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ミュージカル『生きる』稽古場レポート

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2020年9月23日(水)

2018年に初演されたミュージカル『生きる』。世界中に熱狂的ファンを持つ黒澤明監督の傑作映画『生きる』を原作に、演出家・宮本亞門をはじめとする世界的クリエイターチームが結集して作り上げたオリジナル・ミュージカルの金字塔だ。

自分の余命を知った定年間近の冴えない男が、残りの人生で自分に出来ることはないか、真に「生きる」とはどういうことかに向き合っていく。何しろ「一人の男が死んだ」ところから物語が始まるだけに、シリアスかつ重厚な舞台を想像する人も多かったかもしれないが、ジェイソン・ハウランドによる多彩な曲調の音楽も相まって、蓋を開けてみれば思っていた以上の軽やかさや明るさ、笑いもふんだんに盛り込まれた大感動作が誕生したのだった。開幕するや口コミで評判が広がり、日に日に男性客も増えていった客席の光景とカーテンコールの熱狂は、いまだに語り草になっている。

何より主人公をダブルキャストで演じた市村正親、鹿賀丈史という日本のミュージカル界を代表する“レジェンド”二人が作り上げた人物像はそれぞれ全く違う味わいの深さで、思わず涙腺が崩壊する一幕最後の〈二度目の誕生日〉をはじめ、洗練された名ナンバーに心を揺り動かされずにはいられない。

あれから2年。待望の再演が決定し、開幕まで1ヶ月を切った稽古場では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため細心の注意を払った対策が取られていた。スタジオ入口での検温に始まり、内履き・外履きエリア区別の徹底、体温感知システムの設置、共用物の撤廃、1時間に1回程度の定期的な換気&消毒タイム。休憩中も密を避け、私語は極力控えているため、実に静かな稽古場だ。もちろん稽古中もキャスト陣はマスクやマウスシールドを常に着用。台詞を言い、歌を歌い、ましてやダンスもある場合には相当な負荷がかかるだろうに、稽古を重ねるうちに慣れるものなのか……。

演出を手掛ける宮本亞門

などと思っていると、稽古が始まった。今日は市村バージョンの日。初演では主人公の渡辺勘治とストーリーテラーでもある小説家は、市村正親&小西遼生、鹿賀丈史&新納慎也の固定コンビだったが、今回は小説家役もシャッフルで両バージョンに出演する。つまり4パターンの渡辺&小説家コンビが見られるわけで、組み合わせの妙の楽しみも倍増するというわけだ。

市村×小西ペア。勘治×小説家のペアは4パターン

鹿賀×新納ペア

稽古していたのは、渡辺が一念発起し、主婦たちの声に応えて公園を作ろうと奮闘し始めてからの場面。ヤクザ連中の妨害に遭って渡辺はボコボコにされてしまうのだが、市村が立ち位置について「(前回は)ここじゃなかった?」と違いを指摘すると、その記憶が正しかったことが判明。今回初めて稽古するシーンのはずだが、身体に初演の記憶が刻み込まれているとはさすがだ。

小西演じる小説家、May’n扮するとよを前に渡辺がしみじみと歌う〈青空に祈った〉を、市村はピアノ前に移動してテンポを確かめながらもう一度歌ってみる。前回の感覚を思い出す一方で、今の感覚で違和感がないか、あるなら原因はどこにあるのか、わずかな違和感もおろそかにせずに微調整していくのだ。演出の宮本も、芝居から歌へとよりナチュラルに移行できるように、前奏の長さを音楽監督と相談しながら微調整し、「こんな感じでいけそうですね」。

こうしたマイナーチェンジの積み重ねが、初演の再現ではなく、2020年の今しか出来ないミュージカル『生きる』を誕生させていくのだな……と、短い場面にその一端を垣間見た気がした。

