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「初演は必死すぎて記憶が飛んでます!」~『フランケンシュタイン』柿澤勇人×小西遼生~
2019年12月26日(木)
2020年1月8日(水)より、ミュージカル『フランケンシュタイン』が待望の再演の幕を開ける。
現在稽古真っ最中だが、ビクター/ジャック役を務める柿澤勇人と、アンリ/怪物役を務める小西遼生に話を聴いた。マジメな話からゆるふわな話まで、是非お楽しみください。
取材・文・撮影/こむらさき
――いきなりですが柿澤さん!以前Twitterで「3年前の身体に戻してやる」という発言がありましたが、今現在何%くらいの仕上がりでしょうか?
柿澤:え~と、30%くらいかな(笑)?
小西:カッキーは身体を作り込む必要ないでしょ?(笑)
柿澤:確かに。脱がないしね(笑)!でも見せる身体というよりは体力的な面で作り込みたいです。やはり3年も経つと体力が落ちていると実感したので。この芝居では結構な割合で叫んだり暴れたりするので、それが出来る身体には戻さないとね。
――一方、小西さんの身体作りは何%まで仕上がってますか?
小西:本番に向けてジムなどで鍛えています。
■初演の記憶が……ない!?
――改めて『フランケンシュタイン』の初演について振り返りを。この作品はどのような感触、印象でお二人の身体に残っていますか?
柿澤:(しばらく考え込む)何人もの人が死んでしまう訳ですからね。カロリーが高い曲も多かったので、結構しんどかったなという思い出があります。とはいえ、感情を出しやすい曲、エネルギーを出しやすい場面もあったので、大変だったけど役者としては楽しめたなと思いますね。
小西:他の作品ならば3年前の事は割と覚えているのに、この作品については「こんなんだったっけ?こんなにしんどかったっけ?」と思うくらい新しい作品と向き合うような感覚がありますね。
――その感覚は初演で一度“昇華”してしまったからでしょうか?
小西:“昇華”というより必死だったので、あまり記憶にないのかも。特に2幕の事とか全然覚えてなかったですから(笑)。
柿澤:(苦笑いしながら激しく頷く)
小西:もちろん、冷静な感覚も持ちながら舞台に立ってはいますが、体力的な大変さも含めて「もう無理!!」ってところまでやりきった作品だったから。初演の時は手探りの状態だったので稽古の段階では「これ、通しで最後までできるのかな?」と思っていた気がします。再演となった今はすでに大変な作品だという事を知った上で、今から気持ちを持ち上げていかないと、と感じてます。
――柿澤さんも同じ想いでしょうか?
柿澤:ええ。再演って何回か稽古をしていくうちに「そうだそうだ」って思い出すんですが、この作品ではそれが全然なくて。動線も他の作品なら覚えているんですが、「あれ、こっちに行っていたっけ?」とか「次のシーンはなんだっけ?」という不思議な感覚にいます。
■2幕のジャックは普段通りの柿澤勇人です(笑)
――そんな演者の記憶も吹き飛ばすくらいの衝撃だった、ビクター役について柿澤さんはどのように作り上げていかれたんですか?
柿澤:とっかかりは“純粋に世界を変えてみたい”という天才科学者としての自惚れ。そして同じく天才の友人アンリが出来たという事でさらに“神になる”“俺が世界を変えてやる”という考えを強くしていって。でも常人ではない危うさも持っていないとならないし、その後絶望に落ちてかわいそうな人になってしまう……そんな人物を組み立てていました。
――ビクターという人物について、柿澤さん的に理解できる点、どうしても受け入れられない点はありますか?
柿澤:親友がいてそいつが本当に大変なことになったら、何を置いても駆けつける。恋愛ではなく強い友情を感じていた点は理解できますが、アンリの頭をもぎ取って再利用するところはさすがに……理解不能ですね(笑)。
――小西さんにも同じ質問を。アンリという人物をどのように作っていったんですか?
小西:言葉で説明するのは難しいですが、ただの友情関係だけではなく、ビクターが生命創造を実現する為の最後のファクターとしての人物像を作りたいと考えていました。ビクターが生命を生み出す動機となり得る、唯一理解し合える存在でありたいなと。
――柿澤さんから見たアンリ/怪物役のお二人(加藤、小西)について、小西さんだからこそ感じる魅力はどんなところにあるのでしょうか?
