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新生デスミュへの道 Vol.1~新W夜神月&新エル始動!
2019年8月2日(金)
始動! 新W夜神月&新エル、スーパー音楽監督による歌稽古に挑む!
オール新キャスト、主役のひとりは初舞台の新星、東京公演の会場は新劇場――。再演とはいえ“新”づくしの『デスノート THE MUSICAL』は、まさに「新生デスミュ」の名が相応しい一大プロジェクト。2020年1月の開幕に向け、2019年6月には既に始まっていた“Road To デスミュ”を、ホリプロ・ステージでは連載形式でお伝えしていく。第1弾となる今回は、村井良大&甲斐翔真(月)、髙橋颯(エル)が臨んだ歌稽古の様子をレポート!
取材・文/町田麻子
■村井の高音に合わせてキーチェンジ!?
本作で編曲・オーケストレーション・音楽監督を務めるのは、日本オリジナルミュージカル『生きる』などの作曲家として高い評価を得る一方で、フランク・ワイルドホーンの“懐刀”としても知られるジェイソン・ハウランド。ワイルドホーン作品のアレンジャーとして、そしてその難易度の高い楽曲をキャストが歌いこなせるよう導くボーカルトレーナーとして、確かな手腕と実績を誇る人物だ。日本のミュージカル界にも、彼の指導によって新たな声が出せるようになった役者は数知れず――。そんな彼が新生デスミュのために来日し、ともにワイルドホーン作品初挑戦となる3人に稽古をつけた。
まずは、新・夜神月の村井良大。自己紹介を求められた村井は、これまでに演じてきた役柄を、通訳に頼らず自ら英語でジェイソンに伝えていく。彼が『RENT』のマーク役だったと知ると、「これ?」とばかりにワンフレーズをポロロンとピアノで弾いて見せるジェイソン。また、『ネクスト・トゥ・ノーマル』のヘンリー役と聞けば「幽霊じゃないほうだね」と笑うなど、最初から和やかな雰囲気だ。だがもちろん、これはただの世間話ではない。「ということはテノールか。今日練習する曲は、ちょっとキーが低いかもしれないね」と、早くもクリアすべき課題を理解した様子でテーマソング《デスノート》のイントロを奏で始めた。
「♪これは夢か 現実なら 僕はもう…」と、ジェイソンの伴奏に合わせて歌い出す村井。経験豊富なだけに、また既に日本側スタッフとの歌稽古は積んできていることもあり、緊張する様子もなく淡々と歌いこなしていく。すると少し聴いたジェイソンから、「もしかしたらキーを上げたほうが歌いやすいんじゃない?」と提案が。村井が同意すると、すぐさま半音上げたバージョンを試し、「やっぱりこっちのほうが合ってるね。稽古をしてみて合うほうでやろう」。新生デスミュ、もしかしたら村井の回では、これまでとは少々異なる音色の《デスノート》が聴けることになるかもしれない。
新たなキーで歌声を聴かせる村井に、「フランクの楽曲は歌い上げるところよりも、その前の段階でエネルギーを使ったほうが歌いやすいんだ」「低くなるところも、落ち着くんじゃなく上に上にと意識して」などと、自ら歌って示しながら具体的なアドバイスを送っていくジェイソン。最後には、「声もピッチも母音への行き方もいい。何の心配もないね!」と太鼓判を押した。その言葉には村井も「Really!?」と、驚きつつも嬉しそう。
■見た目も声質も対照的な甲斐と髙橋
続いては、オーディションで大抜擢されたもうひとりの新・夜神月、甲斐翔真。その力強く情感豊かな歌声は“逸材”と呼ぶに十分だが、ミュージカルとなると初挑戦なだけにやはりまだ伸びしろの塊で、その分ジェイソンの手腕が冴えわたる。伸ばす音では、子音はフィンガースナップのように一瞬で通り、すぐに母音に行く――。ジェイソンの指示を受けて歌い直すことで、見違えるように伸びやかな《デスノート》になっていくのだ。
