当に嬉しかったです。
ーー『サンセット大通り』のジョーの苦悩は、次回作『メリリー・ウィー・ロール・アロング』のフランクと似ているような。
『サンセット大通り』みたいに大女優と出会って屋敷に軟禁される状況って現実ではまず起こらないですよね(笑)。
その点、『メリリー〜』には日常に起こる人生の紆余曲折が描かれています。生きている以上、我慢しなければいけなかったこと、他の道を選ばなければならなかったことなど、誰でも思い当たるところがあるでしょう。
理不尽でも人生では前に進まなければいけない。お客様に共感してもらえる作品になると思います。
ーー『メリリー〜』は現在から過去へと時系列が逆に進むのがユニークです。演じるのは難しそう?
最初のうちは僕もそう思っていました。でも何度も読み返すうちに気持ちが変わったんです。フランクに寄り添って読むと、辛くて進められなくなる。結果が分かった上で、過去を振り返るのはとても残酷なんですよ。特に思い出は綺麗なままですし。
でもこの作品は役が苦しむ分、高揚感が待っていて。夢に溢れ、恐れを知らず、ひたすら純粋で、キラキラした若かりし頃。そして訪れる最高の瞬間!観劇しながら心が痛む場面もあるかもしれませんが、最後には絶対に豊かな気持ちになってお帰りいただけると思います。
ーー『メリリー』ではウエンツ瑛士さんと笹本玲奈さんと、同い年3人が親友トリオを演じますね。3人は“花の85年生まれ”、ミュージカル界で活躍する俳優が多い世代です。
照れますよね(笑)。同い年ってものすごく親近感が湧きます。この3人をお互いにそれほど知っているわけじゃないのに話が尽きないし、すごく心地いい。僕は2人のことが大好きなんです。この関係性は稽古、本番と時間を共に過ごして、より濃くなっていくんじゃないかな。
#3
舞台とはこうすべき、
を取っ払ったことで自由になれました。
ーー舞台の上で空気が変わったとか、自由になれた経験はありますか。
僕は役を超えて自分がやりたいことを出すのは苦手です。平方元基よりも役を見てほしい。その意味で、地道な作業を重ね、役の中身を詰めて、大きく膨らませていくことで自由になれるんです。
『ローマの休日』に「虹」という、ジョーがアン王女を思って歌う静かなソロ曲がありました。そのシーンでは、何もせず、ただそこに存在して、歌ったんです。大きな劇場なので、本来なら客席全体に満遍なく動くのがセオリーだと思います。でも動機がなく、それよりもジョーの気持ちそのままでありたかった。
僕の中での、舞台とはこうすべき、を取っ払ったことで自由になれました。これは大きな発見でしたね。
――平方さんは時代物や歴史物にも多数出演。中でも『エリザベート』のフランツ役では新たな一面を見せてくれた気がします。
僕はコスチュームプレイも好きですが、その時代の人物として生身の人間でありたいとも思っています。
例えば『エリザベート』のフランツは、皇帝として姿勢や歩き方、所作が細かく決められています。それらを守りつつ、一人の人間としても生きていたい。フランツだって人間ですから、人前ではシャンとしていなければいけない分、肩も凝る。そこでちょっとした仕草を取り入れたりもしました。また一幕ラストでトートとフランツがエリザベートをとり合う場面は、トートが見えないながらも、思う存分戦いましたね。
王室の話といっても登場人物は人間ですし感情もある。決め事を守りながらも、その辺りは忘れないように演じていました。
#4
みんなが僕の周りからいなくなるのが嫌なんです、きっと。
ーーお芝居のことを考えたり、話したりするのは楽しいですか。
楽しいです。今は少し時間もあるので、『メリリー』をゆっくり読んでいくのが楽しみなんです。図書館で調べものをしているような感覚です。前は自分がこう考えているとか、恥ずかしくてあまり言いたくなかったのですが、今は言えるようにもなりましたし、人の意見もどんどん聞きたいと思っています。積極的になれたのかな?(笑)
ーー俳優仲間でお芝居の話をする人はいますか?
カッキー(柿澤勇人)ですね。とにかく芝居に熱くて、聞きながら自分はこうだなぁとあれこれ考えたりしています。僕たちは似ているところも全くないので、なぜ仲良しなのかは謎です(笑)。彼みたいな存在がいると、刺激になります。同じ事務所で、歳も近くて、共にミュージカルをやっている。同志として、一緒に厚みを増していけたらいいなぁと思っています。
ーー今年2021年でミュージカルデビュー10周年。この先はどう過ごしていきたいですか。
ミュージカルを全く知らなかった僕が、なぜ今もやっているのだろう?と、今も時折不思議になります。もっと別の道もあったのではないかと考える時もあります。でもこれまで舞台での僕を観てくださった方々、クリエイターやスタッフ、俳優仲間がいるから、この場所を離れたくないし離れられない。みんなが僕の周りからいなくなるのが嫌なんです、きっと。
終演後、作品や僕に関わってくれた人たちがすごく嬉しそうな顔をして話しかけてくれると、このままでいていいと言われている気がして。だからこの仕事を続けていきたいし、自分を信じて前に進んでいきたいです。
10年前のデビューから観てきた俳優さんの一人。「僕、コツコツ型だと思う」とおっしゃっていましたが、まさにその通りの努力、そして葛藤の人。『メリリー・ウィー・ロール・アロング』のフランク役は、平方さんらしさを出せるはず。期待大です。
▼関連記事
『メリリー・ウィー・ロール・アロング』~あの頃の僕たち~ご来場のお客様へご案内《主催の取り組み、注意事項》
【作品解説】進化を続ける『メリリー』文=中島薫(音楽評論家)
ブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』25歳以下限定チケット U25発売
【動画企画 #12の質問まとめ】キャストに聞いてみた!ブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』編
【平方元基×ウエンツ瑛士×笹本玲奈】BWのバックステージを”逆再生”で描く ブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』来春5月上演決定!
<キャスト>
平方元基
ウエンツ瑛士
笹本玲奈
岸 祐二
上口耕平
渚 あき
中別府 葵
宮原浩暢 (LE VELVETS)
中井智彦
井阪郁巳
家塚敦子
三木麻衣子
森 加織
雅原 慶
高木裕和
昆 夏美
今井清隆
朝夏まなと
<スタッフ>
作曲・作詞:スティーブン・ソンドハイム
脚本:ジョージ・ファース
演出:マリア・フリードマン
振付:ティム・ジャクソン
翻訳:常田景子
訳詞:中條純子
美術・衣裳:スートラ・ギルモア
照明:柏倉淳一
音響:大野美由紀
ヘアメイク:馮 啓孝
音楽監督:竹内 聡
歌唱指導:安崎 求、高野絹也
演出助手:陶山浩乃
舞台監督:瀧原寿子
<東京公演>
期間:2021年5月17日(月)~5月31日(月)
会場:新国立劇場 中劇場
主催・企画制作:ホリプロ
<愛知公演>
期間:2021年6月4日(金)・5日(土)
ー6月4日(金)18:30
ー6月5日(土)13:00
会場:愛知県芸術劇場大ホール
主催:キョードー東海
お問い合わせ:キョードー東海
TEL:052-972-7466(10:00~19:00 日・祝休)
<大阪公演>
期間:6月11日(金)・12日(土)
会場:梅田芸術劇場メインホール
主催:梅田芸術劇場
お問い合わせ:梅田芸術劇場
TEL:06-6377-3800(10:00~18:00)
https://www.umegei.com/schedule/955/
▼公式twitter
https://twitter.com/merrily2021