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「二度とこのような時代に戻してはいけない。その想いを受け継いでいきたい」~舞台『組曲虐殺』井上芳雄インタビュー~

  • インタビュー

2019年8月15日(木)

井上ひさしが手掛けた最後の戯曲『組曲虐殺』が今年10月6日に東京・天王洲 銀河劇場にて再々演を迎えます。初演から実に10年の月日が流れた本作で主人公の小林多喜二役を演じる井上芳雄に作品に込めた想いを伺ってきました。

取材・文・撮影/小村早希

 


 

▼公演詳細ページはこちら

 

■小林多喜二に少しでも近づきたい

――初演から10年、再演からは7年が経った『組曲虐殺』の再々演ですが、「この10年、小林多喜二と井上ひさしさんがずっと心の中にいた」とおっしゃっていましたが、この二人の人物は井上さんの役者人生にどのような影響を与え続けていたのでしょうか?

最初に多喜二の役を、と言われた時、到底自分にはできない役だと思ったんです。こんなスケールの大きな人物を演じるに自分は値しないと。もちろん、全く同じ人物に「なる」訳ではないのですが、それにしてもスケールが大きすぎて。でも一生懸命やらせていただいた結果、ものすごく自分の世界が広がりましたね。役者としても「もう少しお芝居を頑張ってみよう。何か自分が演劇をやらせていただく意義があるのかもしれない」と感じることが出来るようになりました。毎年いろいろな作品をやらせていただいていますが、そのなかでも特別な、胸の中にある作品です。多喜二に対して恥ずかしくない人間でいなきゃ、と思いますね。また、井上先生も最期は病床で食べられなくなるくらい体調が苦しかったそうですが、それでも生きる事を諦めなかった。皆を励ます作品を書いてきた自分が諦める訳にはいかないっておっしゃっていたそうです。そういう話を聴くにつれ、自分も多喜二に少しでも近づこうと思っています。

 

 

――『組曲虐殺』という作品が持つ力や魅力をどう感じていますか?

当時のプロレタリア作家と呼ばれる方々がどういった環境に置かれていたのか。今だとSNSや監視カメラが至る所にある訳ですから、「地下に潜る」「隠れる」という事自体難しいんですが、この作品の時代はそれがギリギリ可能だった時代。地下生活で書きたい事を書きまくり何万部と刷って、刷ったものが人の手に渡り、受け取る側も命がけでそれを入手して読むという、今の時代ではなかなか想像しにくい状況です。大変だからこそ、それを実現するための強い使命感を持ってやっていた人たちだ、という事を胸に刻んで臨まないと、と思いますね。
多喜二は貧しい人たちを助けてあげたいという純粋な想いだけだったと思うんです。その後、弾圧されたり、追われたり、厳しい状況のなかで皆の幸せを望んだ結果、自分の幸せをあきらめないといけなかった。それだけでなく自分が愛する人たちをも犠牲にしなければならなかった。でも多喜二は、自分の豊かさも地位も投げ出して皆に分け与える。誰でもできることではないと思います。そんな多喜二に皆「いいんだよ!頑張れ!」と応援していたところにこの作品の感動があると思います。

 

――ご自身と小林多喜二とで重なる部分はありますか?

元々持っていたのか、或いは多喜二に感化されたのかは分からないですが、自分だけが良い、自分だけが幸せであればいいと思わないところ。もちろん世の中は不公平だし自分がいちばんかわいいですけど、例えば演劇やミュージカルの話に特化したとしても、僕だけではなく、いろいろな人がいろいろな役をやるからこその演劇界なんです。理想論かもしれませんが、皆で上がっていく事を目指したいですね。

 

 

■すべてのキャストとスタッフが愛した作品を受け継いでいきたい

――初演時の思い出をぜひ教えてください。印象的だったことはありますか?

初演の時は鮮烈な印象が残りましたね。劇の終盤、皆でおしくらまんじゅうをする場面があるんですが、そこに来ると涙が毎回毎回溢れてきちゃうんです。あまりに幸せで。再演の時には逆に「こんなもんじゃない。初演の時はこんなんじゃなかった」と思うくらい、初演の印象が強すぎたんです。
今回再々演で果たしてどうなってしまうんだろうと思いますね。でもキャストも変わりますから、今のメンバーで出来る事を考えながらやっていきたいです。

 