新エルの髙橋颯は、《ゲームの始まり》《揺るがぬ真実》《ヤツの中へ》の3曲をレッスン。髙橋の歌声を聴いたジェイソンからまず送られたのは、「劇場用に大声を出す必要はないよ、ポップスシンガーのままの君の歌い方で」というアドバイスだった。その一言で、髙橋の個性とエルらしさがグッと押し出されて逆にドラマティックになり、「こっちのほうがラクです!」と本人も笑顔に。その後もポップスとミュージカルの違いを説く場面が多く、ジェイソンが髙橋の普段の活躍を知った上で指導に当たっていることが分かる。
最後には、甲斐と髙橋が《ヤツの中へ》を合同レッスン。この日が初対面ということで、軽く握手を交わしてから声を合わせ始めた二人は、見た目も私服も声質も、そしてレッスンに臨む態度も対照的だ。「“で”は“DEH”じゃなく“DAY”のつもりで」「高いキーを歌う時は笑顔のイメージで」「低い音の上に座っちゃうと次の高音に行きづらいよ」……ジェイソンからの様々なアドバイスを、頭に叩き込むかのように譜面に書き留める甲斐と、身体に沁み込ませるようにして何度か実践する髙橋。どちらのやり方でも消化していることに変わりはなく、若さあふれる二人の《ヤツの中へ》は、回を重ねるごとに迫力を増して行った。
3人それぞれに合った指導をするなかで、ジェイソンが共通して強調していたのは、やはり母音の話。言葉を伝える必要があるミュージカルでは、ポップスと違って伸ばしにくい母音がフレーズの最後に来ることがある。そこで子音を「トランポリンのように」使い、すぐに母音に到達することが重要になるというわけだ。今回のレッスンで既にコツを飲み込んだ様子の3人が、本番までの間にどこまでこの技を習得できるか、乞ご期待。また、この日の成果を本番に先駆けて披露する機会も予定されているので、そちらにもご期待いただきたい。
【プロフィール】
2008年、ドラマ「風魔の小次郎」でデビュー。「仮面ライダーディケイド」に出演し、人気を博す。現在、テレビや舞台で活躍中。近年の主な出演作品は、舞台『魔界転生』『あなたの初恋探します』『99才まで生きたあかんぼう』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』『アイ ワズ ライト』『キム・ジョンウク探し あなたの初恋探します』『SHOW ル・リアン』『RENT』他。映画「TOKYOデジベル」「真田十勇士」「ドクムシ」他。今年5月、主演映画「最果てリストランテ」が公開となる。6月「私の頭の中の消しゴム11th letter」、10月「ラヴズ・レイバーズ・ロスト―恋の骨折り損―」主役の出演が控える。
甲斐翔真(かい・しょうま)
公式HP/Twitter/Instagram
2016年「仮面ライダーエグゼイド」でドラマデビュー。その後「花にけだもの」「覚悟はいいかそこの女子。」「ゼロ 一獲千金ゲーム」「電影少女-VIDEO GIRL MAI 2019-」、映画『写真甲子園 0.5秒の夏』『君は月夜に光り輝く』ほか話題作に立て続けに出演。本作が初舞台・初ミュージカル・初主演となる。
髙橋 颯(たかはし・ふう)
公式HP/Twitter/Instagram
2018年9月よりソロシンガーとしての活動を本格的にスタート。同年11月7日に1st EP『WHITE』をリリースしてデビュー。iTunes総合アルバムチャートで4位を獲得。2019年3月20日に2nd EP『STEP』をリリースし、全国各地のショッピングモールでのイベント出演や、MACOツアー『交換日記 + BEST LOVE MACO TOUR 2019』にオープニングアクトとしての出演。透明感と優しさを合わせ持つ歌声で、大人へと成長する等身大の恋や葛藤を歌う。
★<新生デスミュへの道>連載一覧★
~特別編~ブロードウェイのクリエイター、 音の魔術師ヒロ・イイダにインタビュー
【公演概要】
<東京公演>
期間:2020年1月
会場:東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
※ほか地方公演あり
主催:日本テレビ、ホリプロ
企画制作:ホリプロ
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