柿澤:(小西)遼生の場合、芝居として物語を成立させようという気持ちが強いなと思っています。僕もそう思っていますが、その共鳴の仕方が近いなと。以前やった『スリル・ミー』で、同じ役を演じた事があるんですが、一瞬一瞬のモーメントの取り方が遼生は凄く細かかったんですが、そこには理由や動機があってそれが凄く理解できる。一緒にやっていてともに進んでいるという感覚が強かったんです。だからこの作品でアンリが死ぬシーンも凄く悲しくてどうしても生き返らせたいという気持ちに自然となりましたね。また、怪物になってからも凄く悲しくて、最後の絶叫の時も自然と涙が出ましたね。
(加藤)和樹の怪物はかっこよくてガタイもいいので、付いていきたくなる感じ。本当は自分が引っ張っていかなければならないんですが、和樹の場合はコイツについて行ったら面白い景色が見えるんじゃないか、まるで弟になったみたいな気持ちですね。
――逆に小西さんから見た柿澤ビクター/ジャックならではの魅力はどんなところにありますか?
小西:綿密な芝居心と狂気性ですね。勇人とアッキー(中川晃教)それぞれから受けるものが異なるので相手によって気持ちも変わりますが、勇人からは芝居からも本人のエネルギーからも沢山の情報を受け取れます。特に怪物は受けた事に対して想いが増殖する役なので、ジャックに虐げられれば虐げられるほど、その後にビクターに対する復讐心も強くなるんです。勇人のジャックにはそれはもう酷い扱いを沢山されるので、因果応報でそれをビクターにお返ししています(笑)。
――柿澤さんといえば2幕のジャック役の振り切れっぷりが話題となりました!
小西:あれは普段通りです。
柿澤:(爆笑)。よく言われます。初演の時、鈴木裕美さんが観にいらしたんですが、あとで「2幕のアレ(柿澤のジャック)、普段通りじゃない?」って言われました。「そんな事ないよ!」って抵抗しましたが(笑)。
小西:周りは意外と勇人の事を良く見ているからね。普段は確かにあそこまで自分を出していないし、隠しているけど、ああ見えているよって言ってます(笑)。
柿澤:(爆笑)。
――ちなみに、あのジャックはどこまでが台本通りで、どこからがアドリブなんですか?
柿澤:(笑)。初演の時は狂気を徹底的にやってやろうと思って、アドリブも入れつつやっていたんです。今回の再演ではもっといたぶる姿を入れて「こいつ、怖いな」と思ってもらえるようにしたいなと考えています。おちゃらけながらヒトを虐げるのは怖いし気持ち悪い。そこにもう少し怖さを入れて、コイツは何を考えているんだろう!?と思わせたいんです。ビクターとは狂気の方向性が違うけれど、根底にあるものは似ていると感じています。怪物にとってはアンリ時代の記憶はないけれど、ジャックは単なる嫌な人なだけではなく、何か引っかかる存在になりたい。そんな事を演出の板垣恭一さんと相談している最中です。
■再演の見どころは?
――いよいよ再演ですが、初演で観たお客様、そして今回初めて観るお客様にとってどういったところを楽しんでいただきたいですか?
柿澤:単純に一人二役やる事はあまりないと思うので、役者のいろいろな色が見えるところも見どころですね。また歌もあり得ないくらいフルレンジ(低音域から高音域まで)で歌い上げます。こんなに壮大な曲をたくさん歌い上げる作品はそうそうないと思うんです。そして物語についても友情が残酷なまでの悲劇に変わる点も楽しんでいただきたいです。
小西:中川、柿澤、加藤、小西というペアの組み方一つでもいろいろな物が見えると思います。この作品は悲しく怖い話ではあるんですが、思わず息をのんでしまうシーンが沢山あります。感動したり不気味で怖かったりと理由は様々ですが、思わずその空気に飲まれてしまう、息を飲んでしまうような魅力がある作品なのでぜひその感覚を体感していただきたいです。
■クマ、オイシイ!?
――最後に今お二人が着ている熊Tシャツの感想も教えてください!着心地はいかがですか?
柿澤:サイズ感が凄くいいですね。
小西:これ、熊サイズってことでXLサイズオンリーなんだよね。
柿澤:そうだったんだ!初めて知った!
小西:このフォントとか、熊のイラストのチョイスとか、最初は「?」って思ったんですが、今はこのふてぶてしい表情が悪くないなと思ってます。
柿澤:まあ作品の特徴をよく捉えていますよね(しれっと)。
小西:嘘つけ(笑)。熊なんて言葉、一瞬しか出てこないから!しかし、なんとなくイラっとするTシャツなんだよなあ。「イラT」って呼ぼうかな(笑)。
柿澤:(笑)。
【公演概要】
音楽:イ・ソンジュン
脚本/歌詞:ワン・ヨンボム
潤色/演出:板垣恭一
出演:中川晃教/柿澤勇人、加藤和樹/小西遼生
音月 桂、鈴木壮麻、相島一之、露崎春女 ほか
<東京公演>
期間:2020/1/8(水)~1/30(木)<31公演>
会場:日生劇場
※愛知公演・大阪公演あり
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