また別の日、今度は鹿賀バージョンの稽古を覗かせてもらう。渡辺の自宅場面では、今回新たに渡辺の息子光男役で参加する村井良大と、その妻一枝を演じるMay’nが、突然家に帰らなくなった父をめぐってちょっとした言い争いになる。父親を思う光男の〈あなたに届く言葉〉は、今回改訂されたニューバージョンだ。母を早くに亡くし、父と息子二人で肩寄せ合って暮らしてきたはずなのに、いつ心がすれ違うようになったのか……。そんな切なさや息子としての苦悩が鮮明に伝わるバラードで、宮本から村井には「お母さんの遺影を一瞬見てほしい」とリクエストが。ここで光男が手に取り眺める父親の帽子が、後々大きく効いてくる。

立体的で動きのあるセットにも注目

ガラリと変わって今度はどこぞの料亭シーン。実は裏で結託している役所の助役(山西惇)とヤクザの組長(川口竜也)という、どっからどう見てもワルそうな二人が酒を酌み交わしながら歌う(これも今回追加されたナンバー)……って、絵に描いたような「おぬしもワルよのう」的場面だ。こういう息抜き箇所があちこちあるのがこの作品の魅力でもあり、そこへふすまを開けてずぃーっと鹿賀勘治が入ってくるだけで可笑しくてたまらない。「公園を作りたい」渡辺と、「作らせたくない」助役のコミカルな攻防も見ものの一つ。無茶をする渡辺をひそかにサポートする新納演じる小説家の心配ぶりは、もはや息子以上か。小西版小説家との渡辺に対するスタンスの違いも明確で面白い。う〜む、これはやはり渡辺&小説家の4パターン全て制覇するしかないではないか。

市村版ではMay’nが、鹿賀版では唯月ふうかが演じるとよは、渡辺に「生きることの意味」を図らずも気づかせる重要な役割を担う。溌剌としたマイペースぶりがまぶしい彼女は、近所の主婦たちとも顔なじみ。とよと主婦たちが歌う〈夢はつかみとるもの〉は、渡辺の尽力で公園が出来ることを知って喜びを爆発させるパワフルなナンバーで、彼女たちの喜びが伝播してこちらまで胸が熱くなってくる。

と、ほんの少し覗いただけでも、初演の感動が鮮やかに甦ってくる。そればかりか芝居も歌も初演をなぞることは一切せず、どんどん進化していく様子を目の当たりにできた。ラストに向けての展開は映画を観てご存じの方も多いかもしれないが、残された人生の短い時間を自分なりに精一杯生き切った渡辺勘治という男の輝きは、年齢も性別も問わず、観る者全ての心に深く美しく刻み込まれるに違いない。前回感激した人も、今回初めてという人も。ぜひ渡辺の生きる姿を見届けてほしい。きっと生きる力が湧いてくるはずだ。

(文:市川安紀/撮影:宮川舞子)


 

【公演概要】
ミュージカル『生きる』


期間:2020年10月9日(金)~10月28日(水)
会場:日生劇場
出演:市村正親 鹿賀丈史
村井良大 新納慎也 小西遼生 May’n 唯月ふうか 山西 惇
作曲&編曲:ジェイソン・ハウランド
脚本&歌詞:高橋知伽江
演出:宮本亞門


他、以下地方公演あり

<富山公演>
期間:2020年11月2日(月)~3日(火祝)
会場:オーバードホール
主催:チューリップテレビ/イッセイプランニング
お問い合わせ:イッセイプランニング
TEL:076-444-6666 (平日 10:00~18:00)

 

<兵庫公演>
期間:2020年11月13日(金)~14日(土)
会場:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
主催:梅田芸術劇場・兵庫県/兵庫県立芸術文化センター
お問い合わせ:梅田芸術劇場
TEL:06-6377-3800 (10:00~18:00)

 

<福岡公演>
期間:2020年11月21日(土)~22日(日)
会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール
主催:博多座/RKB毎日放送
お問い合わせ:博多座電話予約センター
TEL:092-263-5555(平日 11:00~15:00  土日祝・休)

 

<愛知公演>
期間:2020年11月28日(土)~30日(月)
会場:御園座
主催:御園座/中日新聞社
お問い合わせ:御園座
TEL:052-222-8222 (10:00~18:00)

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