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濱田めぐみ「ミュージカルをやるために生まれてきた」|ホリプロステージ・インタビューシリーズ《現在地》
2020年12月25日(金)
ある俳優のこれまでとこれからにクローズアップするインタビューシリーズ《現在地》。
□ □ □
1996年に劇団四季『美女と野獣』ベル役でデビューして以来、約四半世紀を舞台、それもほぼミュージカル一筋に歩んできた濱田めぐみ。これまでの作品を振り返りつつ、爆発的な表現力の源、そして今の思いを探る。
(取材・文:三浦真紀)
▼インタビューダイジェスト
東京公演日程:
2021/3/12(金)~3/28(日)
会場:東京国際フォーラム ホールC
ほか名古屋、大阪公演あり。
#1
ミュージカル、
それが自分の生きる意味。
――ミュージカル界屈指の歌姫として、歌の上手さにはいつも圧倒されます。
そうですか?決して上手くはないと思いますよ。役で歌うのが性に合っているのと、テクニックの勉強をしたことがあるだけ。歌が上手い方はたくさんいらっしゃいます。
でも、なぜ皆さんがそうおっしゃってくださるのかを考えると、役のリアリティと曲、皆様の共感度が一致しているのかもしれませんね。特にビッグナンバーは1幕の終わりや2幕のクライマックスに出てくるじゃないですか。ちょうどお客様が役に自分を投影したり、思いを乗せながら作品に埋没している頃。
そこで上手い具合に私のキャラクターや声質がはまって、気持ちが何倍もに増幅するんじゃないでしょうか。
――いわゆる歌手の方みたいに歌を歌うことと、ミュージカルの劇中で歌うのは、感覚的には違うものですか?
真逆ですね。まず役を体に蘇らせる。自分がその作品のキャラクターになり、そのシーンまで辿り着いて歌う。1曲歌うにしても本当に大変!普通の濱田めぐみが頑張って歌うと、ものすごく消耗するんです。
――それでも、ミュージカルをやり続ける意味とは?
舞台で役を演じること以外、私は何もできないということが判明したんです。かつ、それが性に合っている。私が生きている意味ってこれしかないのねと、つい最近悟りました。他につぶしがきかないんです。例えば、人に教えることが喜びや生業になるタイプではない。舞台上にいるために人生の時間を使うのが自然なんです。ミュージカルをやるためだったら生まれます!って、神様と約束したのかも(笑)。
#2
『メリー・ポピンズ』のメリーを
演じて気づいた、 自分の本質。
――濱田さんといえば、『ウィキッド』のエルファバ、『アイーダ』のアイーダ、『アリス・イン・ワンダーランド』の帽子屋、『デスノート THE MUSICAL』のレム、『メリー・ポピンズ』のメリーなど、架空のキャラクターを演じるのがお得意なイメージです。
架空の人の場合、そこにいれば実在になりますから。
なかでも『メリー・ポピンズ』のメリーは演じていて、ストレスや違和感が全くありませんでした。大変だったけど、私の本質にはドンピシャ!ちょっと人間離れした宇宙人っぽさと、子供たちと距離があるのかないのかわからないながら、すごく仲良く付き合えるところとか。
2018年上演『メリー・ポピンズ』_ミュージカル「メリー・ポピンズ」舞台写真(C) Disney / CML
私、普段の心の居場所や、人との距離のとり方がメリーに近いんですよ。バンクス夫妻や子供たちとの距離感を、普段の私のまま自然に演じたらドンピシャで、ああ、私は普段、メリーみたいな距離のとり方で人と接しているんだなって気づきました。
性格的にも似ているんだと思います。何か考えていると違うことを同時に考え始めるところとか。よく誰かと喋っていて、同時に考えていることを言っちゃって、「何?」「ごめん、今、2つ一緒に考えてた」って(笑)。メリーもそういう思考の仕方をするんです。
2012,14年上演『アリス・イン・ワンダーランド』 _2014年舞台写真 撮影:渡部孝弘
2015年『デスノート THE MUSICAL』_(C)大場つぐみ・小畑健/集英社
――では、これまで演じられたあらゆる役の中で一番フィットしたのはメリー?