――今回から新しく上白石萌音さんや土屋佑壱さんが加わりますね。

萌音ちゃんと一緒に芝居ができる事が楽しみですね。彼女ほど若くて才能豊かな女優さんを僕は知らないです。舞台では『ナイツ・テイル』以来ですが、また相手役が僕でそれでいいのか、と東宝芸能にお伺いを立てねばという気持ちです(笑)。萌音ちゃんはこの作品の記録映像を観てすごく感動したと話してくれました。きっとたくさん感じてくれると思うと思います。前回出演した(石原)さとみちゃんとはまた違う瀧子役を萌音ちゃんは作ってくれるだろうと思います。何の心配もないですね。
そして土屋さんにも非常に期待しています。今回土屋さんが演じる刑事役を前回演じていた山崎一さんは、この役を非常に愛されていたのですが、若い刑事で、彼が多喜二に会って考え方を変えていくという設定もあって「自分じゃないほうがいい」とおっしゃっていたんです。もっと若い人がやった方がいいという意味でね。そう思うくらいこの作品を大切にしてくださったその想いを皆で受け継いでやっていきたいと思います。演じる人が変わっていってもこの作品が伝えていかなきゃならない事は変わらないですから。

 

左から)井上芳雄、石原さとみ (c)渡部孝弘

左から)井上芳雄、山崎一、山本龍二 (c)渡部孝弘

 

――この作品は「音楽劇」という事で、様々な楽曲があります。美しく切ない「胸の映写機」や全身から魂を放つような「伏せ字ソング」まで。これらを歌う際、音楽を担当された小曽根真さんとどのようなやり取りがあった上で歌っていましたか?

初演の時は井上先生が歌詞を書いた傍から小曽根さんが次々と作曲をされていきました。歌詞が生まれた瞬間から、その日の夕方にはもう曲が出来ていて。僕もその場に立ち会わせていただき、影響を受けていましたね。小曽根さんはジャズ畑の人だったので、その日の僕らの芝居に合わせて演奏を変えてきたり、時にはあるフレーズがなかったりしたこともありました。ずっとこっちが歌い出す様を見て演奏しているんです。まさにジャズのセッションのようでした。
小曽根さんもこの作品の出演者の一人です。彼がいなければこの作品は成立しなかった。再々演の今回も「落ち着く」という事はきっとないですね。毎回新しい刺激を受けながら歌っていく事になるかなと(笑)。

 

――ちなみに井上さんが一番お好きな楽曲は?

やはり「信じて走れ」です。テーマソングであり、歌い出す前の台詞から歌に繋がる流れもすばらしくて。瀧子が唯一多喜二に触れて「絶望すな!」と声をかける。これは井上先生のメッセ―ジだと思っています。絶望から希望に繋いでいきたいという強い願いが込められているんです。

 

 

■今こんな時代だからこそ上演したい作品

――再々演にあたり、今回『組曲虐殺』を、そして小林多喜二をどう作っていきたいですか?

初演の時、演出の栗山民也さんに「プロレタリア作家なんてそんなもんじゃないんだ!」って言われたのですが、最初はその意味が分かりませんでした。「プロレタリア作家って何だろう」って。でも今ならその時よりは知識も理解も分かるようになってきて、それがにじみ出るように演じたいです。経験も増え、台本に書かれている事をビビットにお伝えできるようにしたいです。

今の世の中がこの作品に描かれている時代に近づいてきたという残念な現実があります。初演の時は「こんな時代があった。でもいつ今の時代もこの作品の時代に逆戻りするか分からないね」なんて想像で言っていましたが、結構な現実味を帯びてきてしまった。だからこそ、時代の流れからこういう事実が起きてしまったという事を伝え、それで何を思うかはそれぞれの自由だと思うんですが、井上先生は二度とこんな時代に戻る訳にはいかないっておっしゃっているに違いなく、そんな未来を見越してこの作品を書かれたのだと思います。

 

 

【プロフィール】

井上芳雄(いのうえ・よしお)

大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役で鮮烈なデビューを果たす。その高い歌唱力と存在感で数々のミュージカルや舞台を中心に活躍。井上ひさしの遺作となった『組曲虐殺』では主役を演じ、2017年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』にも出演する等、ストレートプレイにも挑戦。一方でCD制作、コンサートの音楽活動も意欲的に行い、近年ではテレビ・映画等映像にも活躍の幅を広げ俳優として高い評価を得る。 2017年4月よりBS-TBS『美しい日本に出会う旅』のナレーションのひとりを務めるほか、自身初のレギュラー番組としてTBSラジオ『井上芳雄 by MYSELF』がスタート。また2017年4月29日から、ミュージカルコメディ『グリーン&ブラックス』(WOWOW)がOA。

 


 

【公演概要】

『組曲虐殺』

[作] 井上ひさし
[演出]栗山民也
[出演] 井上芳雄 上白石萌音 神野三鈴 土屋佑壱 山本龍二 高畑淳子
[ピアニスト]小曽根 真
[東京公演]
公演日:2019年10月6日(日)~27日(日)
会場:天王洲 銀河劇場
※福岡・大阪・松本・富山・名古屋公演あり

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