はい。無理なくできるという意味で。よく、アイーダやエルファバがはまり役だと言っていただきますが、はまり役と自分がその役で心地よく居続けられるのはちょっと違いますね。
“ハマる”というのは一生懸命に演じるうちに、役にズボっと入って、その存在になれる。それって入るのも大変、出るのも大変なんです。だったら公演期間は入り続けたままでいよう!とトライしたのがアイーダの時。でもこのままじゃしんどいかもと感じて、エルファバの時は出たり入ったりを繰り返していました。
その点、メリーは衣裳を着ると、そのままふわっと入っていけたんですよ。自分でも、まさか!と驚いたほど。きっとタイミングなんでしょうね。メリーとはキャリアや年齢、見え方や声の質など、あらゆることが合っていた気がします。
#3
変化した意識の方向性。
観た人の人生が変わるような作品に
携わりたい。
――濱田さんの中で、最近変化したことはありますか。
携わりたい作品の選択でしょうか。
観てくださる方が内面の旅に出たり、自分を見つめ直したり、生きる意味を感じ取れる作品を選ぶようになりました。劇団四季でデビューしてしばらくは、喜びや笑いを提供して、皆さんがハッピーになれればと思っていたもの。
だけどアイーダやエルファバなど、自分の存在価値を考える役が増えた頃から、作品を観た方の気持ちがどう変わるか、その方の人生がどう変わるかを意識するようになりました。最近は、それが加速している感じ。
――本能的にこれをやりたい!と思った作品は?
『レ・ミゼラブル』は上京した時から観ていて、ずーっとエポニーヌをやってみたいと思っていたけれど、その年頃は過ぎてしまい…。それでもご縁があって、2019年からファンテーヌを演じることができました。正直、『レ・ミゼラブル』に関しては、どの役でもよかったんです。とにかく出たくて仕方がなかった。
実際に出演している間もときめきすぎて、袖の邪魔じゃない位置でずっと観ています。「レミゼ」のキャストはみんなそうなんですよ。
――『アリージャンス〜忠誠〜』では日系二世のケイ役を演じられますね。福田雄一演出のドラマ「親バカ青春白書」では前田のおばちゃん役が印象的でしたが、舞台で市井の人を演じるのは珍しいのでは?演じる時に心構えが変わったりするものですか。
そんなには変わらないと思います。
ただケイに関しては、日系人であり、根っこに日本人の魂を持っていることがポイント。アメリカ人らしく、フランス人らしくというのは日本人の目から見てわかりやすい気がするけど、日本人が日本人を演じる?と考えた時、これまで自分が日本人であることを意識したことがなかったなと改めて思いました。では、世界から見た日本はどう見えるんだろう?という発想に切り替えて、今、考えている最中です。
同時に、私らしく自然にいられたらいいかな、とも。
3月上演『アリージャンス~忠誠~』濱田は主人公のケイを演じる。
――ケイはどんな性格の女性ですか。
アメリカで生まれ育ち、お母さんが亡くなった後は母親代わりとして家族の世話をしてきました。
ところが第二次世界大戦が激化したことにより、家族全員が収容所送りになってしまうわけです。口には出しませんが、ケイにはなぜ私が母親代わりにならなければいけない?と思う部分と、私しかいないから仕方ないという部分があるような気がして。
そんな閉塞感を感じ、もっと自由に生きてみたいと思っていたところ、自由をもがれた収容所で活動家であるフランキーと運命の出会いをするわけです。
――彼が捕らえられて連邦刑務所に送られたことで、ケイは立ち上がる…。これは濱田さんの役だと思いました。『メンフィス』や『ボニー&クライド』でも闘っていましたね。あの説得力を持って闘う力はどこから湧き上がるものですか?
舞台上にいると、次元というか空気感が違うんです。
2011年上演『ボニー&クライド』_撮影:渡部孝弘
ものすごく密な状態で集中力が高まり、張り詰めた状態になる。次元が違うところに自分を置くんですよ。水中に入っていくような、スンって入る瞬間があるんです。そこにたどり着くにはものすごい体力と精神力が必要で。
ただ、明らかに自分が違う次元にいるなぁって、その違う次元にいる自分をお客様が観てくださっている実感はすごくあります。
あれは舞台の魔法ですよね、きっと。
――『アリージャンス〜忠誠〜』ではお客様に何をもたらしたいですか。
日本人であることの忠誠と誇り、その意味をもう一度確認する機会になったらいいなと思います。今、世界が大変な時じゃないですか。良きも悪きも様々な力が拮抗して、混沌として、暴かれたり蓋をされたりする時代。地球の住民として、また日本に住む一人として、足元を見つめ直していただけたら嬉しいです。
#4
「やりたいことないの?」
「わかりません!」
役のことにだけに集中していました。
――家での濱田さんはどんな様子ですか。舞台での濱田さんと違う?
四季にいた頃は年間350ステージくらいやっていたので、家はご飯を食べてお風呂入って寝るだけの空間で、それが15年続きました。テレビも見ないし、誰が流行ってるとか、どんな食べ物が好きとか、全くわからなかったです。
「やりたいことないの?」って聞かれて「わかりません!」と答えていたんですよ。それくらい役のことにだけに集中していました。
今は好きな食べ物も好きなこともちゃんとあります。「あつ森※」はもう飾る空間がないくらい、充実しています(笑)。
※大ヒットゲーム「あつまれ どうぶつの森」。動物たちの暮らす島に移り住み、自分好みの生活を送ることができる”やりこみ系”ゲーム。Twitterで「あつ森」の成果を報告。
Practically perfect❗️ pic.twitter.com/ej7MUaa5CZ
— 濱田めぐみ (@megumihamada) August 22, 2020
――ではこの先、やりたいことは?
今までしてこなかった、いろんなことに積極的に挑戦していきたいです。ストレートプレイもやってみたいですし。
声を使う仕事が好きなので、ナレーションや声優の仕事には興味津々。最近、声優の方たちと仲良くなる機会が多くて、お話しするうちに声で表現するってすごい!と思うようになりました。テクニックが半端ないんですよ。
声の持つエネルギーは音楽と同様、素晴らしいものがあるので、ぜひやっていきたいです。
最近ではドラマ、声優、ナレーションなど、仕事の場がどんどん広がりつつある濱田さんですが、舞台で役を演じることが生きる意味だと言い切るブレなさはさすがです。
25年の経験をもとに『アリージャンス〜忠誠〜』でケイとしてどのように生きるのか。これからの活躍に要注目です。
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【公演概要】
<キャスト>
濱田めぐみ
海宝直人
中河内雅貴
小南満佑子
上條恒彦
今井朋彦
渡辺 徹
照井裕隆
西野 誠
松原剛志
俵 和也
村井成仁
大音智海
常川藍里
河合篤子
彩橋みゆ
小島亜莉沙
石井亜早実
髙橋莉瑚
<スタッフ>
脚本:マーク・アサイト、ジェイ・クオ、ロレンゾ・シオン
作詞・作曲:ジェイ・クオ
演出:スタフォード・アリマ
共同演出:豊田めぐみ
上演台本・訳詞:高橋知伽江
翻訳:渋谷真紀子
音楽監督:江草啓太
振付:前田清実 藤山すみれ
美術:松井るみ
衣裳:前田文子
照明:中川隆一
音響:佐藤日出夫
ヘアメイク:宮内宏明
歌唱指導:西野 誠
通訳:伊藤美代子
演出助手:福原麻衣
舞台監督:北條 孝
<東京公演>
期間:2021年3月12日(金)~28日(日)
会場:東京国際フォーラム ホールC
主催:ホリプロ/TOKYO FM
<名古屋公演>
期間:2021年4月17日(土)~18日(日)
会場:愛知県芸術劇場大ホール
主催:キョードー東海
お問い合わせ:キョードー東海
TEL:052-972-7466 (10:00~19:00 日・祝休)
<大阪公演>
期間:2021年4月23日(金)~25日(日)
-4月23日(金)13:00
-4月24日(土)12:00/17:30
-4月25日(日)12:00
会場:梅田芸術劇場メインホール
主催:梅田芸術劇場
お問い合わせ:梅田芸術劇場
TEL:06-6377-3800 (10:00~18:00)
企画制作:ホリプロ